第632回札幌交響楽団定期演奏会

 令和2年(2020年)11月20日、第632回札幌交響楽団定期演奏会を聴きに行ってきた。Kitaraが改修に入ったので来年の6月末まではhitaruでの公演になる。

 

 再開後、当初のプログラム通りに開催されたのはこれが初めてかもしれない。オールマーラープログラムで、歌曲集「少年の不思議な角笛」より「ラインの小伝説」~「夏の交代」~「この世の生活」~「原初の光」~「魚に説教するパドゥアの聖アントニウス」~「高い知性への賞賛」の6曲。後半は交響曲第5番。指揮は下野竜也メゾソプラノは藤村美穂子だった。

 1曲目は「少年の不思議な角笛」、編成は10-8-6―6-4の対抗配置だった。藤村さんの発音はしっかりとしていて歌い慣れたベテランの味が光る。詩を読むと残酷内容もあるのでおどろおどろしく歌う歌い方もあるが、そうではなく「無邪気さ」が残酷な結果を招く「不条理」を、感情を入れずに表現していたように感じられた。それだけに残酷な中にも滑稽さもよく表現されていた。

 2曲目はマーラー交響曲第5番。編成は14型の対抗配置で、コントラバスは最後列に横一列に7台並べていた。14型は再開後では初めてである。

hitaruではこれまでも何度かステージ上でのコンサートを聴いてきた。その時は上手あるいは下手に低弦をまとめて配置していたが、全体の響きの中に低弦が入ってこない感じだった。今回の配置は反射板の効果なのか低弦が響きの中に加わって聞こえるのでhitaruではこの配置は効果的なのかもしれない。ただ、対抗配置はヴァイオリンの響きが薄くなるのであまり好まない。いつかhitaruで通常配置(ドイツ式配置)でコントラバスが横一列に並んだ演奏を聴いてみたい。

 第1楽章冒頭からトランペットの響きが冴え渡る。雷鳴が落ちるような全奏に続いてホルンがそれに応える。これまでhitaruで聴いた音よりも金管が近くに聞こえる。木管も良く通って聞こえる。ただ弦の高域はKitaraと比較するとあまり響かない。第4楽章が今ひとつだったのは、この辺りが原因かもしれない。Kitaraではヴァイオリンの弓が弦に触れるか触れないかというところから聞こえてくるが、hitaruでは弦の音が胴の中に入ってから聞こえてくる感じがするので繊細なタッチの音まで聞こえてこないからではないかと思う。第3楽章と第5楽章の金管木管は見事だった。

 少し心配したhitaruでの定期だったがこれなら聴きに来る価値がありそうだ。