新国立劇場制作 ヨハン・シュトラウスⅡ世 オペレッタ「こうもり」

 令和2年(2020年)12月15日(火)、札幌文化芸術劇場hitaruでオペラを観てきた。指揮はクリストファー・フランクリン、演奏は札幌交響楽団

 

 配役は、アイゼンシュタインはダニエル・シュムッツハルト(バリトン)、ロザリンデはアストリッド・ケスラー(ソプラノ)、フランクはピョートル・ミチンスキー(バス・バリトン)、オルロフスキー公爵はアイグル・アクメチーナ(メゾ・ソプラノ)、アルフレードは村上公太(テノール)、ファルケ博士はルートヴィヒ・ミッテルハマー(バリトン)、アデーレはマリア・ナザロワ(ソプラノ)、ブリント博士は大久保光哉(バリトン)、フロッシュはペーター・ゲスナー(俳優)、イーダは平井香織(ソプラノ)だった

 演出にハインツ・ツェドニクとあり、どこかで聞いた名前だと思ったら、ブーレーズが指揮した1980年のバイロイト音楽祭ニーベルングの指環でローゲとミーメを演じていたあのツェドニクだった。この指環はパトリス・シェローの演出で、1988年にニーベルングの指環全曲の最初の映像ソフトとして出ていた。

 

 こうもりの生演奏は初めてだが、映像ソフトではドミンゴ指揮とC・クライバー指揮の盤を見たことがある。ドミンゴ盤はガラパフォーマンスがあり、ヘルマンプライがジプシー男爵の曲を歌っていた。また登場人物だけではなくシャルル・アズナブールが出てきてシャンソンを歌うという賑やかなガラパフォーマンスだった。また、フロッシュに喜劇役者を配して指揮者のドミンゴと絡んだりしていた。フロッシュが牢に入っているアルフレードに仕事は何かと尋ね、国立歌劇場のテノールだと誇らしげに答える、という場面があった。これはドミンゴ盤でもあるが、ドミンゴ盤ではその後にフロッシュが「かわいそうに」と言って小銭を渡すという場面があった。

 C・クライバー盤はもっと特にガラパフォーマンスもなく、すっきりとした演出で盛り上がる盤面は「雷鳴と電光」でパーティーの参加者がドミノ倒しのように倒れるというところだった。今回、ドミノ倒しはなかったが「雷鳴と電光」は演奏され、東京シティバレエ団が参加して踊っていた。

歌手はそれぞれの役を見事に歌っていたと思うが、中でもロザリンデ役のアストリッド・ケスラーがとてもよかった。高音までよく出ていて聴き応えがあった。

 札響の演奏はとくに気になることなく伴奏に徹していた。座席が1階席の通路の直ぐ後ろで、劇を観るにはとてもいいが、オーケストラピットの音を聴くには前過ぎるのかあまり鮮明に聞こえてこなかった。

こうもりは他のオペラ作品とは違って、とても雰囲気が楽しく、アドリブもあり、特別な演出も可能な作品だ。それは映像ソフトでも十分に伝わってくる。それが札幌の劇場で生演奏でも観られるようになったことを思うと感激も一入だ。やはり一人でも多くの方に観てもらいたかったので1席おきの座席配置で半分にも満たない定員だったのはとても残念だった。