新国立劇場制作「サロメ」

 令和5年(2023年)6月13日(火)、札幌文化芸術劇場hitaruで歌劇「サロメ」を観てきた。指揮はコンスタンティン・トリンクス、管弦楽は札幌交響楽団。制作は新国立劇場で大道具・小道具・衣装製作はバイエルン州立劇場。

11日と13日の公演で配役は同じ。

  配役は次の通り。

サロメ:アレクサンドリーナ・ペンダチャンスカ

・ヘロデ:イアン・ストーレイ

・ヘロディアス:ジエニファー・ラーモア

・ヨハナーン(ヨハネ):青山貴

・ナラポート:鈴木准

・ヘロディアスの小姓:加納悦子

・5人のユダヤ人:与儀巧、青地英幸、加茂下稔、糸賀修平、畠山茂

・2人のナザレ人:北川辰彦、秋谷直之

・2人の兵士:金子慧一、大塚博章

カッパドキア人:大久保光哉

・奴隷:花房英里子

 

 オスカー・ワイルド原作の「サロメ」にリヒャルト・シュトラウスが曲を付けた1時間40分ほどの作品。王女でもある無垢の処女が、宴会の席で自分に言い寄る義父であり叔父でもあるヘロデ王から逃げだし外に出てくる。そこにある井戸の中からヨハネがヘロデやヘロディアスの罪を責め立てることを言っている。サロメは自分に気がある護衛隊長ナラポートを利用して井戸からヨハネを外に出すようにさせる。サロメヨハネに一目で夢中になるが相手にされない。サロメも露骨に性的な言葉で興味を持たせようとするがヨハネは全く関心を持たない。それを傍らでみていたサロメに思いを寄せている護衛隊長は自殺してしまう。ヨハネも再び井戸に戻ってしまう。

 そこにヘロデ王とヘロディアスがやってきて、ヘロデ王サロメにダンスを踊るように要求する。気に入った踊りを踊れば何でも好きなものをやると約束すると何かを確信したように踊ることを承諾する。そして「七つのヴェールの踊り(一枚ずつヴェールを脱いでいく踊り)」を踊るとヘロデ王は約束通り何でも好きなものを言えというとサロメは「ヨハネの首(男根の象徴)」を要求する。ヘロデ王は何度も他の物ならいいがそれだけはダメだと言い、何度も説得しようとするがサロメはあくまでも「ヨハネの首」を要求する。ついにヘロデ王も約束を守らざるを得ず兵士にヨハネの首を取ってくるように命じる。

 遂にヨハネの首を手に入れたサロメは生首に対してどれだけ自分がヨハネを愛していたのかを蕩々と語る。そして生首に口づけをするサロメを見て、嫌悪感を抱いたヘロデ王は兵士にサロメを殺すように命じる。

 

 これがサロメの梗概だが、これだけでも衝撃的でおぞましい内容なのかがわかる。聖書に出てくる「サロメ」にここまでの残酷さはないが、それをこれだけの病的なデカダンスとエロティシズムの物語にしたのはオスカー・ワイルドの原作とオーブレー・ビアズリーの挿絵による。私が持っている翻訳本にはビアズリーの挿絵が16枚あり、中でも有名なのが「舞姫(踊り手)の褒美」で井戸の中からヨハネの生首を載せた盾を支える手が伸び、それをサロメヨハネの髪を掴んでいる絵だろう。

 

 今回の指揮者トリンクスと札響の演奏はこれだけの内容を全く損なうことなく演奏していた。主要人物のサロメヘロデ王、ヘロディアス、ヨハナーンの歌唱も申し分なく、見応えがあり聴き応えがある公演だった。

 

 今回は2階席だったがオーケストラボックスの音は1階席よりも2階席の方がよく聞こえるように感じた。