オーディオのこと 47(オーディオ専門店の敷居)

 オーディオユニオンお茶の水店の店員の方のブログで初めてオーディオ機器の試聴するときの心得のようなものを書かれていた。オーディオ専門店は敷居が高いので初心者の方に対してこういうことは気にしなくていいですよということを中心に書かれたブログがオーディオアカウントのツイッターで話題になっていた。オーディオアカウントでフォローしている方々は全国のオーディオ店やオーディオの発信をしているVチューバーの方が多い。意外だったのは、YouTubeでいろいろな機器についてレビュー動画を作っている人でもオーディオ専門店は敷居が高いと感じている方が多かったことだった。そこでオーディオ専門店の「敷居」について自分のことを振り返ってみたいと思った。

 

 オーディオ専門店に最初に行ったのは社会人になってからだった。学生の時は学生生協でオーディオ機器を買っていた。購入する決め手は雑誌の評判を頼りにしていた。社会人になりCDを購入するようになるとオーディオ専門店のソフト売場で盛んに買うようになった。というのはレコード店では再版制度があり定価販売だが、オーディオ店では10%の割引をしてくれたからだ。1Fがソフト売場で2Fがオーディオ売場だった。CDを買うついでにオーディオも見ることができた。雑誌に掲載されている機器を直接見られるのがとても楽しかった。そのため「敷居が高い」と感じることはなかった。

 それから自分なりにオーディオ機器を揃えてきた頃、東京の秋葉原のオーディオ専門店に行ったことがある。オーディオ誌にも広告を掲載し、札幌のオーディオ店にはない品揃えをしていて札幌ではなかなか見られないオーディオ機器も見ることができたし、試聴もさせてもらった。アンプを2機種比較させてもらって、「やっぱり違いますね」と感想を言うと店員の方も満足そうだった。

 

 私自身がオーディオ専門店の「敷居が高い」とあまり感じなかったのは雑誌を読んだり、イベントでオーディオ機器を試聴したりして、様々なオーディオ機器の知識をある程度持っていたからだと思う。そういう知識があると店員さんと話をするきっかけにもなるし質問もできる。しかし、オーディオの知識を持っているマニアの中にも専門店の敷居は高いと感じている方もいるのでその原因は何なのだろうと考えてみた。

 一つにはネット販売で買うことに慣れていて対面販売には慣れていないということが考えられる。試聴したいと店員さんに言うと買わなくてはならないという圧力を感じるとかそういうことだろうか。確かに試聴だけして購入はネット販売で安いところを探して買うというのであればなかなか専門店に気軽に試聴するというのは気が引けるかもしれない。

 

 試聴するといっても試聴すること自体がすでに「敷居が高い」のかもしれない。オーディオ試聴会やオーディオショウで紹介される機器は高級品ばかりだから初心者の方には値段を見ただけで腰が引けるのだろう。

 それでも初心者の方にも高級機を聴くことを是非お薦めしたい。というのは高級機の方がそのメーカーの音が体現されていると考えられるからだ。普及機でA社かB社で迷っているならA社のフラグシップモデルとB社のフラグシップモデルを聴き比べて音の傾向を把握するというのは機器選びにとても参考になると思う。コスト制限がない方がそのメーカーが目指す音がはっきりと出てくるので違いがわかりやすい。そのためにも試聴会やオーディオショウで高額な製品も「敷居が高い」と考えずに試聴してもらいたい。メーカーやオーディオ店もその辺りをもっと広く告知した方が良いと思う。