札幌交響楽団 新・定期演奏会hitaruシリーズ 第4回

 令和3年(2021年)2月25日札幌文化芸術劇場hitaruで第4回新・定期演奏会を聴いてきた。

 プログラムは伊福部昭「交響譚詩」、ハイドン「チェロ協奏曲第1番」、チャイコフスキー交響曲第5番」だった。指揮は広上淳一、チェロは佐藤晴真だった。

 当初はR・シュトラウスのホルン協奏曲が予定されていて、ホルンにはラドヴァン・ヴラトコヴィッチが弾く予定だったが、来日が叶わず曲目と出演者が変更になった。

 

 1曲目は「交響譚詩」。14型の編成。譚詩とはバラードのことで、アレグロの第1楽章とアンダンテの第2楽章からなる。「ゴジラ」を思わせるようなリズムやパンフレットには「津軽じょんがら節」のおもかげがある旋律があるともかかれている。札響でも22回も演奏歴があることからも比較的頻繁に演奏されているらしい。重々しいリズムと幻想的な響きが印象的だった。

 

 2曲目は「チェロ協奏曲」。8-8-6-4-2の編成。チェロの佐藤晴真はミュンヘン国際音楽コンクールチェロ部門で、日本人として初めて優勝した22歳の新進気鋭のチェロ奏者、とパンフレットには書かれている。来日できなかったヴラトコヴィッチとは「ミュンヘン国際音楽コンクール優勝者」という共通点がある。

 編成が小さくなってもオーケストラの音は各セクションともはっきりと聞こえる。チェロは少し線が細い感じがするがこの曲にはそれほど欠点にはなっていない。テクニックは申し分ないので、低弦をもう少し鳴らせるようになるともっと響きが豊かになり規模の大きい曲でも聴かせられるようになると思う。

アンコールはバッハ/無伴奏チェロ組曲第1番より サラバンドだった。

 

 3曲目は「チャイコフスキー交響曲第5番」。14型の編成。札響はなぜかこの曲を「得意」としていて、厚生年金会館で定期演奏会をしていた頃から、最近あまりいい演奏が聴けていないと感じていても、この曲になるとなぜか調子が良くなるという曲だった。

 冒頭、クラリネットが主題を奏で低弦が絶妙なバランスで伴奏をする。木管楽器が弦楽器に消されることがない。スコアに書かれている全ての楽器の音が聴き取れ、オーケストラ全体の響きが厚く、フォルテッシモでも音が混濁することがない。

 第2楽章のホルンの柔らかいソロが朗々と響き渡り、普段聞こえないようなファゴットがとても良く聞こえ、この曲でこんなにファゴットが活躍しているとは思わなかった。フィナーレで金管が高らかに主題を奏でるところでも弦楽器がかき消されることはなく音に広がりがある。

 普段聴き取れない第2ヴァイオリン、ヴィオラファゴットがこんなによく聴き取れるとは正直思わなかった。

 指揮者の広上さんは何も奇を衒うところがなく、期待通りの演奏で札響から音を絞り出していた。

 また、再開後、札響の透明感がある弦の音色がなくなってしまったと思っていたが、この演奏会ではその透明感がある音色が戻ってきていた。

 

 当初、hitaruで聴くステージ上のオーケストラの印象は、中音域は良く聞こえるが高域と低域がカットされているようなホールだと思っていた。昨年、10月末にKitaraが休館するためhitaruで演奏することになり、しばらくの辛抱かと思っていた。それが、11月のマーラー交響曲第5番、12月のペトルーシュカを聴いて金管もかなり響くのだなと感じるようになった。そして1月のブルックナー交響曲第8番、新世界交響曲で低弦や木管も聴けるようになってきたと思った。それが今回のチャイコフスキー交響曲第5番ではオーケストラの全てのセクションがとても良く聞こえるようになり、札響の透明感ある音色も戻ってきた。

 演奏中、こんなに音がいいホールだったかなと思いながら聴いていた。札響の音も変わったのだろうけどホールの響きも変わっているとしか思えない。hitaruでこれだけ聴けるのならKitaraでなくてはならないということもないかもしれない。hitaruとKitaraの違いは残響がKitaraの方が少し長いぐらいで、その他はあまり変わらなくなってきたように思う。