札幌交響楽団 hitaruシリーズ新・定期演奏会 第6回

 令和3年(2021年)6月4日札幌文化芸術劇場hitaruで第6回新・定期演奏会を聴いてきた。

 プログラムは武満徹:海へⅡ~アルト・フルート、ハープ、弦楽オーケストラのための、メンデルスゾーン交響曲第4番「イタリア」、ベートーヴェン交響曲第7番だった。

 指揮は尾高忠明、アルト・フルートは元札響首席フルート奏者の高橋聖純、ハープは高野麗音だった。

当初は指揮とヴァイオリンにウィーン・フィルコンサートマスターであるヴォルクハルト・シュトイデだったが、入国が間に合わず曲目と出演者が変更になった。

 当初のプログラムはジョン・ウィリアムズ:「シンドラーのリスト」よりヴァイオリンとオーケストラのための3つの小品、メンデルスゾーン:ヴァイオリンとピアノのための二重協奏曲、メンデルスゾーン交響曲第4番が予定されていた。

 

 1曲目は「海へⅡ」。編成は6-6-4-4-2の弦楽器のみ。普段はなかなか聴く機会のないアルト・フルートの低音とハープの音色が海の情景を描いると思っていたが、解説には鯨が泳いでいる様子を音楽で表しているということのようだ。

 この曲を札響が初演した演奏が近いうちにCDで発売されるらしい。「札幌交響楽団50年史」によると1982年6月27日に「武満徹世界初演曲 札響特別演奏会」で場所は札幌市民会館、主催は札幌の月刊誌「ろんだん」とある。作曲した武満徹はリハーサルにも密着し、本番のステージではトークも受け持った、とある。9月に開局を予定していたFM北海道が収録し全国放送もされたそうだ。

 

 2曲目は「イタリア」。編成は12-10-8-7-6。指揮者の尾高忠明さんはテンポを速めにとり颯爽とした演奏をする指揮者という印象がある。作曲家のメンデルスゾーンもそのような指揮法を唱えていたらしい。イタリアはそういう尾高さんにぴったりの曲だと思っていたので、今回もそのような演奏になると予想していた。しかし、演奏が始まると予想とは違い、テンポは中庸でオーケストラを厚く響かせるような演奏だった。

 

 3曲目は交響曲第7番。編成はイタリアと同じく12-10-8-7-6。尾高さんの第7番は10年前のベートーヴェンツィクルス以来だと思う。SACDでも発売されているがテンポを速めにとり颯爽とした演奏という印象だった。それがその前のイタリアと同じように響きが厚くよりダイナミックな演奏だった。第4楽章の後半でもオーケストラを目一杯鳴らしていたが、尾高さんはよくも悪くもそういう演奏はしない指揮者だと思っていたが今までの印象とは違っていた。

 

 今年は3月の定期演奏会で尾高さんが指揮した「ダフニスとクロエ」第2組曲でも夜明けでオーケストラを目一杯鳴らす素晴らしい響きを引き出していたが、この頃から少し変わってきたのだろうか。7月に尾高さんの指揮で定期演奏会があるのでその時も楽しみにしたい。

 

ディスクのこと 2(サン=サーンス交響曲第3番 オルガン)

 サン=サーンス交響曲第3番「オルガン」について書いてみたい。演奏はルイ・フレモー指揮バーミンガム交響楽団、録音場所はバーミンガム大学グレートホールで1972年の録音。この盤を取り上げることにしたのはステレオサウンドから出ている「クラシック名録音106究極ガイド」に掲載されているからで、演奏ではミュンシュ指揮ボストン響に劣るが、オルガンを聴くにはこの盤が一番いいということでこれを取り上げる。

 演奏は総じて可もなく不可もなくという感じだが、第1楽章後半に2本のスピーカーの左奥から拡がりながらズーーンという響きが漂ってくる。他の盤ではオルガンは聞こえてくることは聞こえてくるが、ここまでオルガンの響きが拡がってくることがない。

 第2楽章後半のオルガンの主和音も厚く鳴り響く。後半はオーケストラも出てくるのでオルガンが聴き取りにくくなる。チューバとオルガンの区別が付くかどうかは、オーディオシステムを判断する指標になるかもしれない。

 

