神戸旅行記

 令和3年(2021年)4月17日から19日まで神戸に行ってきた。神戸に行くのは3年ぶりで3回目。目的はイベントに参加することと兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホールで京都市交響楽団の演奏を聴くことだった。(演奏会の感想は別ブログに掲載)。

 飛行機の出発時間の2時間前に家を出て、快速エアポート新千歳空港に行った。神戸空港発ではイベントの時間に間に合わないので伊丹空港発の飛行機にした。伊丹空港は初めてだった。飛行機は片側3列のボーイング737-800で主翼の両端が上に曲がっている機種だった。伊丹に到着してからあまり乗替えをしたくなかったのでリムジンバスで神戸三宮へ向かった。「リムジンバス」なので大きい観光バスかと思ったら普通サイズの観光バスだった。

 神戸三宮のバス停に着いたが、ホテルは駅の反対側になる。反対側に行くには地上からでは行けず、地下に入るか歩道橋に上がらなくてはならない。神戸に限らず仙台でも東京でも駅周辺には歩道橋が空中回廊のように張り巡らされている。こういうことでも積雪がある北海道との街づくりの違いを思い知らされる。

 地下街に入り三宮駅の反対側に行こうとしたが出口が見当たらない。3年ぶりだともう忘れているのかと思いながら、彷徨っているとようやく見慣れた場所にたどり着いた。以前そごうデパートだったところは阪急デパートになっていた。味ののれん街という飲食店が並んでいるところで昼食に1,180円の天ざるを食べた。値段もそれほど高くなく味もよかった。駅の出口からフラワーロードを歩きホテルに荷物を預けイベント会場に向かった。

 イベントが終了したのが午後7時頃。すでに神戸では飲食店は午後8時までとなっていたのですぐに近くのインドカレーの店で夕食を摂った。この店も二度目で前回はナンの中にチーズがびっしりと入ったセットを注文して食べきれなくて失敗したので今回はチーズなしにした。それからせっかく神戸に来たのでスイーツと思い、ホテル近くのパン屋(ベーカリーというのか)でシュークリームを買った。家を出て交通機関を使って神戸に来ただけだが、カメラが入っているリュックを背負って1万歩近く歩くとやはり疲れる。普段はあまり食べないのだけれど神戸だし疲れているからということで買ってみた。パン屋のシュークリームなのでサクッとしているわけではないが200円ぐらいだった。

 朝食はホテル内の松屋で和洋の4種類から選ぶというメニューだった。昼食と夕食は洋食系が多くなると思っていたのでご飯、味噌汁、焼き魚(シャケ)、タマゴ、のりといった和食のメニューにした。味噌汁は器も大きいし具もたくさん入っていた。もしかしたらこれは関西風の豚汁なのだろうか。

 京都市交響楽団のコンサートは午後3時開演。それまでどうしようか迷ったが姫路城に行くことにした。迷っていたのは日曜日なので混雑するのではないかという心配があったからだった。3年前も姫路城に行く予定でいたが、朝、8時頃に地震があった。神戸市内はそれほど被害がなかったのだが大阪とつながっている電車が全て止まってしまい姫路には行くことができなかった。そのリベンジを果たしたいという思いが勝り行くことに決めた。

 三宮から姫路まではJR神戸線快速で40分ぐらいで到着した。姫路駅に降りると道路の突き当たりに天守閣が見える。歩いて15分ぐらいだが、カメラ入りのリュックを背負っているし、この後がコンサートなので100円の循環バスを利用することにした。城郭は平地にあるので昨年行った小田原城のように勾配がきつい坂を登っていく感じはなかった。日曜日なので混んでいると思ったが空いていた。姫路城のようなところでも観光客は来ていないようだ。コンサートの時間も気になるのでじっくりと城内の説明文を読むこともなく、天守閣の上まで登り、写真だけはとにかく撮って、再び循環バスで姫路駅まで戻ってきた。姫路にも穴子など名産品があるらしいが、とにかく三宮に戻って昼食を摂ることにした。

 地下(“さんちか”というらしい)の飲食店街(味ののれん街)で北海ラーメンという店が気になっていたので、そこでコク味噌ラーメンを注文した。神戸で味噌ラーメンを食べるのは3度目。神戸にも南京町という中華街があるのでラーメンはおいしいらしいが今までは味噌汁の中にラーメンを入れたような味噌ラーメンとかラーメンではなくうどんが入っているようなラーメンだった。この北海ラーメンのコク味噌はスープが文字通りどろっとしていて味噌ラーメンらしい味噌ラーメンだった。値段は810円。人気の店らしく次から次へとお客さんが入ってきていた。

