オーディオのこと17(レコードプレーヤー歴)

 ある程度の年代以上の方なら物心がついたときから、レコードが聴けるプレーヤーがあったと思う。我が家にはサファイア針をネジで止めるレコードプレーヤーがあってそれを中学生ぐらいまで聴いていた。それからトリオというメーカーのシステムコンポ、いわゆるシスコンを中学生の時に買ってもらった。シスコンとはレコードプレーヤー、チューナー、プリメインアンプ、カセットデッキ、ラック、スピーカー(2本)を、それぞれ単体で組み合わせてセットにしたステレオシステムだった。

 それまではモジュラーステレオといって、レコードプレーヤー、チューナー、アンプが一体となったステレオがメインだった。それがシスコンであればそれぞれのコンポーネントをグレードアップできた。

 購入したシスコンは10万円を少し出るぐらいで、三つのグレードの中で一番下だった。そのプレーヤーはトリオのKP-3100という製品で、カートリッジはMM型で着脱式、レコードの演奏が終了するとアームが自動的にもどるオートリターン機構を備えていて、とても便利だった。ターンテーブルの駆動はベルトドライブだった。

 それが5年ぐらいするとアームの軸受けがガタついてきて回転数が不安定になってきて、パイオニアのPL-6100Aというフルオートプレーヤーに買替えた。スイッチを押すとアームが自動的にレコードの外周に移動してレコードを演奏し、演奏が終わると自動的にレストに戻ってきた。カートリッジは高出力のMC型で着脱式、ターンテーブルの駆動はダイレクトドライブだった。しかし、このプレーヤーも2年ぐらいで回転ムラが出てきたのでやむを得ず交換することになった。

 次に購入したのがトーレンスのTD-147というプレーヤーだった。カートリッジは付属していなくて、アームはストレートタイプでダイナミックバランス型、駆動方式はベルトドライブだった。他にヤマハのGT-2000という選択肢もあったが、ベルトドライブに拘りこちらにした。トーレンスのプレーヤーはフローティングタイプといってターンテーブルとアームをキャビネットからバネで浮かせるという構造だった。床から伝わる振動から生じるハウリングを低減させるという効果があるはずだったが、床が畳だったので近くを動いただけで針飛びがした。仕方がないので柱に棚を拵えてその上に設置した。

 ストレートアームなのでSPUなどのシェル一体型のカートリッジは使用できなかった。それが次第に不満になり、またCD時代になりアナログプレーヤーも市場から徐々に姿を消していったのでSPUが使用できるレコードプレーヤーに交換することにした。

 次に購入したのは同じトーレンスのTD-321markⅡというターンテーブルで、これにSME3010RというアームとオルトフォンSPUクラシックという組み合わせにした。すでにSPUが取り付けられるようなアームはSMEしかなく、トーンアームを選べるような手頃な価格のターンテーブルもこのTD-321markⅡしかなくなっていた。このプレーヤーもターンテーブルとアームをボードからバネで浮かせた構造になっていた。その頃は床も畳からフローリングに替えていたので、レコードに針を落とした後、リスニングポジションに戻るときに針飛びがするようなことはなくなっていた。

 このプレーヤーはベルトドライブ駆動でベルトも伸びやすく毎年のようにベルトを取替えたり、捻ったりして使っていた。回転数を調整する機構を持たないので回転数が落ちてくるとベルトを掛けるモーターのプーリーにテープを巻いたりして使用していた。違うプレーヤーに取替えたくても市場には機種がなく、状態がいい中古品もほとんどなかった。

 トーレンスのプレーヤーをだましだまし使ってきたが、ようやく何とか手が届きそうな価格でラックスマンがレコードプレーヤーを出したのが2011年だった。PD-171という機種でアームが付いて値段が40万円ぐらいだった。アームレスタイプが出たのが2013年だった。翌年、だましだまし使ってきたトーレンスTD-321markⅡのモーターがついに壊れてしまい買替えなくてはならなくなった。この頃でも国産ではラックスマンのPD-171しかなく、後は海外製品か中古品だった。オーディオ店の展示品で海外製2機種とラックスマンを比較試聴した結果、ラックスに決めアームはオルトフォンにした。

 その後、テクニクスヤマハ、テクダスは高級なレコードプレーヤーを続々と出し、ティアックソニーなどが安価なレコードプレーヤーを出してきた。海外製でも高い製品ばかりではなくD&M(デノン&マランツ)がオーストリアのプロジェクトというレコードプレーヤーの輸入を開始したり、エソテリックもVPIというラックスマンと同じぐらいの価格帯の製品を輸入したりするようになった。いままでレコードプレーヤーを出してこなかったハーマンやエレクトリでも新しくレコードプレーヤーを取り扱うようになった。

 レコードプレーヤー市場はここ数年で数が増え劇的に変化した。入門用の安い製品から高級な製品までかなり質の高い製品が揃うようになり、買う製品がなかった頃を考えると隔世の感がある。