 ジャケットにパイプオルガンの写真があるが、今の大ホールのパイプオルガンを見慣れた目で見るとそれほど大きくは見えないし、「究極ガイド」には天井が高いと書かれているが、それも大ホールの天井から比べると特に高いとも思えない。パイプオルガンが設置された響きの良いホールで録音したらもっと音がいいディスクが出来そうな気もする。

ディスクのこと 1(ラトルのブラームス交響曲第1番)

 プリアンプを更新したのでこれから少しずつソフトのことも書いていきたい。タイトルを「ディスクのこと」としたのは「ソフトのこと」としてもレコードとCDしかないのでディスクでいいと考えたから。

1回目は何にしようかと考え、以前にも少しブログで取り上げたラトルのプラームスについて書いてみることにした。このレコードは2014年9月にベルリンのフィルハーモニーホールで録音され、2017年末に世界で1833セット(日本は500セット)が発売された。録音方法は指揮車の後ろ1メートル、地面から4.5メートルの位置に1組のステレオマイク(ワンポイント録音)を吊って、ここで拾われた音がマイク・プリアンプでダイナミックレンジの調整をした後、カッティングマシーンで直接ラッカー盤を刻み込んでゆく(ダイレクトカッティング)というものだった。

この今では珍しいワンポイント録音とダイレクトカッティングをベルリン・フィルが行ったといことで話題にもなった。

 弦楽器の配置は第1ヴァイオリンが下手、第2ヴァイオリンが上手の対抗配置だが、ヴィオラが下手奥、チェロ、コントラバスが上手奥という配置になっている。

演奏は至ってオーソドックスなものでテンポの変化はほとんどなくところどころで強弱の変化を少し付けいるぐらいだろうか。

 音の特長としては弦楽器が前に拡がり、木管は通常真ん中に定位するが、少し拡がって聞こえてくるのはワンポイント録音の効果かもしれない。ただワンポイント録音とかダイレクトカッティングといっても音質が必ずしもいいわけでもなく新しい技術というわけでもない。

 音質では60年代のカラヤンベルリン・フィルの方がいい。最もシンプルな録音方法でレコードを製作するとこういう音になります、これ以上よく聞こえるとしたらそれは編集などによって「作られた物」です、というリスナーへの問いかけなのかもしれない。

 カラヤン以降、ベルリン・フィルはメジャーレーベルに膨大な録音を残してきた。しかし、スターシステムが90年代に崩壊し、かつてのように次々と新録音が出てくる時代はとっくに過ぎ去っている。カラヤンバーンスタインに続くスターはもはや出てこなくなった。  

 今回ラトルのブラームス交響曲第1番を何度も聴いて必ずしも音がいいとは言えない録音方法を敢えてベルリン・フィルが用いたのは、録音の原点に戻るということと、かつてのメジャーレーベルの録音へのアンチテーゼでもあったのかという気もしてきた。

オーディオのこと 42(オーディオ試聴会)

 今は、オーディオ試聴会が開催されていないが、昨年の2月までは毎月のように開催され主要メーカーが一同に会するオーディオショウも開催されていた。

 記憶の中の最初のオーディオ試聴会は、今から30年ぐらい前、テイセンホールで開催された北海道オーディオショウが最初だった。普段、オーディオ店の店頭になくオーディオ誌でしか見たことがない製品を間近に見ることができてとても興奮したことを覚えている。翌年も楽しみにしていたがオーディオよりはカーオーディオの方が幅を利かせるようになりあまり面白くなくなった。

 その後、札幌のオーディオ店が主催となってホテルで開催されるようになった。有名な評論家が来たこともあったがこの頃はあまり記憶になく、オーディオショウらしくなったのは2015年にニトリ文化ホール横の「ホテルさっぽろ芸文館」で開催された頃からだった。

 それ以前にオーディオ製品の試聴では札幌教育文化会館内の視聴覚センターで1982年頃から「レコードジャーナル(CDジャーナルとかAVシアターと何度か変わっている)というクラシックの新譜とオーディオ製品の試聴を兼ねたイベントを何度か聴きに行ったことがある。視聴覚センターには備え付けの装置としてアキュフェーズのセパレートアンプとダイヤトーンの大型スピーカーがあった。いずれも最高級の製品でいつかはこういう音を自宅で聴きたいと思った。この催しも、途中で視聴覚センターから場所を移して開催していたが、2013年を最後に音楽評論家の方が亡くなられて終了した。