 それでもまだ時間があったのでケーニヒスクローネの喫茶店でコーヒーを飲むことにした。コーヒーメーカーのコーヒーだけで770円もするのかと思ったがお代わり自由ということで2杯飲んで元をとることにした。

 いい時間になった頃に阪急電車西宮北口に向かった。快速なら15分で着くところを普通に乗ってしまったため20分ほどかかり西宮北口に着いた。駅に着く直前に車窓から兵庫県立芸術文化センターが見えた。改札を出て、案内板表示に沿って連絡通路を通るとホールの入口に着く。札幌だと東豊線の大通駅からhitaruに行くぐらいだと思うが、地下3階から地上4階まで上がるhitaruの方が遠く感じる。

 兵庫県立芸術文化センターは入口から木質壁の内装になっている。KOBELCO大ホールのホワイエは広くはないが見晴らしがいい。喫茶コーナーは開いていた。来る前にすでにコーヒーを2杯も飲んでいたので利用はしなかった。札幌のホールの喫茶コーナーはいつになったら開くのだろう。

 終演後、ホールから出ると目の前にタワーマンションがそびえ立っている。ホールが駅の近くというのは便利な反面、コンサートの余韻に浸れるような空間がないというマイナス面もあると思う。Kitaraのように公園内にコンサートホールがあり、ホールの目の前に緑が拡がる空間があるというのはかなり大事なことのように思う。

 三宮にもどり、夕食は外食ではなく阪急デパートで弁当を買うことにした。地下の食料品売場を周り、とんかつ弁当に決め、メニューの中で一番高い1,500円の鹿児島産黒豚にした。注文すると15分ほどかかるというので売り場を周り、神戸なのでケーキを買うことにした。結局買ったのはイチゴのショートケーキで700円近くした。弁当を受け取りホテル近くのコンビニで飲み物を買ってホテルにもどった。果してどんなとんかつ弁当だろうかと期待したが、衣はサクッとしていないし、キャベツも入っていなかった。ケーキも普通においしいショートケーキだった。

 数年前から1年に2,3度、道外に旅行しているが、一番困るのはセイコーマートがないこと。セイコーマートだと飲み物、パン、おにぎり、惣菜などに困らないが、他のコンビニだとあまり買う気がしない。

 食後は手帳にコンサートのブログの下書きをしながら、ふと万歩計を見ると16,000歩になっていた。できるだけ歩かないようにはしていたがかなり歩いていた。

 翌日、伊丹発の飛行機が午後4時なのでそれまでどうしようかと思ったが、パンダとコアラがいる日本で唯一の動物園ということから王子動物園に行くことにした。三宮の観光案内で王子動物園までの行き方とその後、神戸布引ハーブ園への行き方を教えてもらった。王子動物園からは三宮に戻らなくてもバスで直接新神戸に行けるということだった。

 王子動物園は三宮からJRで2つ目の駅で住宅街の中にある動物園という感じだった。パンダ舎のところだけ人数制限があり少し並んだが、その他の動物舎は混んでいなかった。写真を撮るため一通り回り、バスで新神戸布引ハーブ園に行った。ロープウェイに乗り15分ほどでハーブ園に着いた。ロープウェイというより6人乗りのゴンドラと言った方がわかりやすい。いろいろなハーブ製品とレストランがあった。少し奥の方に行くと「森のホール」という150人収容できるホールもあった。一通り見て神戸市の景色を写真に撮って戻ることにした。

 新神戸から歩いて三宮にも行けるが昨日も16,000歩も歩いているので地下鉄で三宮に戻ることにした。昼食はカフェで1,180円のオムライスにしたがあまりおいしくなかった。まだ時間があったのでコーヒーを飲もうと地下街の喫茶店に入った。ドリップコーヒーが飲めるかと思ったけど、ここでもコーヒーメーカーのコーヒーしか出てこなかった。もちろん探せばドリップコーヒーが飲める喫茶店ぐらいあるのだろうけど観光客がフラッと入れるようなところはコーヒーメーカーのコーヒーしかなく、それが500円以上もする。札幌だとスターバックスドトールもあるけど、まだ街中に可否茶館、徳光珈琲、森彦、丸美珈琲などドリップコーヒーが飲める店がある。

