オーケストラでつなぐ希望のシンフォニー

 令和2年(2020年)10月6日、「オーケストラでつなぐ希望のシンフォニー」の札幌交響楽団の演奏を聴きに行ってきた。これは全国各地のオーケストラが、生誕250年を迎えたベートーヴェンの音楽を一つずつ奏で、日本をつないでいく、というコンセプトでNHKが企画したもので11月に曲順どおりに放送される。

放送予定は11月 1日 交響曲第1番 広上淳一指揮 京都市交響楽団

            交響曲第2番 飯守泰次郎指揮 仙台フィル

     11月 8日 交響曲第3番 高関 健指揮  群馬交響楽団

            交響曲第4番 小泉和裕指揮  九州交響楽団

     11月15日 交響曲第5番 坂 哲朗指揮  山形交響楽団

            交響曲第6番 尾高忠明指揮  大阪フィル

     11月22日 交響曲第7番 川瀬賢太郎指揮 名古屋フィル

            交響曲第8番 秋山和慶指揮  札幌交響楽団

          劇音楽「エグモント」下野竜也指揮 広島交響楽団

となっている。

 第九はNHK交響楽団が演奏することになっているようだが日時はまだ決まっていない。当選して送られてきたチケットには「終演予定午後8時10分(開演午後7時)」と記してある。NHKらしく終演時間も丁寧に記載されていて、演奏時間も第九に合わせた時間配分になっているのかもしれない。

 

 指揮は秋山和慶。プログラムは、プロコフィエフ 古典交響曲武満徹「乱」組曲ベートーヴェン交響曲第8番。編成は12型だった。

 

 1曲目の古典交響曲は実演でも何度か聴いたことがあるし、レコードなどでもいくつか持っている。録音ではチェリビダッケのリハーサル付の映像が印象に残っている。その時は、演奏者が少し笑いを浮かべながらのおどけた感じの演奏だった。他にはテンポが速い一気呵成に進んでいく演奏もよくある。しかし、この日の秋山さんと札響の演奏は、どちらでもなくスケールが大きいシンフォニックな響きが際立っていた。この曲の特徴の一つに第1楽章と第4楽章によく出てくるフォルテッシモがある。その鳴らし方が鋭く厚い響きだった。弦楽器と管楽器が一体にならないとこれだけの響きは出てこないが、それが次々と決まっていた。スケールの大きさの中に細かい強弱の変化もはっきりと聞き取れた。

 

 2曲目は「乱」組曲。札響は85年に黒澤映画の「乱」のオリジナルサウンドトラック盤を岩城宏之の指揮で録音している。その頃の楽団員はもういないだろう。サウンドトラック盤では和楽器や効果音が使われたりしているが、この組曲ではそういう箇所は省かれているようだ。この日の演奏はホールの残響を十分に生かしていて、サウンドトラック盤よりも神秘さとか深淵さが増していた。

 

 3曲目はメインのベートーヴェン交響曲第8番。今回の企画でベートーヴェン交響曲第8番を演奏する札響は一番地味な曲に当たったという感じが正直あった。しかし、古典交響曲がスケールの大きい演奏だったので第8もおそらくそういう演奏になるという期待が出てきた。果してそれは期待通りの雄壮な演奏だった。

 第1楽章の冒頭から勢いがある力強い出だしだった。それに中間部の盛り上がりも見事だった。各楽章での管楽器のソロもとてもよく、第4楽章でもリズムが変化するところも聴き応えがあった。古典交響曲でも聴けた、スケールの大きさと細かい変化の融合は第8交響曲でもはっきりと聴くことができた。

 アンコールはモーツァルトの歌劇「フィガロの結婚」序曲。9月30日に名曲シリーズで高関健の指揮で聴いているが、編成が少し大きいのと配置が違うためかより厚い響きで聴くことができた。

 古典交響曲も第8交響曲もイメージでは箱庭的な意匠を凝らした演奏になるのではという予想をしていた。それば全く違う演奏だったので聴いていて驚きの連続だった。帰宅してからアンセルメの古典交響曲カラヤンクーベリックの第8交響曲を聴き直してみたけど、秋山札響コンビの演奏は名曲名盤の世評が高い演奏とは違う堂々とした演奏だった。

 第8交響曲が放送されるようだが、古典交響曲も録画されているようなので是非放送して欲しい。