 その頃から札幌のオーディオ店で頻繁にオーディオ試聴会を開催するようになり、先に書いたように2015年にようやく北海道でもオーディオショウらしいオーディオショウが開催されるようになった。

 この頃は自宅システムのグレードアップを図っている頃でもあり、予定表を見ながら朝から晩まで興味深く各メーカーのブースを回っていた。オーディオショウの会場は宴会場のような中ホールでは3ないし4メーカーぐらい、小さい部屋では1ないし2メーカーのブースがあって時間が重ならないように1日に2回か3回ぐらい試聴会をするという方法で開催される。中ホールでも20人ぐらいいれば一杯になるし小さい部屋では10人ぐらいで一杯になる。目玉はやはりその年に話題になる新製品だった。確かこの2015年はB&W802D3というスピーカーが話題になっていて試聴時間になると100人ぐらいの人が押し寄せていたようだ。この時はスピーカーを買替えたばかりで私自身はあまり興味がなく、混雑することはわかっていたため他のブースを廻っていた。

 翌2016年は802D3の上位機種800D3が話題になった。この時も100人ぐらいは来ていたと思う。せっかくの新製品なのだがB&Wを輸入しているD&Mのデノンとマランツにはセパレートアンプがなくマランツかデノンのプリメインアンプでならしていた。そのためどうしても物足りなさが残るのが残念だった。

 2017年はカートリッジのグレードアップを考えていたのでアナログ関連のブースを主に廻っていた。といっても現実的に購入できそうなところはオルトフォンとフェーズメーションぐらいしかなく、オーディオテクニカ、マイソニックラボ、イケダなどは参加していないので聴くことはできない。

 翌2018年は5月に東京で開催されたアナログオーディオフェアに行ってきた。わざわざ出かけたのは北海道オーディオショウでは聴けないカートリッジやトーンアームを製作しているメーカーを試聴できることと、アンプメーカーの上杉研究所が出展しているからだった。出展といっても展示だけで試聴できる訳ではないが上杉研究所の方と直接話しをすることができ、そこでプリアンプの新製品のことも聞いた。

 さまざまなブースを廻っていて気付いたのが、東京だと多くのメーカーにとって「地元」でもあるし上司とかそれなりに偉い方もいることがあるのか、北海道で話をするときよりも緊張しているように感じられた。とにかく決まったことを間違いなく話すということに主眼が置かれているようだった。それと会場に来る方も前の方にいる人たちは最初から最後まで試聴しているが後ろの方はとにかく出入りが激しかった。北海道のオーディオショウだと始まるとそれほど出入りは多くないが、東京では盛んに出入りがあった。

 

 2018年の北海道オーディオショウは「ホテルさっぽろ芸文館」がニトリ文化ホールの閉館に伴い取り壊されることになったので、会場は東札幌コンベンションセンターになった。こちらはホテルと違い展示場なので試聴会としては狭すぎず広すぎずという試聴には都合がいい部屋が多い。この時から土日だけではなく金曜の午後からも試聴できるようになった。この年は北海道で地震があった年で、レコードを試聴中に余震があり針飛びがありメーカーの方が狼狽するという一幕もあった。

 この年はトーンアームの買替えを考えていたのでアームの違いを聞き分けようと試聴に臨んでいた。またこの頃から各メーカーとも試聴にレコードをかけるようになったことも都合がよかった。聞きたいアームメーカーは出展していなかったけれども、あるメーカーがそこのアームを使用していたのでそのメーカーを2回ぐらい試聴した。そのメーカーの方からもこのアームの長所を聞くことができた。もう一機種候補に挙げていたアームがあったがやはり短所もあるらしい。最終的にはこの時に次に購入するアームの機種を決めたといってもいい。

 2019年は特にこれといった目的もなかったが、もし自分がオーディオ機器を持っていなくてこれから揃えるとしたらどれを選ぶだろうという気持ちで聴くようにした。オーディオショウで試聴できる製品は高級品が多い。普及品のように値段的な制約がある場合よりも高級品の方がそのメーカーが持っている技術を惜しみなく使ってくるため、メーカーの特色が出やすい。自分が買う買わないにかかわらずオーディオショウの各メーカーの音を確かめる上でも聴いて廻るのは意味があると思う。

