音 楽 日 和 ~JAF会員のための音楽会~

 令和3年(2021年)3月16日「音楽日和~JAF会員のための音楽会」を聴きに行ってきた。

 プログラムはシベリウス組曲「カレリア」、シベリウス/ヴァイオリン協奏曲、モーツァルト/歌劇「魔笛」序曲、ヴェルディ/歌劇「シチリア島の夕べの祈り」、ワーグナー/楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲だった。

指揮は飯森範親、ヴァイオリン独奏は金川真弓、演奏は札幌交響楽団

 会場は札幌文化芸術劇場hitaruで1席置きの配置で半分の入場者数だった。

 

 第1曲目は「カレリア」。編成は12型。「間奏曲」、「バラード」、「行進曲風に」の3曲で構成されている。弦も管楽器もとてもいい響きを醸し出していた。

 第2曲目はヴァイオリン協奏曲。最初の透明感があるソロの出だしから、どんどん引き込まれていった。曲想が変化してもリズムが変わらないので聴いていて引っかかることがない。ヴァイオリンがオーケストラの音にかき消されることもなく、ヴァイオリンのソロがはっきりと聞こえ、オーケストラの伴奏もしっかりとついていた。第2楽章ではソロとオーケストラの呼吸がよく合っていて聴き応えがあった。第3楽章ではポロネーズ風のリズムもルバートも的確で飯森さんの指揮も良くサポートしていた。

 シベリウスのヴァイオリン協奏曲の愛聴盤はフルトヴェングラー指揮クーレンカンプの演奏で、何度も聴いている。何となくクーレンカンプの演奏の記憶を辿りながら、重ね合わせて聴いているとほとんど変わらないという気がしてきた。違うところというとクーレンカンプのようにはポルタメントを使っていないことぐらいだ。次はこう演奏してほしいなあという期待がそのまま音になるような演奏だった。

 こんなに愛聴盤と生演奏が同じようなことは初めての体験だった。金川真弓さんのプロフィールを見るとドイツ生まれでヴァイオリンもドイツ演奏家財団のドイツ国家楽器基金から貸与されたペトラス・グァルネリウスとある。ドイツのヴァイオリニストであるクーレンカンプと何か共通点があるのかもしれないが、詳細はわからない。アンコールはシューベルトの魔王だった。

 シベリウスのヴァイオリン協奏曲があまり衝撃だったので、後半にも引き摺る感じになった。

 第3曲目は「魔笛」序曲。編成は10型。編成が小さくてもオペラの序曲としての劇的効果は十分に発揮されていた。

 第4曲目は「シチリア島の夕べの祈り」序曲。編成は12型。前半の序奏と戦いを象徴する激しく叩きつけるようなリズムが対照的に表現されていた。

 第5曲目は「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲。編成は12型。この演奏会で一番聴きたかった曲。出だしから重々しく始まり、芸術の動機のトランペット、哄笑の動機のクラリネットもよかった。後半のマイスタージンガーの対位法や低弦、チューバもよかった。会場によっては対位法の一方が聞こえて一方が聞こえないということもあるがどちらもはっきりと聞こえていた。

アンコールはエルガーの威風堂々第1番だった。

 

 全体を通してだが、3月は日程が混んでいてリハーサル時間もあまり取れなかったのだろう。もう少しリハーサル時間があったらと思うところもないわけではなかった。

 hitaruがオープンして間もない頃、樫本大進のソロでブラームスのヴァイオリン協奏曲を聴いたが、ヴァイオリンのソロとオーケストラの音が混然一体となっていたように記憶している。それがこの日はヴァイオリンのソロとオーケストラが分離してそれぞれがはっきりと聞こえた。hitaruの音も日増しに好ましい方向に変わってきていることも実感した。