札幌交響楽団 新・定期演奏会hitaruシリーズ 第3回

 令和3年(2021年)1月28日札幌文化芸術劇場hitaruで新・定期演奏会を聴いてきた。 

 プログラムは早坂文雄「左方の舞と右方の舞」、ベートーヴェン「三重協奏曲」、ドヴォルジャーク交響曲第9番「新世界より」だった。指揮は松本宗利音、共演は葵トリオ(秋元孝介:ピアノ、小川響子:ヴァイオリン、伊東裕:チェロ)だった。

 

 クロークはまだ利用できないので座席の下にコートを入れておこうと思ったが、事前にホームページを見るとコインロッカーが100円玉を入れて施錠し、空けると返却されるので実質的に無料で利用できます、とあった。それならとコインロッカーにコートやマフラーを入れて身軽にしてホール内に入った。今回は座席の変更はなく、初めて販売当初の座席で聴くことができた。

 hitaruは1階席から4階席まであるが、他の階に行くときホールから一旦外に出てエレベーターかエスカレーターもしくは非常階段で他の階に行かなくてはならないと思っていた。それがホール内の左右の下がっていったところから出ると下の階に辿り付けるということを案内の方に教えていただいた。これなら割と簡単に他の階に移動できる。

 

 1曲目は「左方の舞と右方の舞」。14型の編成。hitaruシリーズは必ず日本人の作曲家の曲が入っている。これは雅楽をイメージした曲でオーケストラの響きが巧に使われていた。

 2曲目は「三重協奏曲」。12型の編成。協奏曲はソロ楽器が加わるがこれはピアノトリオがオーケストラと協演するというもの。ピアノトリオの中でもチェロが活躍していてヴァイオリンとピアノを先導しているという印象がある。チェロがあるフレーズを演奏するとヴァイオリン、ピアノがそれに続く。この葵トリオではチェロが弾いた後、次にヴァイオリン、ピアノはこう弾くだろうということがすぐに想像できるぐらい息が合っていた。札響も聴き映えがするように下支えをしていた。

 アンコールはハイドンピアノ三重奏曲第27番 ハ長調 第3楽章」。札幌では5月にふきのとうホールで葵トリオの演奏会があるようなので、この日の演奏を聴いた方は要注目の演奏会になると思う。

 3曲目は「新世界より」。14型の編成。hitaruで新世界交響曲を聴くのは2年前のプラハ交響楽団以来になる。その時は中域が張り出して高域と低域があまり聞こえないという印象があった。この日の演奏では全帯域に亘って良く聞こえていたので、ホールの「エージング」が進んだのか、反射板が乾燥してきて響きが良くなったのかはわからないけど明らかに音が良くなっていると感じた。

 「新世界」はオーケストラの各パートがソロで目立つ箇所が多い交響曲だが、弦の厚み、木管の妙なる響き、金管と打楽器の迫力とどれをとっても聴き応えがある演奏だった。聴き慣れた曲でも演奏がそれほどでもないと長く感じたりするが、この日の演奏は短く感じた。演奏は折り目正しくきちっと角を出すような演奏という印象だった。札響の楽団員も若い指揮者のために協力的に良い演奏をしようという雰囲気も感じ取れた。指揮者の松本宗利音はこれをスタートラインにこれからどのような深い表現力を身につけていくのかこれからが楽しみである。