 オーディオ機器から少し距離を取るようになるとかけている音楽の方に興味が湧くようになり試聴でよく使われる曲をあらかじめ自宅のオーディオ機器で聴いて試聴会での音と比較するという聴き方もするようになった。

 オーディオ誌で評論家が試聴記事で取り上げた製品も実際に聴いてみると、あの評論家はこういう音のことをこういう言い方で表現していたのだなというようなことがわかってくる。そうなると記事を読んだだけで、この評論家がこう書いているということはきっとこんな音なのだろうという見当もついてくる。

 試聴会がなくなってもう1年以上も経つが早く始まって欲しいと思う。

第637回札幌交響楽団定期演奏会

 令和3年(2021年)5月8日、9日、第637回札幌交響楽団定期演奏会(hitaru代替公演)を聴きに行ってきた。

 

 プログラムは武満徹:弦楽のためのレクイエム、グラズノフ:ヴァイオリン協奏曲、リムスキー=コルサコフ:交響組曲シェエラザード」、指揮は広上淳一、ヴァイオリンは神尾真由子だった。

 クラズノフのヴァイオリン協奏曲はレコードがなかったのでハイフェッツのレコードで予習した。シェエラザードはライナー盤、コンドラシン盤、アンセルメ盤などの名盤があるし、札響はエリシュカとのフェアウェルコンサートの記憶がまだ残っていてCDも出ている。

 

 1曲目は「弦楽のためのレクイエム」。14型の弦楽合奏。3年前のオール武満プロの時に聴いている。弦楽器が彩なす響きがとても良かった。

 

 2曲目は「ヴァイオリン協奏曲」。12型。第1楽章の出だしから神尾さんのヴァイオリンが冴え渡る。1日目は2階席の少し奥の方で聴いたので音が少し遠く、線が細い気がしたが、2日目の1階席ではヴァイオリンの響きが良く聞こえた。低弦の響きの上に高弦を奏でていた。第2楽章も心地よく聞き入る程に曲の中に引き込まれた。第3楽章では打って変わってオーケストラとの掛け合いになる。ソロもオーケストラも互いに刺激し合いながら競り合うように進んでいく。それでもソロがオーケストラにかき消されることなく「協奏」を楽しむことが出来た。

 アンコールはエルンスト/シューベルト「魔王」による大奇想曲だった。

 

 3曲目は「シェエラザード」。14型。シェエラザードといえば4年前のエリシュカ指揮によるフェアウェルコンサートが札響ファンの間でも「あの時のシェエラザードは」と語り草になっている。それだけシェエラザードに対する熱い想いがある中での今回の演奏だった。本来なら、昨年バーメルト指揮で4月定期に演奏される予定だったが中止になってしまった。エリシュカと忘れられない演奏をした札響と、ストコフスキーの助手を務めたバーメルトのコラボでどんなシェエラザードが聴けるかと楽しみにしていただけにこの中止はとても残念だった。果して広上さんは札響ファンの前でどんな演奏をするかと興味津々だった。   

 第1楽章「海とシンドバッドの船」では弦楽器の大きくうねる波と管楽器の広大な空間がとてもよく表現されていた。第2楽章「カランダール王子の物語」ではファゴットのソロで主題が奏でられるがかなり抑揚をつけていた。ここにもソロを生かすという狙いが現れているように感じた。行進曲風の箇所でもリズミカルさを強調するように曲調の変化を際立たせていた。第3楽章「若き王子と王女」幻想的な雰囲気の中に楽しげな要素も混じっていた。第4楽章「バグダッドの祭り、海、青銅の騎士のある岩での難破、終曲」では祭りの踊りの箇所は広上さんの本領発揮と感じられるようなリズミカルさが印象的だった。続く海の嵐の箇所も壮大な空間にオーケストラを響かせていた。シェエラザードはこのように各楽章に表題が付いているが、その表題に沿うような演奏だと感じた。その意味では4年前のエリシュカ指揮による楽譜の一音一音を慎重にはっきりと音に表していくシェエラザードとは対照的だった。

 

 1日目はフレーズの入りでテンポを遅くして次第に速くするということを繰り返していた。シェエラザードは各楽器のソロがとても多い曲でそれぞれの奏者を生かすように演奏していた。しかし、それだとフレーズが変わる度に音楽の流れが止まってしまうような感じがしたし、第2楽章で少しアンサンブルの乱れのようなところも感じた。