お土産には阪急デパートでアンリ・シャルパンティエのマドレーヌとお茶を買った。

 飛行機の時間が近づいてきたので伊丹空港へはリムジンバスではなく、阪急電車を乗り継いで行くことにした。三宮から阪急神戸線快速で十三(じゅうそう)に行き、そこから阪急宝塚線に乗り換え蛍池(ほたるがいけ)に行き、そこからモノレールで伊丹空港に着いた。伊丹空港も関西圏の規模を考えるとやはり狭い。関空と神戸に分散してしまうのもやむを得ないのかもしれない。帰りも行きと同じボーイング737-800だった。

 新千歳空港には予定通りに到着し快速エアポートで札幌に帰った。

京都市交響楽団 兵庫公演

 令和3年(2021年)4月18日、兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホールで京都市交響楽団兵庫公演を聴きに行ってきた。

 指揮は常任指揮者の広上淳一、ヴァイオリン・ソロは金川真弓。プログラムはメンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲、マーラー交響曲第5番だった。

 広上さんは札響でも何度も聴いているし、ヴァイオリンの金川さんは3月に「音楽日和~JAF会員のための音楽会」に札響との協演でシベリウス/ヴァイオリン協奏曲を聴いている。

 

 兵庫県立芸術文化センター兵庫県を代表するホールだが神戸ではなく西宮にある。開館は2005年10月。神戸三宮から阪急電車に乗り15分ほどで西宮北口に到着。駅からペデストリアンデッキという連絡通路を通って直接ホールに行ける。兵庫県立芸術文化センターには大ホール、中ホール、小ホールがある。大ホール内部はホームページで見られるように木材を贅沢に奢った内装になっている。ホール内部だけではなく、ホワイエやトイレの内装も木材が使用されている。4面舞台を備えオーケストラ演奏の時は反射板が設置される。札幌のhitaruと客席数などほぼ似たようなホールである。

 最初、ホール内に入ったとき、5階席まであるのかと思ったが1階席の後ろと同じ位置にある両袖の席が2階席ではなく1階席になるので4階席ということになるようだ。

座席は1階席の後ろで2階席の庇が少し被るが新・hitaru定期のシートと同じ様なところだった。

 

 1曲目はメンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲。金川さんは3月に札響との協演で忘れがたいシベリウス/ヴァイオリン協奏曲を聴いている。線はやや細いがテクニックが確かで透明感がある響きという印象だったのでメンデルスゾーンも期待していた。

 ソロが始まると少し音が遠い感じがしたが、ヴァイオリンは明瞭に聞こえる。オーケストラの各セクション、ヴァイオリン、低弦、木管金管、打楽器なども各楽器がそれぞれ明瞭に聴き取れる。音が遠いので細かい抑揚まではわからなかった。

 オーケストラの弦楽器の音色は統一されている感じで、昨年横浜みなとみらいで聴いた読響の音色に近い。ただ音が遠いことと高域が伸びていないようにも感じるので管楽器に少しヴァイオリン群が消されたり、ソロで次はこう来るだろうというところで聞こえなかったりするときもあった。

 アンコールはJ.S.バッハ無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第3番 ハ長調 BWV1005より
第3楽章ラルゴだった。

 指揮の広上さんは少しおどけた指揮振りをすることがあるが、出てくる音は正統派という印象がある。マーラーでも同じだった。冒頭の金管からトランペットが主題を奏で一気に聴く者を演奏に引き込んでいく。演奏はとてもよかった。しかし、ここでもヴァイオリン群の高域が伸びていないので管楽器が出てくる度にヴァイオリン群が聴き取れなくなり音に厚みが出てこない。

 マーラーの5番は昨年、11月札響定期をhitaruで下野竜也の指揮で聴いている。その時もヴァイオリンの高域が伸びていなかったので第4楽章が物足りないと感想を書いた。第4楽章がどう響くか期待したが今回も物足りなかった。

 アンコールはR.シュトラウス:歌劇「カプリッチョ」から 月光の音楽だった。

 

 兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホールはあるサイトで関西一というほどとても評判がよかったので期待していた。各楽器が明瞭に聞こえるのはよかったが、音が遠く楽器の生々しさが出てこなかったり、高域があまり伸びなかったりしたところが残念だった。

