オーディオのこと 20(CDプレーヤー歴)

 この「オーディオのこと」も20回目になる。今回はCDプレーヤーについて書きたい。CDは82年に初めて発売された。当初、CDはデジタルだから0と1の信号しかないのでプレーヤーによる音の違いはなくなると吹聴されていた。しかし、いざCDとプレーヤーが各メーカーから発売されるとどれも同じCDから再生される音は違っていた。

 CDプレーヤーは、出初めは値段が15万から20万と一般的には値段が高かった。しかし、それから各メーカーとも普及させるために次々と値段が安い機種を出してきた。10万円を切ったというだけで話題になった。そんな中で注目を浴びたのが85年に出たマランツのCD-34で59,800円という値段だった。中身や音は10万円のCDプレーヤーと比較しても遜色のないものだった。今でもメーカーの方は、本来なら10万円以上の製品をこの価格で出したので、これは戦略価格だったと言っている。

初めて買ったCDプレーヤーは86年、マランツCD-45というCD-34の次に出たモデルで、値段は54,800円だった。

 価格競争の結果、値下がりを続けてきたCDプレーヤー市場もCD-34が出てきて打ち止めとなり、逆に高級路線を打ち出すメーカーが出てきた。

 85年にはソニーがデジタル信号を読み取るCDトランスポートとデジタル信号をアナログ信号に変換するDAC(DAコンバーター)を発売して高級化路線を取ると続いてローディー(Lo-D、日立)がDAD-001を出して高級CDプレーヤーはセパレートという流れができていた。

 86年、アキュフェーズがDP-80、DC-81というセパレートCDプレーヤーを出した。セパレート型は筐体が2つになり値段も高いので一体型で音がいいCDプレーヤーが出てこないかと思っていた。

 すると87年、アキュフェーズから一体型のDP-70が出てきたのでこれに買替えた。値段も430,000円と私にとって初めての高級機でCD―45とはスイッチの感触、入出力端子、トレイの出し入れのスムーズさ、重厚感のある造りなどが全く違い、高級機と普及機の差は歴然としていた。

 その後、90年頃からビジュアルも本格的に始めようと液晶プロジェクターとスクリーンを購入した。それに伴いCDプレーヤーもデジタル入力が設けられているアキュフェーズのDP―70V(480,000円)に買い替えた。高級機は下取り価格が高く値段よりは持ち出し金が少なくて済む。そのため次期モデルに買替えもしやすいということがある。70Vのデジタル入力にBSチューナーやLDプレーヤーのデジタル出力を接続し、70VのDACを通すことによってよりいい音で聴こうと考えた。これはそれなりに効果があり、単体で聴くよりも音の厚みや音場の広がりが良くなった。

 それをしばらく聴いていた。しかし、95年頃から3年ぐらいオーディオや音楽から遠ざかっていたときがあった。その後、98年頃に外国盤のレコードの音がいいことに気づくようになって、再びオーディオに戻ってきた。しかし、レコードばかり聴くようになってしまったのでCDはほとんど聴くことがなくなっていった。そのうち映像機器をオーディオシステムから外し、その次にCDプレーヤーも外してしまった。結局、11年には映像機器、CDプレーヤー、LD、VHSテープなどの機器を処分した。

 しかし、14年に知人からCDを1,000枚ぐらい譲り受けることになり、CDプレーヤーを24年振りに買うことに決めた。SACDは聴きたいがあまりお金はかけたくないので最初は10万円程度でいいと思っていた。アナログはなくなっていったがCDは流石に残っていると思っていた。しかし、探してみるとデノン、マランツヤマハの3機種しかないことに驚いた。オーディオ店の展示品で10万円クラスのCDプレーヤーを実際に操作してみると、どうも動作がぎこちない感じがしたし、スイッチの感触など高級機との差は明らかだった。せっかくいただいたCDなので少しでもいい音で聴きたいと思い50万円台のCDプレーヤーを購入することにした。実はこの価格帯の機種が一番多い。デノン、マランツヤマハの最上級機がこのクラスで、アキュフェーズ、エソテリック、ラックスマンがこの価格帯から製品を出しているからだ。店頭で聴いたり、試聴機を借りて聴いたり、オーディオ試聴会で聴いたりした結果、エソテリックK-05X(580,000円)に決めた。CDを譲り受けてから1年後だった。

譲り受けたCDだが、実はあまり聴いていない。CDプレーヤーの出力はRCAのピンプラグかXLRのバランスがあるが、K-05Xはバランス出力の方が出力電圧も高く音がいい。バランス入力があるプリアンプを借りて1週間程度聴いたが、やはりバランスの方が音はよかった。そのため次にバランス入力があるプリアンプを購入するまであまり集中的に聴かないようにしている。

 K-05Xを購入した後、トーンアームをグランツのMH-104Sに替えてから、アナログプレーヤー関連とCDプレーヤーでは価格差が3倍ぐらいに広がり、音質差も広がってしまった。いずれもう少し上のCDプレーヤーにすることも考えたいが、希望としてはDACチップではなくディスクリートタイプの機種にしたいと思っている。アキュフェーズのDP-70と70Vはディスクリートだった。ディスクリートの方が落ち着いた音楽的な表現に長けているように感じる。