令和3年(2021年)1月22日、第634回札幌交響楽団定期演奏会(hitaru代替公演)を聴きに行ってきた。
プログラムはモーツァルト「魔笛」序曲、ブルックナー交響曲第8番(ノーヴァク版、1890年稿)指揮者はマティアス・バーメルトが来日できず、大植 英次だった。大植はPMFで札響を指揮することはあったが定期を指揮するのは初めてとのことだった。
1曲目は魔笛序曲。編成は12型。モーツァルトの曲は大ホールの実演で聴くと録音で聴くような鮮明さに欠け物足りないことが多い。この日の演奏はそんなことはなく弦も管も鮮明でバランスが取れていた。
休憩なしの2曲目はブルックナー交響曲第8番。今シーズンの札響定期の当初の予定ではドイツ・レクイエム(曲目変更になった)と並んで注目の曲だった。hitaruの響きでも11月にはマーラーの5番、12月にはペトルーシュカと大きな編成の大曲で見事な演奏が聴けただけにこの8番も期待が高まっていた。
冒頭から金管の咆哮が火を噴くようにホール全体に響き亘る。弦楽器も埋もれることなく奏でられていた。ブルックナーらしい重々しいリズムも申し分なかった。
ブルックナー交響曲第8番は名曲で名演も多くレコードもいくつか持っているが、ほとんど聴くことがない。どうにも取っ付きにくいところがある。この日の演奏を聴いて、シューリヒト指揮ウィーン・フィルとフルトヴェングラー指揮ベルリン・フィルの録音を復習のように聴いてみた。
シューリヒト盤は聴きやすくウィーン・フィルの巧みな弦が印象的だった。フルトヴェングラー盤は荒野を突き進むような推進力があり、ベルリン・フィルの逆巻くような弦のうねりが印象的だった。この日の大植指揮札響の演奏は金管の咆吼と重量感のある響きと共に広大な空間を表出させていたことが印象的だった。
今までレコードでもあまり聴いてこなかったブルックナーだがこの日の演奏はこれからのスタンダードになりそうだ。