札幌交響楽団 hitaruシリーズ定期演奏会 第9回

 令和4年(2022年)4月14日札幌文化芸術劇場hitaruで第9回hitaruシリーズ定期演奏会を聴いてきた。今回から「新」が抜けてhitaruの定期演奏会になったらしい。

 プログラムは指揮車のリオネル・ブランギエとピアニストのリーズ・ドゥ・ラ・サールの来日が叶わなかったことから大幅に変更された。

当初はサロネン:ヘリックス(2005)、ラヴェル:ピアノ協奏曲、優雅で感傷的なワルツ、ストラヴィスキー:「火の鳥組曲(1919年版)から、

 藤倉大:トカール・イ・ルチャール、ラヴェル:ピアノ協奏曲、ベルリオーズ幻想交響曲に変更された。2月のhitaru定期では団員に感染者が出たため大編成の曲が演奏できなくなり変更された藤倉大の曲が今回は入っていた。

 指揮は今年度から札響の正指揮者に就任した川瀬賢太郎、ピアノ独奏は岡田奏だった。編成は1曲目と3曲目は14型、2曲目はピアノの影ではっきりは見えないところもあったが8-8-6-4-4だったと思う。

 

 1曲目は「トカール・イ・ルチャール」。プログラムによると、この言葉の意味は「奏でること、闘うこと」という意味のスペイン語とのこと。大自然の中の生き物たちのイメージを壮大さと繊細な響きで表現されているとされている。スケールの大きさと細かい響きを見事に響かせていた。

 

 2曲目は「ピアノ協奏曲」。2019年2月15日、第616回定期演奏会で指揮広上淳一、ピアノ:ジャン=エフラム・バヴゼの演奏で聴いていてとても良かった印象がある。その時はバヴゼのピアノに札響がついて行くという感じだったが、今回はピアノとオーケストラがよく溶け合っていた。前回は難しいパッセージも難なく弾きこなすことに感心していたが、今回は当たり前のように見事な演奏だった。

 アンコールはラヴェルクープランの墓よりメヌエットだった。

 

 3曲目は「幻想交響曲」。第1楽章と第4楽章を反復していたので演奏時間は1時間近かったと思う。しかし、時間の長さを感じさせない川瀬さんの指揮振りは見事だった。

 ハープが指揮者の左右の脇に1台ずつ置かれていた。第2楽章の「舞踏会」ではハープの音色がとても良く響いていた。そして今まで聴いた演奏や録音では聴いたことがないポルタメントを使っていたのは恋人同士の「甘さ」を表現していたのだろうか。第1ヴァイオリンの奏者もこの箇所で苦笑いしていた様な気がする。

 第3楽章の「野の風景」では上手袖からのオーボエの響きも素晴らしかった。最後の方の春雷のバスドラムも息が合っていた。

 第4楽章の断頭台への行進では管楽器や打楽器でもとてもよく聴かせる演奏だった。

 第5楽章のワルプルギスの夜の夢では「鐘」は下手袖から聞こえていた。担当の打楽器奏者は舞台から出たり入ったりを繰り返して忙しそうだった。魔女の夜を思わせるようなおどろおどろしさは感じなかった。第2楽章のポルタメントが「恋人同士の甘さ」を表現したのなら第5楽章のグリッサンドは「魔女が集う不気味さ」を表現してもらいたかった。川瀬さんにはより高い表現力を期待したいのであえて書いておきたい。全体的に少し芝居がかった箇所も気にはなったが幻想交響曲の演奏としては成功だったと思う。

 来月も川瀬さんの指揮で名曲シリーズがあるのでこれからも楽しみだ。