第625回札幌交響楽団定期演奏会

 令和元年(2019年)12月6日、7日、第625回札幌交響楽団定期演奏会を聴きに行ってきた。指揮は札響の友情客演指揮者の広上淳一。プログラムはマーラー交響曲第10番(クック版第3稿)だった。

 プログラムノートの曲目解説から引用すると、第10番は第1楽章がほぼ完成されていたが、その他の楽章は大まかなスケッチ状態で残されていた。それをイギリスの音楽学者デリック・クック(1919~76)が完成を試みた演奏用バージョンである。クック版は第1稿(1964年初演)、第2稿(1976年初演)、第3稿(1989年出版)とあり、今回演奏されるのはその第3稿、とある。

 曲は第1楽章「アダージョ」、第2楽章「スケルツォ」、第3楽章「プルガトーリオ(煉獄)」、第4楽章「アレグロ・ペサンテ」(マーラーの手稿には「悪魔が私と踊る」と記されている)、第5楽章「導入部~アレグロモデラート~アダージョ」(末尾の手稿に「きみのために生き、きみのために死ぬ!アルムシ『妻アルマの愛称』と書き込んでいる)という構成となっている。

 冒頭はヴィオラから始まるが、ヴィオラだけでも全体の音量のバランスが崩れない。ケルン放送響ではヴィオラだけのときは音が小さくなりオーケストラ全体との音量のバランスが取れていなかった。今年3月に放送された札響のドキュメンタリー番組で常任指揮者のバーメルトさんが「音の強弱に気をつけて演奏するのは音を外さないようにするのと同じくらい大切なのです。」と話していたことを思い出した。

 前もってモリス指揮ニューフィルハーモニア管弦楽団のレコードを聴いたが、聴きながら札響だったらここはもっと良い響きで聴けるだろうと思っていた。特に第5楽章のアダージョの弦の響きは圧巻だった。ただ、この美しい響きの中に大平さんがいないことが一層の寂寥感を増していた。