札幌交響楽団 hitaruシリーズ新・定期演奏会 第5回

 令和3年(2021年)4月14日札幌文化芸術劇場hitaruで第5回新・定期演奏会を聴いてきた。

 プログラムはペルト「カントゥス~ベンジャミン・ブリテンの思い出に」、ベートーヴェン「ヴァイオリン協奏曲」、シベリウス交響曲第2番」だった。指揮は高関健、ヴァイオリンは竹澤恭子だった。

 当初は指揮とピアノにオリ・ムストネンが予定されていて前半のプログラムもラウタヴァーラ「フランツ・リストへのオマージュ」とベートーヴェン「ピアノ協奏曲(ヴァイオリン協奏曲の編曲版)」が予定されていた。それで来日が叶わず指揮者と出演者と曲目が変更になった。

 

 1曲目は「カントゥス」。14型の編成で対抗配置。「ティンティナブリ(鈴鳴らし)様式」というらしい。限定された和音とピアニッシモによる静謐な響きとカノンのように重なり合うシンプルな構造で、各声部は数的比例に基づいて持続が異なり、同じ和音であっても音楽の様相は規則的に変化する、とパンフレットには書かれている。「ベンジャミン・ブリテンの思い出」という副題があるが、鐘の音が純粋さを弦が厳しさを表しているかのようだ。

 

 2曲目はベートーヴェンヴァイオリン協奏曲。竹澤さんのヴァイオリンは流石というほかなく期待通りの演奏。低音をゴリゴリ響かせるところはベートーヴェンらしい。第1楽章の雄大なスケール、第2楽章の叙情的な表現、第3楽章でのオーケストラとの掛け合いと低弦と高弦の弾き分けも見事だった。

 アンコールはバッハ/無伴奏ヴァイオリンパルティータ第2番 BWV1004 サラバンドだった。

 

 3曲目はシベリウス交響曲第2番。札響や他のオーケストラでも何度か聴いている。最近札響で聴いたのは2014年尾高忠明指揮のシベリウスツィクルスの時でこの演奏はSACDになっている。

同じようなフレーズが何度も出てくるが楽器の構成による響きの違いを注意深く描き分けるように演奏していた。かつて東京から北海道に移住してきた方から、以前はシベリウスなんて聴かなかったが北海道に来てから聴くようになったという話しを聞いたことがある。一つの楽器のフレーズを大雪原の寒々とした透明感のある冷たい響きで奏でられるのは札響ならではだと思う。

オーディオのこと 40(上杉研究所U・BROS-280R試聴記)

 ようやくU・BROS-280Rが納品されたので試聴記を書いてみたい。これまでは1992年に購入したU・BROS-12(以下12)を29年間聴いてきた。その後様々なプリアンプが上杉研究所から発売されたが、2015年にU・BROS-280(以下280)が発売された。このモデルは3年前と昨年に自宅で試聴させてもらい、その時の印象がまだ残っている。

 アンプは大きく分けて電源部と増幅部に分れている。12の増幅部に用いられる真空管はECC83という双三極管のMT管で、1本で左右2系統の増幅ができる。これが増幅用とバッファー用に2本使用されていた。電源部もトランス1つで左右のチャンネルに電源を供給していた。入力信号は後面から入り増幅部を通ってボリューム、バランスコントロールセレクターを通ってまた後面から出力されていた。

 280では増幅部に用いられる真空管は左右に分れ、片チャンネルで2本の真空管を使用し合計で4本の真空管を使用していた。

 280Rは、増幅部は280と同じだが、電源部のトランスが左右に独立しボリュームも左右に独立した。ボリュームは増幅部の近くに設置され、これをモーターで回す。一般的なボリュームでは左右の音量差(ギャングエラー)やクロストーク(左右の音漏れ)がどうしてもあるが、左右独立にすることによりそれらを極力低減している。

 信号経路は後面からボリュームを通って増幅部に入り、前面パネルを経由することなく後面から出力される。前面のパネルにあるボリュームノブやセレクターは内部のボリュームを回すモーターを操作しているだけなのである。セレクターも後面近くのセレクターを操作するためのスイッチになっている。これにより信号経路が短絡され従来の1/7になったという。

 

 12の前は国産高級メーカーのアンプを使用していた。12はそれよりも音はよかった。その後も新しいアンプは出てきたが、特に買替えたいと思うような製品は出てこなかったのでそのまま30年に亘って使い続けてきた。

 

