オーディオのこと 38(オーディオ誌雑感)

 今も出版されているオーディオ誌というと音楽之友社の「ステレオ」、音元出版の「オーディオアクセサリー」、「analog」、ステレオサウンドの「ステレオサウンド」、「管球王国」だろうか。この中で「analog」はアナログシステム、「管球王国」は真空管アンプを主に扱っている。

 オーディオ誌の記事はオーディオ評論家という方々が記事を書いているが、面白いのは出版社によって評論家の住み分けがかなりはっきりしているということだろう。音楽之友社音元出版の評論家はかなり重なっているがステレオサウンド社の雑誌に記事を書くことはまずない。また、ステレオサウンド社の雑誌に記事を書いている評論家は音楽之友社音元出版の雑誌には記事を書かない。以前は、有名な評論家であれば両方に記事を書いている方もいたが今はいないようだ。おそらくこれはオーディオ評論の黎明期に高城重躬氏と五味康祐氏の確執から来ているのではないかと考えているがこれはまた次の機会に書いてみたい。

 

 音楽之友社音元出版は国内メーカーの製品を比較的多く取り上げる傾向がある。一方、ステレオサウンドは海外製品を多く取り上げる傾向がある。

 今は、定期的に購入している雑誌はないが、以前は、「ステレオ」、「analog」、「ステレオサウンド」、「管球王国」を定期的に購入していた時期がある。

 

 「ステレオ」誌は国内製品の比較的リーズナブルな価格の製品を取り上げることが多く、使いこなしの記事も多い。オーディオに興味を持ち始めたけどお金がなかった学生時代に比較的よく読んでいた。使いこなしの記事にはCDプレーヤーやアンプの天板の上に鉛のインゴットを置いたり、ブチルゴムを貼ったりするという使いこなし記事がよく載っていた。安い機器で少しでもいい音を引き出そうと上に何か置いたり、ゴムを貼って「鳴き」を止めたりということを盛んにしていた。

 

「analog」は比較的新しい雑誌で20ぐらい前に不定期で始まり、今は季刊になっている。創刊された頃、アナログの本なんていつまで持つのだろうかと思いつつ購入していた。今は気になる記事がある時しか購入しない。

 その後、カートリッジを買替えたいと思ったときに少し続けて購入したことがある。3年前にトーンアームを買替えたのはこの雑誌でトーンアーム特集をしていたことがきっかけだった。トーンアームの特集が記事になったのは何十年ぶりかだったと思う。トーンアームはいろいろな種類があり、ロングとショート、S字とストレート、スタティックバランスとダイナミックバランス、リニアトラッキングとオフセットがあり、軸受けにはワンポイント、ナイフエッジ、ジンバルサポート、ベアリングなどの種類がある。記事ではダイナミックバランスがいいと紹介していた。昨年末も「analog」誌でトーンアーム特集が組まれたが、そこではアームメーカーの方がスタティックバランスを推すと語っていた。

 

 「管球王国」は上杉研究所の創業者上杉佳郎氏が毎号真空管アンプの自作記事を書いていたので、創刊号から15年ぐらい購読していた。10年暮れに上杉佳郎氏が亡くなられて自作記事がなくなり、しばらくして購読を止めた。自作記事はアンプのことがいろいろと解説されていて面白かったが上杉氏が亡くなると読む記事がなくなってしまった。ヴィンテージものが多い真空管アンプの世界は妙な珍説が蔓延っていることが多く、そんなときに上杉氏の言説はとても参考になった。自作記事で購入したのは40号のTAF-1というサブソニックフィルターだった。

 

 「ステレオサウンド」は70号の後半番号から10年ぐらい購読していたと思う。管球王国が創刊されてから両方買うこともないと思い定期購読は止め、気になる記事がある号だけ購入するようになった。

ステレオサウンドを処分するときコピーして残しておきたかった記事に99号「楽器の音色って何だろう?」と182~4号「ファインチューニングのすすめ」がある。

「楽器の音色ってなんだろう?」には各楽器の音色の違いは倍音の出方の違いであるとか、矩形波(くけいは 例:クラリネット)か鋸形波(きょけいは 例:ヴァイオリン)という違いがあることなどが解説され、オーディオ再生は波形を忠実に再現することを心がけるべきと結ばれている。

 「ファインチューニングのすすめ」は間違った方向の使いこなしをしないようにという観点で書かれている。そこには七箇条が記されているが1と7は次のようになっている。

1 ファインチューニングを行う目的は、レコード制作者の意図を正しく汲み取れるシステムを構築することにある。録音芸術や再生芸術の意図を理解して取り組むことが大切。

7 様々なシステムの音を聴くことも、演奏会に行き生の音に触れることも大切。経験を積んで感性を磨き、世間の評判に惑わされず自分の耳で判断できるようにすること。

とある。

 具体的には電源の取り方から、ケーブル、セッティング、部屋のことが連載されている。連載は185号まであったがそれはコピーを取っていない。

 ステレオサウンドで執筆されていた評論家の方々の記事はステレオサウンド社からまとめて著作集として出版されていて、これは購読するようにしている。

 

 各出版社のオーディオ誌は年末になるとグランプリとかベストバイという特集記事を毎年掲載している。グランプリと付くのは今年一番良かった機器はどれかというもので、ベストバイは読者に一番お買い得の機器はこれですというもの。世の中の流れに付いていくために一応は目を通している。

 オーディオ誌の記事を掲載する評論家の方々は、ある程度は個人の責任で記事を書いているので、オーディオ誌の記事の信頼度は評論家の信頼度ということでもある。