第637回札幌交響楽団定期演奏会

 令和3年(2021年)5月8日、9日、第637回札幌交響楽団定期演奏会(hitaru代替公演)を聴きに行ってきた。

 

 プログラムは武満徹:弦楽のためのレクイエム、グラズノフ:ヴァイオリン協奏曲、リムスキー=コルサコフ:交響組曲シェエラザード」、指揮は広上淳一、ヴァイオリンは神尾真由子だった。

 クラズノフのヴァイオリン協奏曲はレコードがなかったのでハイフェッツのレコードで予習した。シェエラザードはライナー盤、コンドラシン盤、アンセルメ盤などの名盤があるし、札響はエリシュカとのフェアウェルコンサートの記憶がまだ残っていてCDも出ている。

 

 1曲目は「弦楽のためのレクイエム」。14型の弦楽合奏。3年前のオール武満プロの時に聴いている。弦楽器が彩なす響きがとても良かった。

 

 2曲目は「ヴァイオリン協奏曲」。12型。第1楽章の出だしから神尾さんのヴァイオリンが冴え渡る。1日目は2階席の少し奥の方で聴いたので音が少し遠く、線が細い気がしたが、2日目の1階席ではヴァイオリンの響きが良く聞こえた。低弦の響きの上に高弦を奏でていた。第2楽章も心地よく聞き入る程に曲の中に引き込まれた。第3楽章では打って変わってオーケストラとの掛け合いになる。ソロもオーケストラも互いに刺激し合いながら競り合うように進んでいく。それでもソロがオーケストラにかき消されることなく「協奏」を楽しむことが出来た。

 アンコールはエルンスト/シューベルト「魔王」による大奇想曲だった。

 

 3曲目は「シェエラザード」。14型。シェエラザードといえば4年前のエリシュカ指揮によるフェアウェルコンサートが札響ファンの間でも「あの時のシェエラザードは」と語り草になっている。それだけシェエラザードに対する熱い想いがある中での今回の演奏だった。本来なら、昨年バーメルト指揮で4月定期に演奏される予定だったが中止になってしまった。エリシュカと忘れられない演奏をした札響と、ストコフスキーの助手を務めたバーメルトのコラボでどんなシェエラザードが聴けるかと楽しみにしていただけにこの中止はとても残念だった。果して広上さんは札響ファンの前でどんな演奏をするかと興味津々だった。   

 第1楽章「海とシンドバッドの船」では弦楽器の大きくうねる波と管楽器の広大な空間がとてもよく表現されていた。第2楽章「カランダール王子の物語」ではファゴットのソロで主題が奏でられるがかなり抑揚をつけていた。ここにもソロを生かすという狙いが現れているように感じた。行進曲風の箇所でもリズミカルさを強調するように曲調の変化を際立たせていた。第3楽章「若き王子と王女」幻想的な雰囲気の中に楽しげな要素も混じっていた。第4楽章「バグダッドの祭り、海、青銅の騎士のある岩での難破、終曲」では祭りの踊りの箇所は広上さんの本領発揮と感じられるようなリズミカルさが印象的だった。続く海の嵐の箇所も壮大な空間にオーケストラを響かせていた。シェエラザードはこのように各楽章に表題が付いているが、その表題に沿うような演奏だと感じた。その意味では4年前のエリシュカ指揮による楽譜の一音一音を慎重にはっきりと音に表していくシェエラザードとは対照的だった。

 

 1日目はフレーズの入りでテンポを遅くして次第に速くするということを繰り返していた。シェエラザードは各楽器のソロがとても多い曲でそれぞれの奏者を生かすように演奏していた。しかし、それだとフレーズが変わる度に音楽の流れが止まってしまうような感じがしたし、第2楽章で少しアンサンブルの乱れのようなところも感じた。

 2日目の演奏ではテンポの変化を少なめにして音楽の流れが途切れないようにしていたように思う。アンサンブルの乱れも感じなかった。その中でソロを生かすようにするところに変化はなかった。総じて2日目の方が良かったと思う。