 280が出てきたときこれは今までのウエスギアンプとは内部がかなり変わったと感じた。そして3年前に自宅で試聴する機会をいただいた。その時の印象では、左右の分離が良くなり高域と低域の透明感が増したという感じだった。CDを聴くときも280には12にはないバランス入力があるので音には有利だった。借りた280を返して12に戻すと12は真ん中に音像が寄っている感じがした。

 それからしばらくしてオーディオショウでメーカーの方に会ったときに上杉研究所50周年を記念して280の後継機を出すという話を聞いた。それは電源が左右に独立した製品だという。これはかなり期待ができるので後継機を待つことにした。昨年、10月末にホームページに280Rの概要が発表され、それがようやく4月中旬に届きじっくりと聴けるようになった。

 ここでもう一度3台のプリアンプの概要を整理しておく。

○U・BROS-12

・左右の信号は1本の真空管で増幅。

・左右の信号に対して電源トランスは1つ

・左右の信号を1つのボリュームで操作。

・信号経路は後面から増幅部を通り前面パネルのボリューム、バランスコントロールセレクターなどを通り後面から出力。

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U・BROS-12の内部


○U・BROS-280

・左右の信号はチャンネル毎に2本の真空管で増幅。

・左右の信号に対して電源トランスは1つ

・左右の信号を1つのボリュームで操作。

・信号経路は後面から増幅部を通り前面パネルのボリューム、バランスコントロールセレクターなどを通り後面から出力。

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U・BROS-280の内部


○U・BROS-280R

・左右の信号はチャンネル毎に2本の真空管で増幅。

・左右の信号にチャンネル毎に2個の電源トランスで電源を供給。

・左右の信号をチャンネル毎に2個のボリュームで操作。

・信号経路は後面から増幅部を通り、増幅部近くのボリュームとセレクターを通り後面から出力。バランスコントロールボリュームは廃止。(バランスコントロールは左右のボリュームで調整)

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U・BROS-280Rの内部


となる。

 12と280を比較すると12が中央寄りに音像が集まり、音場が狭くなるのに対して280は左右の分離がよくなり高域低域の分離もはっきりとしている。またピアノや打楽器などの瞬発的な大きな音、あるいはソプラノの高域や合唱など持続的で共鳴するような音が入力されたときに歪みというか歪み気味になることがあったが280ではなくなった。増幅部が左右に分離されたことにより入力に余裕ができたためだろうか。レコード再生で歪みがあったときはとかくトーンアームやレコードプレーヤーのセッティングの調整が上手くいっていないのではないかと考えがちだったが、280を試聴したときプリアンプの入力に余裕があると歪みがなくなることもあると知った。

 280Rが届いてセッティングして聴いてみると12だけではなく280とも大きく音が変わっていた。280も左右にはっきりと分離していたが、それはスピーカーの間に大きな平面のキャンパスがあってそこにそれぞれ音像が定位しているという感じだった。それが280Rでは左右だけではなく前後にも音像が定位しスピーカーの間に奥行きがあるステージが出現したかのようだった。弦楽器の少し後ろに木管楽器、その後ろに打楽器、金管楽器が定位する。協奏曲などのソロ楽器は弦楽器の前に定位する。しかもそれぞれの音像に立体感があり、分離しながらもそれぞれの奏者が一体となって音楽を形作っている様がよくわかる感じになった。音が大きくなっても後方の楽器がかき消されることがない。

また大きな音が入力されたときの余裕度も280よりさらに良くなっている。音のバランスも普通で自然になった。280は少し高域が強い感じがあったがそれも全くない。

 

 もう一つ特記しておきたいことは、CDの音がとても良くなった。バランス接続ができるようになったので少しは良くなるだろうと思っていたが、予想以上だった。

今までカートリッジ、トーンアーム、フォノイコライザーアンプと次々グレードアップしてきてレコードとCDの音質差がかなり大きくなっていた。CDプレーヤーもそのうちグレードアップしなくてはらないかなと考えていたが、しばらくその必要もなさそうだ。280を借りたときもCDプレーヤーとバランスケーブルで接続して聴いたが、ここまで良くなることはなかった。バランス接続だけではなく電源部やボリュームの分離がCDの音質向上に大きく寄与したのだろう。

 12のままでソフトのことをブログに書いていたら全部書き直さなくてはならなかったかもしれない。これからは少しずつソフトのこともブログに書いていきたいと思っている。

オーディオのこと 39(機器の初期不良)

 新しくオーディオ機器などを買い、セッティングして接続していざ聴いてみると不具合が見つかることがある。以前はそれほど多くなかったように思うが、最近は比較的多いような気がする。ここ数年ぐらいで3回あった。

