第639回札幌交響楽団定期演奏会

 令和3年(2021年)7月11日、第639回札幌交響楽団定期演奏会(hitaru代替公演)を聴きに行ってきた。すでにKitaraが開館したのでhitaruでの代替公演はこれが最後になる。

 

 プログラムは武満徹:3つの映画音楽、ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番、シベリウス:「ペレアスとメリザンド組曲チャイコフスキー:幻想序曲「ロミオとジュリエット」。指揮は尾高忠明、ピアノ独奏は小曽根真、客演コンサートマスターは、現大阪交響楽団首席ソロコンサートマスターの森下幸路だった。

 

 1曲目は「3つの映画音楽」。12-10-8-7-6の編成で弦楽器のみの演奏。第1曲は「ホゼー・トレス」より「訓練と休息の音楽」、第2曲は「黒い雨」より「葬送の音楽」、第3曲は「他人の顔」より「ワルツ」。弦の音がとても心地よく響いていた。

 

 2曲目は「ピアノ協奏曲第2番」。弦楽器の編成は変わらず管楽器等が加わる。第2番は2年前に横山幸雄さんのピアノと札響の演奏で聴いた。楽団員の不幸があった直後で葬送のような重々しい雰囲気の演奏だった。

 この曲は冒頭から怒濤のような響きが押し寄せる演奏が多いが、オーケストラが抑え気味に鳴る。小曽根さんはジャズピアニスト出身ということなのかタッチは軽やかな感じなのでオーケストラもピアノがかき消されないように配慮しているように感じた。中間部に冒頭の主題が出てくるがここではかなりオーケストラを鳴らしていた。

 第2楽章ではジャズピアニスト出身の小曽根さんの良さが発揮されていたように思う。

 第3楽章は録音で聴くとオーディオシステム泣かせのところがあり、フォルテッシモの

ように過大な入力があると音が濁りうまく再生できないことが多い。これは様々なセッティングの調整にもよるし、アンプに大きな入力が入ったときに歪まないというアンプの性能にも左右される。生演奏でも12型の編成ではあったが相当な音圧を感じた。先月にも感じた尾高さんの表現力が一回り大きくなったと感じたことがそのままここでも表現されていた。

 アンコールは小曽根真/ストラッティン・イン・キタノ。前日の10日は小曽根真/ガッタ・ビー・ハッピーだったようだ。

 

 3曲目は「ペレアスとメリザンド」。弦の編成は同じ。メーテル・リンクの戯曲の劇付随音楽として作曲されたものを組曲に編曲したもので、フォーレドビュッシーは聴いたことがあるがシベリウスの作品は初めて聴く。

 第1曲「城門にて」、第2曲「メリザンド」、第3曲A「海辺で」、第3曲B「庭園の噴水」、第4曲「3人の目の悪い姉妹」、第5曲「パストラーレ」、第6曲「糸を紡ぐメリザンド」、第7曲「間奏曲」、第8曲「メリザンドの死」という構成になっている。

 イングリッシュホルンがところどころで憂愁の響きを奏でる。聴き慣れたフォーレドビュッシーと比較して長閑な雰囲気もあるが全体的に暗めの曲想が続くように感じた。

 

 4曲目は「ロミオとジュリエット」。編成は14-12-10-8-7と大きくなり、繊細さとダイナミックな表現がかみ合ったとても良い演奏だった。先月のhitaru定期で尾高さんがオーケストラからかなり多彩な表現力を引き出すようになってきたと書いたが今回の演奏も期待に違わない演奏だった。

 

 今回で定期演奏会のhitaru代替公演は終了になるが、Kitaraだけではなくhitaruでも聴きたいと思えるほどhitaruの音も良くなっていると思うので、新hitaru定期はこれからも聴いていきたい。