札響名曲シリーズ 2020 4月11日振替公演

 令和2年(2020年)8月1日、札幌コンサートホールKitaraで札幌名曲シリーズの4月11日振替公演を聴いてきた。2月22日の名曲シリーズから5ヶ月の休止期間を経て再開後初の演奏会だった。

 指揮は佐藤俊太郎で2016年から2019年まで札響の指揮者だった。コンサートマスターの田島さんは「八ヶ岳サマーコンサート(山梨県)」に出演のため、客演コンサートマスターに戸原直さんが出演していた。

 プログラムも大幅に変更された。編成の大きな曲を避けながらも再開後初の演奏会なので金管楽器や打楽器も出番があるプログラムになった。変更された座席に座り、ふと天井を見上げると反射板がいつもより少し下に下がっているような気がした。

 1曲目は金管楽器と打楽器によるトマジの「典礼風ファンファーレ」より第1、第4楽章だった。どうなるかと期待と不安が混じる気持ちだったが、極めてオーソドックスで気負う感じもなかった。張りのある音色が健在なので安心した。

 2曲目の前に「サプライズ」として前日まで「八ヶ岳サマーコンサート」に出演されていた田島さんが朝一の飛行機で帰札してエルガーの愛のあいさつとクライスラーの愛の喜びを演奏した。田島さんの冴え渡る弦の響きを久しぶりに聴けた。

 2曲目からは弦楽器だけの曲が3曲続く。まずはモーツァルトのディヴェルティメントK136。普段より弦の各パートがはっきりと聞える。人数が少ないということもあるかもしれないが、今までも編成が少ない演奏は聴いている。その時よりもはっきりと聞える。特に第2ヴァイオリンがとてもよく聞えた。第2の首席の桐原さんが加わったことの効果が現れてきたのかもしれない。

 3曲目はグリーグのホルベルク組曲から第2楽章。繊細な弦の響きと軽やかで静かに響いてくる低弦の音が聞けた。

 4曲目はチャイコフスキーの弦楽セレナーデから第4楽章。ここでも目立っていたのが第2ヴァイオリンだった。第2がはっきりとすることで全体に色彩感が増し、聴き応えのある主部になった。第1楽章の主題が戻ってくるところでそれが一体になり、演奏に厚みを与えていた。

 後半はモーツァルト交響曲第41番「ジュピター」。編成は10-8-6-5-4、フルート1、オーボエ2、ホルン2、ファゴット2、トランペット2、ティンパニィ1。第1楽章と第4楽章の提示部は繰り返していた。札響のジュピターは2017年の第600回定期演奏会でポンマーさんの指揮で、そして昨年は「海道東征」の時に聞いている。以前は、モーツァルト交響曲は実演で聴くと抑揚がないというか聴き映えのしない演奏が多かった。それは札響に限らず外国オケやウィーン・フィルを聴いたときも同じ思いをしている。

 それが、ポンマー指揮で聞いた時とか、エリシュカ指揮で38番、今年はバーメルト指揮で39番を聴いていると、以前のようにモーツァルト交響曲は実演では聴き映えがしないという印象はなくなっていた。

 今回もその期待に違わず第1楽章冒頭から活き活きとした音が響く。しかしながらフルートとオーボエはこの曲が最初だったためか少し緊張気味な感じがしたが、曲が進むにつれ次第に緊張がほぐれてきているように感じた。弦楽器の快活さは冒頭から第4楽章のフィナーレまで一貫していた。座席は低弦楽器とは反対側の2階席で、普通なら低弦はあまり聞き取れないことがあるが、低弦もよく聞えた。これは反射板がいつもより低かった効果かもしれない。それもあり第4楽章のフーガもよく聞き取れた。

 アンコールはG線上のアリアで、これはプログラムが変更される前にプログラムに入っていた曲だった。

 全体的に良かったが、まだ通常の演奏配置ではないし、客席も半分の入りなので試運転という感じも正直あった。早く通常の演奏に戻ってくれることを願っている。