 

 1回目は7年前にレコードプレーヤーを替えたときに電源を入れてターンテーブルを回転させると「コクッ、コクッ」とモーターから異音が発生していた。早速、販売店の方にそのことを伝えた。展示品があったが、そこではそのような異音は発生していなかった。確かめに行きたいというので店員の方に自宅まで来て確かめていただいた。異音が確認できたのでメーカーに送ってもらい、メーカーでも異音が確認されたということで新品に取替えてもらった。人気がある機種だったが、このようなことは初めてだとメーカーの方が言っていたらしい。その後は何事もなく稼働している。

 

 2回目は2年前に4K液晶テレビを購入したときだった。店の方に設置してもらいその後しばらくすると画面の上の方に線が入り映像のチラつきがあることに気付いた。直ぐに、メーカーのサービスに電話をすると修理担当のものを派遣するが1ヶ月ぐらいかかるという。それでも仕方がないので1ヶ月待つことにした。ようやく修理担当の方が2名訪ねて来た。交換用の液晶パネルを持ってきてこれに取替えるという。新品と交換するのかと思っていたので少し拍子抜けした感じがしたが、とにかく直るのならそれでいいと納得した。部屋の中で毛布を広げ、中から手際よく基板を外し新しいパネルに、次はこれその次はこれと手順通りに取り付けていった。30分ぐらいで終わったと思う。今のテレビはネットにも接続しているので基板を取替えない方が、設定がそのまま残るのでこの方がいいらしい。

 

 3回目はこの度の真空管プリアンプ。セッティングして音出しをして聴いていると本体のボリュームを最小に下げたとき左チャンネルから音が出ていることに気付いた。直ぐにメーカーに連絡して送り返した。メーカーに到着したが連絡したような症状が出ないという。再度、当初は全く問題がなかったが、しばらく聴いた後で本体のリモコンのボリュームを絞ると先のような症状が出たとできるだけ詳細に報告した。それでも症状が出ないのならどこかで元に戻ったのだろうと思い、それでは送り返して下さいと連絡すると、では送りますと一度連絡が来たが、それから数時間後にもう少し深く原因究明をしたいので発送はまで猶予が欲しいと連絡が来た。3日ほどして修理したので送りますと連絡があり、2日後に届いた。最初に送ってから10日が経っていた。

 原因は本体のボリュームを勢いよく回すと中のモーターが正しく連動しないことがあり、そこを再調整したということのようだ。不良というよりは調整のし直しということだった。戻ってきてすぐにセッティングして聴いたが異常はなかった。

 初期不良があってもメーカーはしっかりと対応してくれるので文句をまくし立てたりせずに冷静になることが肝要。せっかく買ったのに思い通りの動作がしないときはとかく頭に血が上りやすくなるが、自分がどうしたらどうなったのか、どういう状況なのかを冷静に客観的にメーカーが原因を特定しやすい情報を伝えるようにしたほうがよい。目的は新しい製品を従前通りの性能で使うことなので、事を徒に荒立てるよりは不良の原因が早く見つかりメーカーも対処できる。

オーディオのこと 38(オーディオ誌雑感)

 今も出版されているオーディオ誌というと音楽之友社の「ステレオ」、音元出版の「オーディオアクセサリー」、「analog」、ステレオサウンドの「ステレオサウンド」、「管球王国」だろうか。この中で「analog」はアナログシステム、「管球王国」は真空管アンプを主に扱っている。

 オーディオ誌の記事はオーディオ評論家という方々が記事を書いているが、面白いのは出版社によって評論家の住み分けがかなりはっきりしているということだろう。音楽之友社音元出版の評論家はかなり重なっているがステレオサウンド社の雑誌に記事を書くことはまずない。また、ステレオサウンド社の雑誌に記事を書いている評論家は音楽之友社音元出版の雑誌には記事を書かない。以前は、有名な評論家であれば両方に記事を書いている方もいたが今はいないようだ。おそらくこれはオーディオ評論の黎明期に高城重躬氏と五味康祐氏の確執から来ているのではないかと考えているがこれはまた次の機会に書いてみたい。

 

 音楽之友社音元出版は国内メーカーの製品を比較的多く取り上げる傾向がある。一方、ステレオサウンドは海外製品を多く取り上げる傾向がある。

 今は、定期的に購入している雑誌はないが、以前は、「ステレオ」、「analog」、「ステレオサウンド」、「管球王国」を定期的に購入していた時期がある。

 

