札幌交響楽団hitaruシリーズ・新・定期演奏会 第2回

 令和2年(2020年)8月6日札幌文化芸術劇場hitaruで今年度から始まった新・定期演奏会を聴いてきた。第1回が5月に開催される予定だったが中止になったので今回が実質的に第1回となる。

 プログラムは武満徹「波の盆」、メンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲」、ベートーヴェン交響曲第5番「運命」だった。指揮は尾高忠明、ヴァイオリン独奏は辻彩奈だった。

 8月1日のKitaraでの名曲シリーズは座席の変更にかなり時間がかかり、列に並んでから入場するまでの時間が長かった。そのため今回は早めに会場に行って並ぶことにした。手指の消毒と検温を済ませると半券を自分でもぎり座席に向かった。クロークは利用できなかった。入口から入ると◯列の方はこちらへという案内表示を持った係員の方がいたので、そちらへ行くと変更された席に案内された。これなら前回のKitaraの時よりもスムーズに入場ができる。実際、入場に時間がかかり開演が遅れるということはなかった。

 開演前に札響事務局長が新しく始まるhitaruシリーズについての説明をしていた。hitaruシリーズは、日本の作曲家の作品と新人演奏家との共演を中心にするということで定期演奏会や名曲シリーズとの差異化を図っているらしい。

 1曲目は武満徹の「波の盆」。それまでこの曲は聴いたことがなく、同名のテレビドラマがあり、すでに札響がCDを出していることも知らなかった。テレビドラマで使われたこともあり、聴きやすく灰汁が強いところもないのでもっと演奏機会があってもいいと思った。

 2曲目はメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲。ヴァイオリン独奏の辻彩奈さんは低弦の音に特長があった。この曲は線が細く旋律をよく歌わせるという演奏が多い。辻さんの奏でる音は低弦を厚く鳴らすところに特長がある。特に第1楽章のカデンツァは低弦の厚みを生かしていてとてもよかったし、第3楽章でも同様だった。新人なので少し辛いことを書くと、第2楽章がもう少し聴かせる演奏だったらと思う。低弦の響きに特長があるのでそれを生かして緩徐楽章を演奏できるようになると、プログラムに名前があるだけで期待できる演奏家になるのではないか。

 3曲目はベートーヴェン交響曲第5番「運命」。配置は10-8-6-5-4だった。尾高さんの同曲の演奏は、10年ぐらい前のベートーヴェンツィクルスの時に聴いていて、これはSACDになっている。札響では他に18年2月の名曲コンサートでポンマーさんの指揮で聴いている。

 この日の演奏はベートーヴェンツィクルスや名曲コンサートの時よりも良かったという印象だ。ベートーヴェンツィクルスの時はややテンポが速めで軽快という感じだった。今回、テンポはあまり変わらないがより密度が濃い演奏という印象だった。それぞれの楽器が高いレベルで一体となっていた。前回の名曲コンサートの時、第2ヴァイオリンが良かったと書いたが、今回も聴かせどころ(第4楽章提示部の最後の方)で力演していた。

 

座席は2階席の真ん中の前の方でステージ全体が見渡せる場所だった。hitaruでのコンサートは中音域がよく聞こえるが高域と低域が聴き取りにくいという印象だったが、今回の座席ではどの楽器もよく聴き取れた。ホールやオーケストラによってはファゴットコントラバスは聴き取れないことが多いが、この座席では聴き取れた。音のバランスはKitaraとあまり違わないが、hitaruの方は間接音が多いのか、オーディオ的表現をすると音像が膨らむ感じがする。運命の第1楽章のオーボエカデンツァもよく響いていたし、ヴァイオリンソロの音も良く聴き取れた。1階席で客席から見えないパートはあまりよく聞こえないというのはKitaraでもhitaruでもあまり変わらないが、hitaruでは1階席が広いのでどうしても音のバランスが中音域に集まる座席が多くなるのかもしれない。

 11月以降はKitaraが改修に入るのでhitaruでのコンサートを聴く機会が増える。もう少しいろいろな座席で聴く必要がありそうだ。