 2日目の演奏ではテンポの変化を少なめにして音楽の流れが途切れないようにしていたように思う。アンサンブルの乱れも感じなかった。その中でソロを生かすようにするところに変化はなかった。総じて2日目の方が良かったと思う。

 

オーディオのこと 41(アンプの増幅方法による音の違い)

 オーディオ試聴会がなくなりYouTube動画でオーディオ店やオーディオメーカーの動画サイトで新製品の紹介などをよく見るようになった。中には初心者向けに丁寧に作られているなあと感心する動画があったり、試聴会さながらの動画があったりとオーディオファンとしてはとても楽しみに見られる。もちろん中にはどうかと思うような内容のものもないではないが、それはオーディオ試聴会でも同じなので特に気になるほどのことではなかった。

 YouTubeなのでいろいろと動画を見ているとお薦め動画が上がってくる。その中に「○○の館」というチャンネルがあってオーディオについて「検証」するかのように実験して結論を出しているというチャンネルがあり、なんとなく面白いなあと思っていくつか見ていたが、実験の方法があまりにもお粗末だったので、いくつか動画を見てそれっきり見なくなっていた。

 最近になって大阪のオーディオ店「オーディオ○品館」という新製品の試聴動画をたくさん上げているありがたいお店のブログで、「1万円のアンプと330万円のアンプでは有意義な差がない、というオーディオ誌があり、これを事実であるかのようにして配信しているYouTube動画がある」と書いていた。あの「○○の館」動画のことだなと気付いて、そのことを扱っている動画を見ると40万回以上の再生回数になっていたので、気になってそのオーディオ誌の記事を調べてみた。

 そのオーディオ誌は音楽之友社から出ている「ステレオ」という雑誌で、この記事が書かれていたのは2004年3月号でデジタルアンプの特集の中の記事だった。この頃はソニー、シャープ、ヤマハ、オンキョーなどがデジタルアンプは効率が良いということから相次いで製品が出ていた。それまではデジタルアンプは音が悪いという「先入観」というか「定評」があったが、その先入観を覆そうという狙いの特集記事でもあった。

 問題の記事は、6種類のデジタルアンプと2種類のアナログアンプの計8種類のアンプを4人のオーディオ愛好家がブラインドテストをして、デジタルアンプかアナログアンプかということと、それぞれのアンプに順位付けをするというものだった。

試聴した製品は次のとおり。

1 アキュフェーズ C2800+M8000×2(アナログアンプ 330万円)

2 ソニー TA-DR1(デジタルアンプ 100万円)

3 ラステームシステムズ RSDA202(デジタルアンプ 9,800円)

4 PSオーディオ HCA-2(デジタルアンプ 248,000円)

5 ヤマハ MX-D1(デジタルアンプ 60万円)

6 デノン PMA-2000Ⅳ(アナログアンプ 12万円)

7 フライングモール DAD-M1×2(デジタルアンプ 8万円)

8 ソニー TA-DA9000ES(デジタルAVアンプ 60万円)

※順番は試聴順。

 

 結果は、デジタルアンプかアナログアンプかを判別できたのは4人の内1人でそれもデノンの1機種だけで、アキュフェーズは4人ともデジタルアンプだったと答えている。

 順位では1位が多かったのがソニーTA-DR1、その次にヤマハ、デノン、フランイングモールが2~4位を競る状況で、4人とも8位だったのが330万円のアキュフェーズで9,800円のデジタルアンプよりも順位が下だったという結果になった。

 

 2004年にはまだソニー、オンキョー、ビクター、シャープがオーディオ市場に参入していて、デジタルアンプに再起をかけていたのかもしれない。特集記事では、これからはデジタルアンプの時代だといわんばかりの内容になっている。

 現在、国産でDクラスアンプ(今はデジタルアンプとはいわなくなり、Dクラスアンプ、スイッチングアンプというようになっている)を出しているのはマランツテクニクス、スペックといったメーカーで海外メーカーではジェフローランド、リンなどもスイッチングアンプである。小型とか薄型で重量が軽い割には出力が大きいアンプはDクラスアンプであることが多い。スイッチングアンプというのは昔からあり、それがここ十数年ぐらいの間にオーディオでも使用されるようになった。すでにDクラスアンプは珍しくもなく特別なものでもなくなっている。

