オーディオのこと 42(オーディオ試聴会)

 今は、オーディオ試聴会が開催されていないが、昨年の2月までは毎月のように開催され主要メーカーが一同に会するオーディオショウも開催されていた。

 記憶の中の最初のオーディオ試聴会は、今から30年ぐらい前、テイセンホールで開催された北海道オーディオショウが最初だった。普段、オーディオ店の店頭になくオーディオ誌でしか見たことがない製品を間近に見ることができてとても興奮したことを覚えている。翌年も楽しみにしていたがオーディオよりはカーオーディオの方が幅を利かせるようになりあまり面白くなくなった。

 その後、札幌のオーディオ店が主催となってホテルで開催されるようになった。有名な評論家が来たこともあったがこの頃はあまり記憶になく、オーディオショウらしくなったのは2015年にニトリ文化ホール横の「ホテルさっぽろ芸文館」で開催された頃からだった。

 それ以前にオーディオ製品の試聴では札幌教育文化会館内の視聴覚センターで1982年頃から「レコードジャーナル(CDジャーナルとかAVシアターと何度か変わっている)というクラシックの新譜とオーディオ製品の試聴を兼ねたイベントを何度か聴きに行ったことがある。視聴覚センターには備え付けの装置としてアキュフェーズのセパレートアンプとダイヤトーンの大型スピーカーがあった。いずれも最高級の製品でいつかはこういう音を自宅で聴きたいと思った。この催しも、途中で視聴覚センターから場所を移して開催していたが、2013年を最後に音楽評論家の方が亡くなられて終了した。

 その頃から札幌のオーディオ店で頻繁にオーディオ試聴会を開催するようになり、先に書いたように2015年にようやく北海道でもオーディオショウらしいオーディオショウが開催されるようになった。

 この頃は自宅システムのグレードアップを図っている頃でもあり、予定表を見ながら朝から晩まで興味深く各メーカーのブースを回っていた。オーディオショウの会場は宴会場のような中ホールでは3ないし4メーカーぐらい、小さい部屋では1ないし2メーカーのブースがあって時間が重ならないように1日に2回か3回ぐらい試聴会をするという方法で開催される。中ホールでも20人ぐらいいれば一杯になるし小さい部屋では10人ぐらいで一杯になる。目玉はやはりその年に話題になる新製品だった。確かこの2015年はB&W802D3というスピーカーが話題になっていて試聴時間になると100人ぐらいの人が押し寄せていたようだ。この時はスピーカーを買替えたばかりで私自身はあまり興味がなく、混雑することはわかっていたため他のブースを廻っていた。

 翌2016年は802D3の上位機種800D3が話題になった。この時も100人ぐらいは来ていたと思う。せっかくの新製品なのだがB&Wを輸入しているD&Mのデノンとマランツにはセパレートアンプがなくマランツかデノンのプリメインアンプでならしていた。そのためどうしても物足りなさが残るのが残念だった。

 2017年はカートリッジのグレードアップを考えていたのでアナログ関連のブースを主に廻っていた。といっても現実的に購入できそうなところはオルトフォンとフェーズメーションぐらいしかなく、オーディオテクニカ、マイソニックラボ、イケダなどは参加していないので聴くことはできない。

 翌2018年は5月に東京で開催されたアナログオーディオフェアに行ってきた。わざわざ出かけたのは北海道オーディオショウでは聴けないカートリッジやトーンアームを製作しているメーカーを試聴できることと、アンプメーカーの上杉研究所が出展しているからだった。出展といっても展示だけで試聴できる訳ではないが上杉研究所の方と直接話しをすることができ、そこでプリアンプの新製品のことも聞いた。

 さまざまなブースを廻っていて気付いたのが、東京だと多くのメーカーにとって「地元」でもあるし上司とかそれなりに偉い方もいることがあるのか、北海道で話をするときよりも緊張しているように感じられた。とにかく決まったことを間違いなく話すということに主眼が置かれているようだった。それと会場に来る方も前の方にいる人たちは最初から最後まで試聴しているが後ろの方はとにかく出入りが激しかった。北海道のオーディオショウだと始まるとそれほど出入りは多くないが、東京では盛んに出入りがあった。

 

 2018年の北海道オーディオショウは「ホテルさっぽろ芸文館」がニトリ文化ホールの閉館に伴い取り壊されることになったので、会場は東札幌コンベンションセンターになった。こちらはホテルと違い展示場なので試聴会としては狭すぎず広すぎずという試聴には都合がいい部屋が多い。この時から土日だけではなく金曜の午後からも試聴できるようになった。この年は北海道で地震があった年で、レコードを試聴中に余震があり針飛びがありメーカーの方が狼狽するという一幕もあった。

 この年はトーンアームの買替えを考えていたのでアームの違いを聞き分けようと試聴に臨んでいた。またこの頃から各メーカーとも試聴にレコードをかけるようになったことも都合がよかった。聞きたいアームメーカーは出展していなかったけれども、あるメーカーがそこのアームを使用していたのでそのメーカーを2回ぐらい試聴した。そのメーカーの方からもこのアームの長所を聞くことができた。もう一機種候補に挙げていたアームがあったがやはり短所もあるらしい。最終的にはこの時に次に購入するアームの機種を決めたといってもいい。

 2019年は特にこれといった目的もなかったが、もし自分がオーディオ機器を持っていなくてこれから揃えるとしたらどれを選ぶだろうという気持ちで聴くようにした。オーディオショウで試聴できる製品は高級品が多い。普及品のように値段的な制約がある場合よりも高級品の方がそのメーカーが持っている技術を惜しみなく使ってくるため、メーカーの特色が出やすい。自分が買う買わないにかかわらずオーディオショウの各メーカーの音を確かめる上でも聴いて廻るのは意味があると思う。

 オーディオ機器から少し距離を取るようになるとかけている音楽の方に興味が湧くようになり試聴でよく使われる曲をあらかじめ自宅のオーディオ機器で聴いて試聴会での音と比較するという聴き方もするようになった。

 オーディオ誌で評論家が試聴記事で取り上げた製品も実際に聴いてみると、あの評論家はこういう音のことをこういう言い方で表現していたのだなというようなことがわかってくる。そうなると記事を読んだだけで、この評論家がこう書いているということはきっとこんな音なのだろうという見当もついてくる。

 試聴会がなくなってもう1年以上も経つが早く始まって欲しいと思う。