東京二期会 オペラ「ドン・カルロ」

 令和5年(2023年)10月7日(土)、札幌文化芸術劇場hitaruで歌劇「ドン・カルロ」を観てきた。指揮:レオナルド・シーニ/演出:ロッテ・デ・ベア、管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団。《札幌市民交流プラザ会館5周年事業》としてシュトゥットガルト州立歌劇場および札幌文化芸術劇場hitaruとの提携公演だった。

7日の配役は次の通り。フィリッポⅡ世役で出演を予定していた妻屋秀和はけがのため出演ができなくなり8日にも出演予定のジョン・ハオが出演することになった。

  配役は次の通り。

・フィリッポⅡ世:ジョン・ハオ(バス)

ドン・カルロ:城 宏憲(テノール

ロドリーゴ:清水 勇磨(バリトン

・宗教裁判長:大塚 博章(バス)

・修道士:清水 宏樹(バス・バリトン

・エリザベッタ:木下 美穂子(ソプラノ)

・エボリ公女:加藤 のぞみ(メゾソプラノ

・テバルド:守谷 由香(ソプラノ)

・レルマ伯爵&王室の布告者:児玉 和弘(テノール

・天よりの声:雨笠 佳奈(ソプラノ)

・6人の代議士:岸本 大(バス・バリトン)、寺西 一真(パリトン)、外崎 広弥(バリトン)、宮城島 康(バリトン)、宮下 嘉彦(バリトン)、目黒 知史(バス)

 

 ヴェルディの「ドン・カルロ」はベートーヴェンの第九の歓喜頌歌の原詩で有名なフリードリッヒ・フォン・シラーの戯曲「ドン・カルロス、スペインの王子」が原作になっている。ヴェルディはこの「ドン・カルロ」の他、シラーの原作で「群盗」、「ジョヴァンナ・ダルコ」、「ルイザ・ミラー」をオペラ化している。

 「ドン・カルロ」の舞台は、16世紀スペインのフィリッポⅡ世(フェリペⅡ世)治下のスペイン、フランスである。当時のスペインは「太陽が沈まぬ国」と言われるほど世界各地に植民地を持っていた。それを治めていたのがスペイン・ハプスブルク家で、そのスペイン帝国の基礎を築いたのがカール5世、その息子がフィリッポⅡ世、その息子がタイトルロールのドン・カルロである。

 物語はドン・カルロの許嫁であるフランス王女エリザベッタが政略結婚でフィリッポⅡ世と結婚することになり、愛し合っていたドン・カルロとエリザベッタが愛の相克に苦しむというのが主軸となり、そこにカトリックプロテスタントの対立などが絡んでくる、というのが全体の筋書きとなっている。

 カルロとエリザベッタの叶わぬ恋の場面が展開され、そこにカルロを好きになったエボ公女が現れるというふうにドラマが進んでいく。

 結局、カルロを愛したエボリ公女は修道尼になり、プロテスタントロドリーゴはカルロの身代わりとなることを覚悟して殺され、エリザベッタはカルロと別れ王妃として生きていくことを決心し、カルロもプロテスタントの国フランドル(英語名:フランダース、現ベルギー)の統治に向かう。そこに王と宗教裁判長が現れ、二人を捕らえようとするが、そこに墓の中から修道士に姿を変えたカルロ5世が現れて「この世の苦悩は修道院の中までついて来る。心の葛藤は、天上ににおいてのみ安らぐだろう」との声が聞こえ幕切れとなる。

 

 これが「ドン・カルロ」の梗概だが、現実のドン・カルロはこのオペラとはかなり違う。フェリペⅡ世(フィリッポⅡ世)は生涯で4度結婚していての最初のポルトガル王女との間にできたのがドン・カルロ。カルロとエリザベート(エリザベッタ)は生まれたときから政略結婚のため婚約していたのは事実だが実際には会ったことはないらしい。カルロは身体的にも性格的にもいろいろと問題があった人物のようだ。そのため父から見捨てられたと感じて奇行をエスカレートさせていき、(ここからはオペラと同じ)とうとう父に反逆してネーデルランドに行こうとして逮捕される。ついには自殺未遂をはかり牢獄で病死する。フェリペⅡ世の三度目の結婚相手だったエリザベートも男子を早産して母子ともに亡くなってしまう。カルロもエリザベートも23歳で早逝した。

 その後、フェリペⅡ世は姪(妹の子)と4度目の結婚をしてその息子がフェリペ三世となる。スペイン・ハプスブルク家はその後も近親婚を繰り返し1700年に断絶する。

 

 演奏に話を戻すと、ドン・カルロの城宏憲、エリザベッタの木下美穂子、エボリ公女の加藤のぞみがよかった。指揮のレオナルド・シーニと東京フィルハーモニー交響楽団もとてもいい演奏だった。  

 hitaruで札響とPMF以外のオーケストラを聴くのは初めてだが、確かに音色の違いは感じた。

 今後もオペラはできるだけ観に行ってみたい。