 「ステレオ」誌は国内製品の比較的リーズナブルな価格の製品を取り上げることが多く、使いこなしの記事も多い。オーディオに興味を持ち始めたけどお金がなかった学生時代に比較的よく読んでいた。使いこなしの記事にはCDプレーヤーやアンプの天板の上に鉛のインゴットを置いたり、ブチルゴムを貼ったりするという使いこなし記事がよく載っていた。安い機器で少しでもいい音を引き出そうと上に何か置いたり、ゴムを貼って「鳴き」を止めたりということを盛んにしていた。

 

「analog」は比較的新しい雑誌で20ぐらい前に不定期で始まり、今は季刊になっている。創刊された頃、アナログの本なんていつまで持つのだろうかと思いつつ購入していた。今は気になる記事がある時しか購入しない。

 その後、カートリッジを買替えたいと思ったときに少し続けて購入したことがある。3年前にトーンアームを買替えたのはこの雑誌でトーンアーム特集をしていたことがきっかけだった。トーンアームの特集が記事になったのは何十年ぶりかだったと思う。トーンアームはいろいろな種類があり、ロングとショート、S字とストレート、スタティックバランスとダイナミックバランス、リニアトラッキングとオフセットがあり、軸受けにはワンポイント、ナイフエッジ、ジンバルサポート、ベアリングなどの種類がある。記事ではダイナミックバランスがいいと紹介していた。昨年末も「analog」誌でトーンアーム特集が組まれたが、そこではアームメーカーの方がスタティックバランスを推すと語っていた。

 

 「管球王国」は上杉研究所の創業者上杉佳郎氏が毎号真空管アンプの自作記事を書いていたので、創刊号から15年ぐらい購読していた。10年暮れに上杉佳郎氏が亡くなられて自作記事がなくなり、しばらくして購読を止めた。自作記事はアンプのことがいろいろと解説されていて面白かったが上杉氏が亡くなると読む記事がなくなってしまった。ヴィンテージものが多い真空管アンプの世界は妙な珍説が蔓延っていることが多く、そんなときに上杉氏の言説はとても参考になった。自作記事で購入したのは40号のTAF-1というサブソニックフィルターだった。

 

 「ステレオサウンド」は70号の後半番号から10年ぐらい購読していたと思う。管球王国が創刊されてから両方買うこともないと思い定期購読は止め、気になる記事がある号だけ購入するようになった。

ステレオサウンドを処分するときコピーして残しておきたかった記事に99号「楽器の音色って何だろう?」と182~4号「ファインチューニングのすすめ」がある。

「楽器の音色ってなんだろう?」には各楽器の音色の違いは倍音の出方の違いであるとか、矩形波(くけいは 例:クラリネット)か鋸形波(きょけいは 例:ヴァイオリン)という違いがあることなどが解説され、オーディオ再生は波形を忠実に再現することを心がけるべきと結ばれている。

 「ファインチューニングのすすめ」は間違った方向の使いこなしをしないようにという観点で書かれている。そこには七箇条が記されているが1と7は次のようになっている。

1 ファインチューニングを行う目的は、レコード制作者の意図を正しく汲み取れるシステムを構築することにある。録音芸術や再生芸術の意図を理解して取り組むことが大切。

7 様々なシステムの音を聴くことも、演奏会に行き生の音に触れることも大切。経験を積んで感性を磨き、世間の評判に惑わされず自分の耳で判断できるようにすること。

とある。

 具体的には電源の取り方から、ケーブル、セッティング、部屋のことが連載されている。連載は185号まであったがそれはコピーを取っていない。

 ステレオサウンドで執筆されていた評論家の方々の記事はステレオサウンド社からまとめて著作集として出版されていて、これは購読するようにしている。

 

 各出版社のオーディオ誌は年末になるとグランプリとかベストバイという特集記事を毎年掲載している。グランプリと付くのは今年一番良かった機器はどれかというもので、ベストバイは読者に一番お買い得の機器はこれですというもの。世の中の流れに付いていくために一応は目を通している。

 オーディオ誌の記事を掲載する評論家の方々は、ある程度は個人の責任で記事を書いているので、オーディオ誌の記事の信頼度は評論家の信頼度ということでもある。

オーディオのこと 37(オーディオ機器の買取りと下取り)

