オーディオのこと 2(アンプのパワーとスピーカーの能率)

 ツイッターでハーベスのスピーカーのことが出てきたので緊急でブログを書くことにしました。

 オーディオで数多の失敗をしたことの一つにスピーカーの能率とアンプの出力の関係があります。能率が低いスピーカーに電源が弱い(必ずしも出力とは限らない)アンプを接続すると頭打ちの音になります。スピーカーのカタログには必ず能率という項目があってB&W606は88dB(デシベル)、タンノイXT6は89dBとなっています。それに比べてハーベスのコンパクトスピーカーHL-P3ESRは83.5dBと能率が低く、マランツMCR612と接続しても満足にドライブできないと思います。

 私もこれと同じ失敗をしたことがあります。当時、定評がある10万円ぐらいのプリメインアンプ(110W)を使用していた頃、スピーカーをこのハーベスと同じ系統のコンパクトスピーカー(能率82.5dB)に替えたところ寸詰まりというか音量が上がるところで頭打ちになるような音になりました。そのため仕方なくアンプも買替えることになった、という経験があります。ですからオーディオシステムを組むときはアンプとスピーカーはセットで考えなくてはなりません。「青写真が必要」と書いたのはそういう意味もあります。

 またスピーカーのカタログ数値で気をつけてほしいのが「公称インピーダンス」で606とXT8は8Ωですが、ハーベスは6Ωとなっています。8Ωと6Ωぐらいだったらそれほどではありませんが、もしこれが4Ωだとするとアンプにそれだけ負担がかかることになります。インピーダンスが低いということはアンプが電流を多く流さなくてはならなくなります。そのために電源がしっかりしたアンプ、要するにトランスやコンデンサーが大きくて電流を流す能力が高いことが求められる、ということになります。

 また、箱に穴が空いているバスレフタイプを薦めるのはスピーカーの振動板が動くときに箱の中の空気の抵抗がないので動き易くなり、それだけアンプに負担をかけないからです。これが密閉型だと振動板が動くときに箱の中の空気が抵抗となりそれだけアンプに負担をかけることになります。

 ハーベスのスピーカーはとてもいいスピーカーであり、電源がしっかりとしたアンプでならせば、マランツMCR612と606やXT6との組み合わせよりも、ずっといい音が出ることは間違いありません。さっぽろ劇場ジャーナルの多田さんが「芸術的な音」というのも決して誇張しているわけではなく、いいアンプで鳴らせばそういう音でなると思います。しかし、もう一度繰り返しますが、マランツMCR612と組み合わせるスピーカーではありませんので、もし中古で10万円で売っていたとしても買わない方がいいと思います。もし30万ぐらいのスピーカーが10万円ぐらいで売っていて、それほど古くもなく音も気に入ることがあったら、公称インピーダンスと能率が606やXT6と同じような値なら組み合わせてもいいと思います。

 またバイアンプの利点は低音用のウーファーと高音用のツゥイーターの干渉をなくせるということです。振動板は電気で動きますが、動くことによって発電もしています(フレミングの左手の法則)。それが他の振動板に干渉して音を濁す原因になります。バイアンプにするとその干渉を防ぐことができるので澄んだ音になります。

 このハーベスのスピーカーはペアで30万ぐらいですが、これを鳴らすならアンプにも同じかそれ以上の金額が必要でしょう。それにCDプレーヤーも同等のものとなればあっという間に100万円コースになります。このようにすぐ予算オーバーになるので、試聴だけで決めてはいけない理由もここにあります。そのかわり音は値段通りに良くなります。

 しかし、もし将来、グレードアップしてそれぐらいのオーディオにしたいという「青写真」があるならマランツMCR612ではなくCDプレーヤーとアンプは別々に購入した方がいいとなりますが、それでは相談の趣旨に合いません。あくまでもマランツMCR612に合うスピーカーというのがご相談の趣旨なので、その範囲で答えさせていただいています。