 

 アナログアンプの代表として取り上げられたアキュフェーズはA級とAB級の2種類を出し、デノンはAB級アンプを出している。A級とは小出力で効率も悪く発熱も多いが音質がいいとされている。B級はパワーがあり効率も高いが歪みが多いとされている。そのため小さい出力の時はA級で動作させ大きいパワーの時はB級で動作させるAB級アンプが出てきた。オーディオ市場で一般的なアンプはAB級が多く、値段が高い小出力のアンプはA級であることが多い。

 アキュフェーズ、ラックスマン、エソテリックといった国産の老舗メーカーはA級とAB級の2種類を出しているが、セパレートアンプでA級アンプを出しているのはアキュフェーズだけ。

以前、オーディオショウのアキュフェーズブースで同じ価格帯のA級パワーアンプとAB級パワーアンプの比較試聴をしたことがあるが、A級の方が良かったと手を挙げる人が圧倒的に多かった。

 その昔、アンプは出力ではなく重い方が音はいいと言われたことがあった。出力よりもトランスやコンデンサーに容量が大きいものを使用し、筐体をしっかりした物にすると当然、重量は重くなる。オーディオ評論家の長岡鉄男氏(1926-2000)唱えた説?でこれは出力偏重へのアンチテーゼでもあった。Dクラスアンプはアンプが重い方がいいという説へのアンチテーゼとして出てきたのかもしれない。そのために冒頭のような雑誌でのかなり強引な特集記事が出てきたとも考えられる。確かにいくら音がいいといっても発熱も多く重いアンプは使いづらいことも確かだ。そのためにDクラスアンプのような小型でパワーがある製品がユーザー側も求めていたところもあるのだろう。

 

 それでも専ら音のことだけを考えるならアキュフェーズの試聴会のようにA級アンプに分があることも確かだと思う。家庭で使用する上でいろいろと制約があるならAB級やDクラスアンプという選択肢もあるということだろうか。

第636回札幌交響楽団定期演奏会

 令和3年(2021年)4月25日、第636回札幌交響楽団定期演奏会(hitaru代替公演)を聴きに行ってきた。

 

 プログラムはフォーレ組曲ペレアスとメリザンド」、バルトーク:「ピアノ協奏曲第3番」、ストラヴィンスキー交響曲第1番だった。

当初予定されていた指揮者のマティアス・バーメルトとピアニストのデジュー・ラーンキ出入国制限のため入国できず、指揮は秋山和慶、ピアノは小菅優に変更になった。編成は14型。

 

 3曲ともレコードがなかったので予め4月初めにレコードを買って予習しておいたが、ストラヴィンスキー交響曲ハ長調交響曲と間違えて購入していた。

 1曲目は「ペレアスとメリザンド」。有名なシシリエンヌが3曲目に入っている。繊細な弦と透き通った管の音色がこの曲にふさわしい雰囲気を醸し出していた。

 

 2曲目は「ピアノ協奏曲第3番」。今年度の定期演奏会のプログラムは「愛と死」がテーマとなっている。このピアノ協奏曲はバルトークの最後の曲で最後の17小節がスケッチとして残り、弟子が完成させた。夫人に捧げられた曲でもある。

 一応レコードで予習はしたが、ピアノの単音が多い曲という印象があり、そのピアノのタッチが明快でオーケストラに埋もれることがない。ティンパニとピアノが主題を奏でるところもバルトークらしかった。hitaruの音響が良くなっている証だろう。

 アンコールはバルトーク/10のやさしいピアノ小品第5曲<セーケイ人たちとの夕べ>だった。

 

 3曲目は「交響曲第1番」。予習用のレコードとして買ったのがハ長調の方だった。何度か聴いて臨んだのだけれど最初に聴いたときにこれは違う曲だと気付いた。ストラヴィンスキーリムスキー=コルサコフのもとで作曲を学んでいた頃の曲でプログラムにはグラズノフ、タネーエフ、チャイコフスキーの影響があると書かれている。全くの初見なので次は何が出てくるだろうとわくわくしながら聴いていた。ストラヴィンスキーの曲はバレエ音楽が有名でそちらは頻繁に演奏されるが、交響曲ももっと演奏されてもいいのではないかと思った。