第21代札幌コンサートホール専属オルガニスト アダム・タバイディ フェアウェルオルガンリサイタル

 令和2年(2020年)8月23日、Kitaraの専属オルガニストアダム・タバイディさんのフェアウェルオルガンリサイタルを聴いてきた。専属オルガニストも21代目になる。毎年、10月に新しい専属オルガニストの方が来て、翌年8月にフェアウェルコンサートというのが通例となっている。その間、2ヶ月に1回程度の割合でコンサートが開かれる。今年の11月から来年6月までKitaraが改修に入るため、1年間、オルガニストは来ないそうだ。次に来るのは来年の例年なら10月ということなのでオルガンリサイタルも一年ぐらいはないだろう。10月に予定されていたオルガンコンサートは演奏家が来日できずに中止になった。

 

 オルガンリサイタルの批評というのはあまり読んだことがない。というのもバッハ以外の作曲家のオルガン曲を録音で探すのは一苦労するし、聴き馴染みのある曲がほとんどないこともあり、演奏の比較がなかなかできないからだ。

 また、ヴァイオリンやピアノを弾く人に比べてオルガンを弾いている人はまずいないこともあり、パイプオルガンの演奏について技術的に語られることはほとんどない。パイプオルガンの音色についてはストップが重要な役割を果たしているというところまでは分かっても、今の演奏がどのようなストップを使ってどのような意図の演奏なのかということが語られることもないし、例えあったとしても素人にはわからないだろう。

 そのようなことから曲目に馴染みがないこと、楽器の機構の複雑さ、演奏の稀少性などからパイプオルガンの演奏評というのはほとんどない。レコードやCDの名曲名盤選の本で推薦されているのはヴァルヒャやアランの全集やリヒターの選集ぐらいしかない。

 

 今回のオルガンリサイタルの演奏についてもどこがどうということはなかなか言えないので選曲について書いてみることにする。前半はバッハ、スウェーリンクというバロック期の作品。前半の最後はデュマージュとホヴェというバロック期と20世紀に作曲された作品の組曲を交互に演奏するという変わった弾き方だった。

 後半はデュリュフレメシアン、フランク、バルトークという近代から20世紀にかけての作品の演奏だった。特にバルトークはタバイディさんの母国ハンガリーの作曲家でもあり、舞踏組曲をタバイディさん自身がオルガン用に編曲したものでもありとても熱が入った演奏に聞こえた。この曲はCDにも収録されている。リサイタル全体を通してオルガンの多彩な音色を楽しめたコンサートだった。