 新しくオーディオ機器を購入し、それまで使用していた機器を手放そうとすると下取りか買取りに出すことになる。下取りというのは車と同じで今まで使用していた機器を、新しく購入する機器の代金に充てるため、購入した店に買い取ってもらうこと。買取りは購入した店とは別なところに中古品として買い取ってもらうこと。普通は下取りの方が値引きも含まれるためか買取りよりも価格が高くなることが多い。

 オーディオ機器でも、レコードプレーヤー、トーンアーム、MCトランス、アンプ類、スピーカーはどこでも下取り買取りに出せるが、一般的なオーディオ店ではカートリッジ、ケーブル類、アクセサリー類は引き取ってもらえないこともある。しかし、ネットで買取りに力を入れている店を探すと壊れていても買い取ってくれるところは日本のどこかにはある。

 下取りはアンプとスピーカーしか経験がない。下取り価格もオーディオ機器のブランド力に係ることが多い。誰もが知っている名機なら下取り価格もそれなりに高いが、買ったときの値段が高くてもブランド力がないメーカーは買取り価格も低くなる。要は人気があるかどうかなのだが、これには雑誌も結構大きな影響力があると思っている。かつて有名な評論家が絶賛していたとか、あるいは使用していた機器とか、有名なオーディオ喫茶で使用しているという機器は人気があるのであまり値崩れはしない。

 数年前に20年ぐらい使用したタンノイのスピーカーを下取りに出したことがある。もう値段なんて付かないのではないかと思ったが、下取り価格は意外と高かった。店頭にしばらく置いてあるなあと思っていたら間もなく売れた。下取り品や買取り品はオーディオ店で店頭に並ばないこともある。こういう機器が出たら知らせてくださいという常連客がいて、そういう製品は店頭に並ぶ前に店員の方がその常連客に知らせそこで交渉が成立することもあるためだ。

 一般的なオーディオ店では引き取ってもらえないアクセサリー類などでもネットでいろいろと検索すると日本全国にはいろいろと買い取ってくれるところがある。カートリッジ、ケーブル類、アクセサリー類でもとりあえず値段が付くのでそういうところで買い取ってもらった方がいい。

 最近もカートリッジ、ヘッドシェル、MCトランス、ケーブル、アンプ、その他アクセサリー類を買取りに出した。一般的なオーディオ店では引き取ってくれないカートリッジでも完動品はそれなりに高く売れるし、カンチレバーが曲がって使用できないような製品でも数千円で売れることがある。ヘッドシェル、ケーブル、超音波式スタイラスクリーナー、トーンアーム調整器具も値段を付けて買い取ってもらった。

 カートリッジは、伝統がある名器よりも新しい製品の方が音がいいこと、ヘッドシェルとアーム調整器具はトーンアームを取替えたこと、ケーブルは硬すぎて使用しているアンプに合わなかったこと、MCトランスはトランス内蔵のフォノアンプに買替えたこと、アンプはアンプそのものを買替えたこと、でそれぞれ不要になった。

 

 難しいのは時代の変化で不要になったオーディオ機器かもしれない。10年ぐらい前にLD、LDプレーヤー、BS単体チューナー、CDプレーヤー、FMチューナーを買取りに出したことがある。LDプレーヤーやソフトは今でも買取りをしているのだろうか。単体のBSチューナーはBS放送が始まった頃、一時期売られていた。そのころのBSはアナログ放送でAモード、BモードがありBモードはCDよりも高スペックだった。そのため単体のBSチューナーで衛星放送を受信してCDプレーヤーのDAC入力に送り、CDの出力をビデオデッキの音声入力に入れて録音録画をするということをしていた。これもBSデジタル放送が始まると使用できなくなった。

 

 時代の変化で不要になる機器は映像機器に多い。LDが出た頃、VHDというのもあったが世の中に機器やディスクが残っているのだろうか。ビデオテープデッキはそろそろなくなるかもしれない。

 ハイビジョンになる前のプロジェクターはどうだろう。今は液晶プロジェクターだが、昔はRGBの三管式というがあった。個人でというよりは大画面を見せる施設でかなり普及していた記憶がある。新品で百万や2百万はしたと思うが、液晶のハイビジョンが出た頃には相当処分されただろう。

 音の方ではMD、Hi8(ハイエイト)、DATなどはどうなっているのだろう。Hi8やDATはそれほど普及しなかったが、MDはかなり普及していたはずだが、今でも需要はあるのだろうか。