札響名曲シリーズ 2020 「音のスケッチよろこびの秋」

 令和2年(2020年)9月12日、札幌コンサートホールKitaraで札幌名曲シリーズを聴いてきた。指揮は当初、ユベール・スダーンだったが、コロナ禍の中で来日できないため名フィル正指揮者の川瀬賢太郎に変更になった。

 8月1日の再開後、初の演奏会では観客の入場にかなり時間がかかったが、かなりスムーズに入場できるようになった。

 プログラムはドヴォルジャークの「謝肉祭」、レスピーギリュートのための古風な舞曲とアリア第3組曲」、後半はベルリオーズ序曲「ローマの謝肉祭」、チャイコフスキー白鳥の湖組曲より(「情景」、「ワルツ」、「4羽の小さな白鳥の踊り」、「チャルダッシュ」)、スメタナ連作交響詩「我が祖国」より「モルダウ」だった。指揮者の変更はあったがプログラムの変更はなかった。「謝肉祭」の曲が二つあるがオータムフェストが開催されていると季節感があったが今年は中止となっている。弦楽器の編成は12-10-8-6-5だった。

 1曲目のドヴォルジャークの「謝肉祭」はエリシュカ指揮フェアウェルコンサートのCDに2010年の演奏がも録されている。曲が始まった瞬間から引き込まれるような演奏だった。各セクションが活き活きとして聞こえてくる。札響はすでにこの曲を手中に収めたかのようだ。エリシュカの遺産だろう。

 2曲目のレスピーギの「リュート」は弦5部による演奏。第1ヴァイオリンからコントラバスまで各声部がよく聞き取れる。川瀬さんの指揮は、身振りは派手だがよくまとめている。

 

 休憩後の3曲目はベルリオーズの「ローマの謝肉祭」。札響の安定感が際立つ。弦も管もアンサンブルがしっかりとしていて穴がなくなった感じがする。前回から書いているが第2ヴァイオリンの充実振りが素晴らしい。

 4曲目はチャイコフスキー白鳥の湖組曲より4曲。札響の「白鳥の湖」は一昨年hitaruで新国立バレエ団との全曲演奏を聴いている。オーケストラピットの中から聞こえてくる札響の演奏もとても印象的だった。最初の「情景」からオーボエが冴え渡る。その後、ホルンが音場感を拡大させるところも期待通りだった。続く「ワルツ」でもシンフォニックな響きがコール・ド・バレエの舞台を彷彿とさせる演奏だった。ワルツの後で拍手が少しあったが、これは聴衆が間違えたというより、演奏が素晴らしかったことへの拍手だったと思う。続く「4羽の白鳥」と「チャルダッシュ」でも弦と管のアンサンブルが見事。川瀬さんの指揮と札響の息がぴったりと合っているようだった。

 5曲目は「モルダウ(ヴルタヴァ)」。これもエリシュカとの「我が祖国」がCD化されているが、音があまりよくないので実演を聴いた方の印象どおりのイメージが残念ながらわかない。ここでも弦と管のアンサンブルがしっかりとしていて、それがこの曲の中の場面ごとにビシビシと決まる感じだった。欲を言えば最後の場面はもう少し空間の広がりがあるとよかったかなと思う。

 アンコールはベートーヴェン交響曲第3番「英雄」の第3楽章。速いスケルツォでも、もたつくこともなく、一つ一つの音をしっかりと聴かせる演奏だった。

 8月のhitaru定期の前に事務局長の方が挨拶に出てきて、「札響の音は変わりました」と話していた。その時は10-8-6-5-4という小さい編成だったので変わったかどうかよく判らなかったが、12型の演奏で聴くと確かに変化しているようだ。

 

 9月19日からは満席でのコンサートができるようになるらしいが、25日の定期とか30日の名曲シリーズは追加でチケットが販売されるのだろうか。