オーディオのこと18(スピーカーのセッティング)

 オーディオの使いこなしで一番悩むのはスピーカーのセッティングではないだろうか。

 オーディオに興味を持ち、様々な本を読んで最初に試してみたのが木の板の上にコンクリートブロックを置いて設置するという方法だった。まだオーディオ用のスピーカー台というのは製品として売られてはいなかった頃のことだ。試してはみたが屋外で使用する物を部屋の中に持ってくるのというのは見た目が良くなかった。

 

 その後、ロジャースLS3/5Aというウーファーが10㎝の英国製の小型スピーカーに買替えたときは、専用のスピーカー台も一緒に購入した。そのスピーカー台は鉄の角パイプを組み合わせたものだったのでスピーカーを鳴らしている時には微妙に振動した。そのことに気づき当時よくオーディオ誌の使いこなし記事で紹介されていたブチルゴムを貼り、鳴きを抑えた。ブチルゴムは人工芝を貼るためのもので、分厚い両面テープようになっている。それをパイプのところに巻き付けたのである。テープの剥離紙はつけたままにしておかないとくっついてしまうので剥がさないでいたが、これも見た目が悪く不自然な感じもした。

 

 これに懲りて、次のスピーカーはフロア型にしようとドイツのカントンというメーカーのCT90という製品にした。ウーファーが26㎝ある3ウェイのスピーカーだった。どんなセッティングをしたかは覚えていない。セッティングの他にもスピーカーでよくすることにユニットを止めているネジの増し締めというのがある。スピーカーはどうしても振動するものなのでしばらくするとネジが少し緩んでくる。数ヶ月に1度ぐらいは時計の針で5分程度増し締めをする。そうすると音が少し締まってくるのだが、これをあまり締め過ぎるとネジがバカになることがある。ネジの頭が潰れるぐらいならネジを取りかれば済むが、スピーカーの箱が木くずを固めたパーティクルボードだったりした場合は、締め過ぎるたりするとネジがくるくる回ってしまうということが起こる。このカントンというスピーカーは何カ所かそういう状態になってしまった。パテを使ってネジがもう一度締まるようにならないかと試したりしたが、今度はネジがくっついてしまい全くネジが回らなくなるという失敗もした。

 

 次に購入したのがダイヤトーンのDS-V3000。ウーファーが30㎝の3ウェイで重量が53㎏あった。この頃、使用していたのがコンバック(ハーモニックス)という会社のスピーカー用インシュレーターで、8個10万円のスピーカー台というのは、当時としてはかなり値段が高かった。円筒の下の方が少し広くなっていて象の足のような形だった。12㎝ぐらいの高さがあり、このインシュレーターに載せる時に載せ損なって、スピーカーユニットの上から手で抑えてしまい、スコーカーを壊したことがあった。

 この頃から木材ブロックを使い始めた。1片が3㎝から4㎝ぐらいの立方体でオーディオ用に売られているものや東急ハンズで売られているものを使った。素材もスプルースという軽く柔らかいものからアサダザクラ、黒檀などの硬く重いものなど様々な製品を試した。

 V3000には袴のような足がついていてネジで外すことができたので外して使ったりもしたが、結局、当時使用していた真空管アンプとの相性なのか、うまく鳴らすことができなかった。

 

 次に買替えたのがタンノイのスターリングTWで25㎝ウーファーの同軸で、先程のダイヤトーンよりも値段は半分ぐらいだったが真空管アンプとの相性なのかそれなりに鳴らすことができた。このスピーカーはブックシェルフだが専用台が別売されている。最初はその専用台を使用せずコンバックのスピーカー台で賄うつもりだった。しかし、コンバックのスピーカー台と木材ブロックの組み合わせでもあまりうまく鳴らせず、結局、専用台も購入することにした。

 コンバックのスピーカー台、専用台、木材ブロックを組み合わせ、4点支持にしたり3点支持にしたりいろいろと試して使っていた。4点支持にするとガタつきを無くすためにいろいろと工夫しなくてはならない。身近にあるもので薄い物はなんだろうと探したところ雑誌の写真のページが薄いことに気付き、それを適当に四角く切ってガタつきを無くすために使った。最終的にどんなセッティングにしたかあまり覚えていないが、このスピーカーは20年以上使ったのでかなりいろいろな素材のものを試した。立方体の木材ブロックだけではなく半球や円錐型など、木材以外の素材では金属、カーボン、ゴム、紙、コルク、革などを試した。そしてそれぞれを組み合わせたりして使っていた。例えば紙とかゴムシートをブロックと同じ面積に切り、木材ブロックの上と下に置いて使用したりした。ホームセンターや東急ハンズに行くとスピーカーのインシュレーターに使えそうないろいろな物を見つけては試していた。これらの物は値段も数百円程度なので思いつくと直ぐに買ってきて試すことができた。

