2019 PMF音楽祭後半の感想

 7月17日エッシェンバッハデュオリサイタルか7月31日ゲルギエフ指揮PMFオーケストラまで8回のコンサートを終えたので感想を引き続き書いてみたい。

 17日はエッシェンバッハ&カラパノスのデュオリサイタルだった。当初PMFの予定にはなく、この公演を知ったのはフレンズ会員宛てのはがきだった。あまり行く気はなかったのだけれどエッシェンバッハのピアノを聴くことももうないと思いチケットを買った。平日マチネで突然決まった公演にしてはまあまあ入っていた。Kitara小ホールの2階左横のバルコニー席で聴いた。曲目はドビュッシー:シランクス、ブラームス(カラパノス編)ヴァイオリン・ソナタ第1番、シューマン:ロマンスなど、他にはエッシェンバッハ作曲のリート マーラーへのオマージュ(世界初演)、やピアソラやボルヌのカルメン・ファンタジーもあった。小ホール横のバルコニー席はホールの真ん中にいるフルート奏者はよく見えるけれども、ピアノ伴奏者は前に乗り出さないと見えない。どうしても見えているフルート奏者の方に集中してしまう。残念ながらエッシェンバッハのピアノはあまり記憶にないが、フルートはとても良かった。

 この日は続いて夜の札響ポップスコンサートを聴きに行ってきた。人生初のコンサートのはしごである。実はこのポップスコンサートも当初予定には入れていなかったのだけれど、13日のN響を聴いてから急遽チケットを買った。まだN響の音がまだ頭に残っている内に札響を聴いておこうという下心?からだった。

 この日は久しぶりにKitaraの2階RA席に座った。ステージの真横でビエラとチェロは半分しか見えず、コントラバスは見えない。そこでどう聞こえるかと思ったが、やはりポピュラー曲とクラシックでは音のバランスも違うのだろう、あまり参考にはならなかった。それでもこの日は普段Kitara来ないような方も来ていた。涙を流すほど気に入られたようで、オーケストラや座席の比較をするために聴きに来ていたこちらが恥ずかしくなるくらいだった。

 20日、21日はエッシェンバッハ指揮、PMFオーケストラと合唱団によるPMFプレミアムコンサート マーラー交響曲第8番「千人の交響曲」で、20日は2階LB席、21日は1階席後方だった。130人のオーケストラと450名の合唱団による演奏は想像を絶するものだった。マーラー交響曲第8番は普段から聴く曲ではないので、小澤征爾指揮ボストン交響楽団ショルティ指揮シカゴ交響楽団の名盤とされているレコードを聴いて本公演に臨んだ。

 聴いてみるとレコードとは全く違っていて、とても2チャンネルのオーディオシステムでは再生できない壮大な音響空間だった。1日目の2LBではオーケストラ、合唱、客席後方のバンダとソプラノソロが比較的分離して聞こえていたが、2日目の1階正面後方席では合唱が上から降り注ぐように聞こえる。ソロも近くなったので比較的はっきりと聞こえてくる。それぞれのパートの聞こえ方が変わるぐらいで楽器の音色までは変わらない。演奏云々が言えるほど細かい分析はできないが、良くまとまっていたと思う。

 

 28日はhitaruでPMFhitaruスペシャルコンサート。指揮はクリスチャン・ナップ、チェロ独奏は宮田大、座席は1階席左側後方だった。3部構成で第1部はPMFオリジナル・ファンファーレ、ラウズ:ボーナムという打楽器の曲、PMFアメリカ教授陣によるベートーヴェン七重奏曲から第1楽章、ホルスト(田中カレン編):PMF賛歌ジュピターだった。それぞれ顔見せというのか腕試しという感じで終えた後、第2部からコンサートらしい曲目になっていく。

 ベートーヴェンフィデリオ序曲、エルガー:チェロ協奏曲(チェロ独奏宮田大)、第3部がドヴォルザーク交響曲第8番だった。フィデリオ序曲は良くまとまった期待通りの演奏だった。hitaruのステージ上で演奏される時の音は、直接音がはっきりと聞こえ、見た目通りにオーケストラの前方が良く聞こえて奥のコントラバスなどはやや不鮮明になる、という印象。エルガーのチェロ協奏曲はチェロのソロははっきりと聞こえて、熱の入ったいい演奏だった。ドヴォルザーク交響曲第8番は管楽器もとても透明感があり、第3楽章も良く歌っていた。14日のGALAコンサートの時は、どことなくしっくりいっていないようなアンサンブルもまとまってきたように感じた。

 

 まとまってきたアンサンブルが見事に発揮されたのが、31日のPMFオーケストラ演奏会だった。指揮はワレリー・ゲルギエフ、フルート独奏は今年チャイコフスキーコンクール木管部門で優勝したマトヴェィ・デョーミン。曲目はドビュッシー:牧神の午後への前奏曲イベール:フルート協奏曲、ショスタコーヴィチ交響曲第4番。

 28日にhitaru、29,30日にミューザ川崎と聴いてきたので31日のKitaraはどう聞こえるか興味津々だった。席は2LB席後方で視覚的にはhitaruとミューザ川崎で座った席よりも遠い。牧神の午後はもう少し幻想的な雰囲気があったらとも思ったがそれは無い物ねだりだろう。イベールのフルート協奏曲も若々しさが良く伝わった。ショスタコーヴィチ交響曲第4番はインバル/都響のCDを事前に聴いていたが、予習というレベルにまではいかずに本番を聴いた。各楽器の聴き所がそれぞれあり、どの楽器もはっきりと聞こえた。弦楽器も弦を弓で擦る音がヴァイオリンからコントラバスまで良く聞こえる。管楽器も息を吹き込んで音を出していることがわかるし、とかく埋もれがちなファゴットも聞こえる。ティンパニィも他の打楽器もピアニッシモからフォルテッシモまで手に取るように分かる。

 首席奏者にPMFアメリカの首席奏者が入り、アンサンブルを引っ張っていった。その音が良く聞こえたので、私のような曲に明るくない者でも1時間ぐらいの間、集中して聴くことができた。

 今年のPMFは飛び抜けて上手な奏者はいなかったが、聴き続けていくと次第にオーケストラとしてまとまっていく様がよくわかり、そこが興味深かった。来年がまた楽しみ。