札響名曲シリーズ 2021 札響の第九inKitara

 令和3年(2021年)12月12日、札幌コンサートホールKitaraで札響の第九を聴いてきた。

 指揮は広上淳一、独唱は、ソプラノ:砂川涼子、メゾソプラノ:谷口睦美、テノール清水徹太郎、バリトン:甲斐栄次郎。合唱は札響合唱団。

 プログラムは、J.C.バッハ:シンフォニアニ長調ベートーヴェン交響曲第9番「合唱付き」だった。編成は14型。木管のフルートとオーボエは迫りに乗っていなかった。

 

 1曲目はシンフォニアバロックの曲を14型で聴くのはあまりない。とても響きがよく聴き応えがあった。

 

 2曲目は第九。昨年は聴いていないが、一昨年、hitaruで聴いたかどうか憶えていない。今年は3年ぶりにKitaraでの公演となった。

 第1楽章冒頭からゼウスの稲妻を思わせるようにティンパニが轟く。弦と木管が交互に主題を奏で、低弦がそれを支える。期待通りの第九の演奏が始まるという気分にさせてくれた。

 第2楽章のスケルツォはリズムが流されることなく一つ一つの音を丹念に刻みながら、適切な強弱で演奏していた。

 第3楽章のアダージョでも慎重に弦と木管とホルンの響きを束ねながらハーモニーを奏でていた。

 第4楽章に入る前に独唱と合唱団とパーカッションが入場してきた。独唱は指揮者の前で前列客席のモニターを見ながらの演奏らしい。ティンパニの後ろにカメラがあったのはそのためだった。

 歓喜の主題の後の独唱者はステージの前で歌っていたのでとても良く聞こえた。合唱はステージ上ではなくP席に間隔を空けて配置されていたので、人数は普段よりもかなり少なかった。合唱団の配置は男声が真ん中で左にソプラノ、右にアルトだった。合唱団員は全員口元にハンカチのようなマスクをつけていた。

 合唱団の人数が少なかったので、冒頭のティンパニを除き、それまでオーケストラを抑え気味で演奏していたように聞こえたのはそのためだったのかと感じた。歓喜の大合唱とはならないので、外側に広がるというよりは内側に感情を凝縮したような演奏に感じていた。木管金管も全体のバランスの中で調和するように演奏していた。

 

 今回から、長期休養していた主席オーボエ奏者の関さんが復帰した。オーボエは目立つ(耳立つ?)楽器なので音が通ってきてわかりやすい。今まで他のオーケストラから代役で主席を務めていただいた方々には申し訳ないが、オーボエが出てくるとどこかいつもと違うと感じていたことも事実だった。関さんの音色は札響の中に溶け込んでいて、聴いた瞬間にああこれだと感じた。代役の方々の技術ということではなくオーケストラと一体になるにはそれだけ時間がかかるということだと思う。