 振動を抑えるということでは、洗濯物を吊すための突っ張り棒を天井とスピーカーの間に突っ張らせ、上から押さえつけて振動を抑えるということも試した。やってはみたが音が詰まったようになりこれは失敗だった。

 最終的にはどうしたかは当時の写真も残っていないので記憶を辿るしかないのだが、コンバックのスピーカー台はもう使用していなかった。多分、木材ブロックと金属製のインシュレーターを使用していたと思う。

 

 次に買替えたのが5年前で、タンノイのターンベリー85LEというスピーカー。25㎝の同軸であるところはスターリングTWと同じだが、フロア型でアルニコ磁石であるところが違っている。これが今使用しているスピーカーだ。その時、多少お金をかけてもしっかりとセッティングしようとクリプトンというメーカーのゴムと鋳鉄を組み合わせたインシュレーターを3個おき、その上にタオックのオーディオ専用ボードを置いた。そして、その上にスピーカーを置くのだが、このスピーカーはフロア型で下に袴のような木枠があり、四つ角にコイン大の小さい金属製カップが裏返されて付いている。本当はそのカップを外したかったのだが、がっちりと付いていて外れなかった。仕方がないのでそのカップを外したところにまたクリプトンのインシュレーター3個で支えた。

 オーディオボードの効果が良かったのでレコードプレーヤーとCDプレーヤーの下にも敷こうと思いオーディオ店に行ったところ、ウインド・ベルというスプリングを使用したインシュレーターが展示されているのを目にした。オーディオ記事で話題になっていて気になっていたため試聴させてもらうことにした。このウインド・ベルを作っている会社は特許機器といってオーディオメーカーではなく、もともと精密測定機器の免震用のインシュレーターを作っている会社だった。あるオーディオマニアがこの会社の免震用のインシュレーターはオーディオに使うと効果があるという話をしていて、それを特許機器の方が聞き、それならオーディオ用に製品を作ってみようと開発されたのがウインド・ベルだった。

 手始めにレコードプレーヤーに使用すると想像していた以上に効果があった。オーケストラや合唱曲で各パートが重なり合うところでも音の濁りが減少し、うるさいと感じていたところもクリアになり解像度が上がり奥行きや定位がはっきりとしてきた。

 その効果に驚き、値段が高くてもアンプやスピーカーにも使用するしかないと覚悟を決めて買い足すことにした。使えそうな箇所全部に使用するとコンポーネント1台分ぐらいになるが不満を抱えたまま音楽を聴くよりはずっといいと考えた。それまでは柔らかい素材のものというのは余分な音もなくなるが必要な音もなくなり、物足りなくなるのが常だった。しかし、このウインド・ベルは余分な音がなくなり必要な音がより良くなって出てくるという感じだったのが驚きだった。

 

 またその翌年にはタオックの試聴会があった。タオックとはアイシン高丘のオーディオ部門で、ここは自動車のブレーキパッドを作っている会社である。昔の車は急ブレーキをかけると「キーッ」というけたたましい音がしていたが、昨今の車はしなくなった。普通の鉄板は叩くとカンカン響くが、鉄に黒鉛を混ぜると叩いてもコツコツとしか鳴らない素材になり、それをブレーキパッドに使用したからだそうだ。

 試聴会でタオックのインシュレーターは効果がありそうだと思い1セット購入してみた。その結果とても良好だったので、機器の間やスピーカーとオーディオボードの間に使うことにした。

 今はウインド・ベルとタオックのオーディオボードとインシュレーターの組み合わせで聴いていて、ようやく落ち着いた感じになった。

 

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スピーカー前面

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スピーカー後面

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レコードプレーヤー

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下からプリアンプ、フォノアンプ、CDプレーヤー、クリーン電源

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高域用パワーアンプとサブソニックフィルター

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低域用パワーアンプ