第626回札幌交響楽団定期演奏会

 令和2年(2020年)1月31日、2月1日、第626回札幌交響楽団定期演奏会を聴きに行ってきた。指揮は札響の首席指揮者マティアス・バーメルト。プログラムはシューベルトウェーベルン ドイツ舞曲D820(管弦楽版)、モーツァルト 交響曲第39番、ベートーヴェン 交響曲第7番だった。

 ドイツ舞曲は12型の編成だった。初日の演奏で最初に音を聴いたとき、いつもの札響らしい弦の響きではなかったのでカルメン疲れかとも思った。

 次のモーツァルトでは弦も14型になり札響らしい響きが戻ってきた。交響曲第39番は第1楽章と第4楽章がソナタ形式だが、バーメルトはソナタ形式の提示部と再現部で違う箇所を強調する演奏をしていると気付いた。 

 提示部と再現部は似ているが当然違う箇所がある。バーメルトは、提示部ではそこを予感させ再現部ではそこを劇的に強調する。第2楽章の緩徐楽章ではピアニッシモを漂わせ、第3楽章のメヌエットでは同じようなフレーズの繰り返しが平板にならないようにアクセントを微妙に変えている。

 モーツァルト交響曲ではソナタ形式の展開部が短いので、バーメルトのこれらの演奏の特徴は出にくかったかもしれないが、次のベートーヴェン交響曲第7番ではその特徴が大いに発揮された。モーツァルトと同じ14型だが、冒頭から厚い和音が響き渡る。第7番の第1楽章と第4楽章はソナタ形式で展開部も長く、よりソナタ形式の特徴がはっきりしている。それだけにバーメルトの演奏は作曲家が提示部と再現部で変化をつけたところを聴き手にわかりやすく聴かせてくれている。第2楽章ではピアニッシモとフォルテッシモの差によりダイナミズムがとてもよく表現されていた。第3楽章はA-B-A-B-Aのスケルツォで急と緩を繰り返すだけの、これも平板な演奏になりがちだが、バーメルトはここでもフレーズの最後を上げたり上げなかったりして細かく変化を付けている。そして、第3楽章の後半でもバーメルトは第3楽章が終わると同時に第4楽章が始まることがわかるように伏線を張っていた。第4楽章でも提示部で予感させ再現部で違いを強調するバーメルトの指揮はここで最大限の効果を発揮していた。

 回りくどい言い方になってしまったが交響曲ソナタ形式の楽章で、提示部で予感させ再現部で強調するという演奏はフルトヴェングラーのレコードを聴いたときぐらいしか経験がない。

 札響も指揮者の意図を理解するのに1日目はやや手探り状態で細かいミスもあったが、2日目はそれを楽しんでいるようにも見受けられた。