ディスクのこと 1(ラトルのブラームス交響曲第1番)

 プリアンプを更新したのでこれから少しずつソフトのことも書いていきたい。タイトルを「ディスクのこと」としたのは「ソフトのこと」としてもレコードとCDしかないのでディスクでいいと考えたから。

1回目は何にしようかと考え、以前にも少しブログで取り上げたラトルのプラームスについて書いてみることにした。このレコードは2014年9月にベルリンのフィルハーモニーホールで録音され、2017年末に世界で1833セット(日本は500セット)が発売された。録音方法は指揮車の後ろ1メートル、地面から4.5メートルの位置に1組のステレオマイク(ワンポイント録音)を吊って、ここで拾われた音がマイク・プリアンプでダイナミックレンジの調整をした後、カッティングマシーンで直接ラッカー盤を刻み込んでゆく(ダイレクトカッティング)というものだった。

この今では珍しいワンポイント録音とダイレクトカッティングをベルリン・フィルが行ったといことで話題にもなった。

 弦楽器の配置は第1ヴァイオリンが下手、第2ヴァイオリンが上手の対抗配置だが、ヴィオラが下手奥、チェロ、コントラバスが上手奥という配置になっている。

演奏は至ってオーソドックスなものでテンポの変化はほとんどなくところどころで強弱の変化を少し付けいるぐらいだろうか。

 音の特長としては弦楽器が前に拡がり、木管は通常真ん中に定位するが、少し拡がって聞こえてくるのはワンポイント録音の効果かもしれない。ただワンポイント録音とかダイレクトカッティングといっても音質が必ずしもいいわけでもなく新しい技術というわけでもない。

 音質では60年代のカラヤンベルリン・フィルの方がいい。最もシンプルな録音方法でレコードを製作するとこういう音になります、これ以上よく聞こえるとしたらそれは編集などによって「作られた物」です、というリスナーへの問いかけなのかもしれない。

 カラヤン以降、ベルリン・フィルはメジャーレーベルに膨大な録音を残してきた。しかし、スターシステムが90年代に崩壊し、かつてのように次々と新録音が出てくる時代はとっくに過ぎ去っている。カラヤンバーンスタインに続くスターはもはや出てこなくなった。  

 今回ラトルのブラームス交響曲第1番を何度も聴いて必ずしも音がいいとは言えない録音方法を敢えてベルリン・フィルが用いたのは、録音の原点に戻るということと、かつてのメジャーレーベルの録音へのアンチテーゼでもあったのかという気もしてきた。