令和4年(2022年)5月14日、札幌コンサートホールKitaraで首記の札幌名曲シリーズを聴いてきた。
指揮は今年度から札響正指揮者に就任した川瀬賢太郎、ホルン独奏はラドヴァン・ヴラトコヴィチ、ナレーションは駒ヶ嶺ゆかりだった。
プログラムは
Ⅰ 眠りの森の美女のパヴァーヌ
Ⅱ おやゆび小僧
Ⅲ パコダの女王レドロネット
Ⅳ 美女と野獣の対話
Ⅴ 妖精の園
R・シュトラウス:「ホルン協奏曲」
ラヴエル:「ボレロ」だった。
開演前に指揮者のプレトークがあった。これから名曲シリーズではプレトークが行われるらしい。
1曲目は「マ・メール・ロワ」。編成は10型。フランスの詩人ペローの童話をラヴェルが作曲した。もっと編成が大きい曲だと思っていたが、小さい編成で繊細さを表現したかったような演奏だった。
2曲目は「ピーターと狼」。編成は10型。レコードではサン=サーンスの「動物の謝肉祭」とよくカップリングされている。動物の謝肉祭を聴くことはあってもピーターと狼を聴くことはまずないし、実演でも聴いた記憶がない。ピーターが牧場に出るとおじいさんに連れて帰らされる。そこに狼が出てきて取り残されたあひるが狼に食べられる。小鳥とピーターの機転により狼を捕らえるとそこに猟師が出てきて動物園に連れて行く。狼に食べられたあひるはそのまま狼の胃袋の中。という設定になっていた。演奏については特に書かない。
3曲目は「ホルン協奏曲」。編成は12型。流石にデニス・ブレインまでは聴いたことがないが、今まで生演奏で聴いたホルン奏者で記憶に残っているのはウィーン・フィルの首席奏者ギュンター・ヘーグナー、ラデク・バボラークがいる。ヘーグナーはPMFで聴いてウィンナホルンの朗々とした柔らかな響きがとてもよかった。バボラークもPMFや他の演奏会でも来札していて多彩なテクニックが素晴らしかった。今回のヴラトコヴィチは力強く豊かな響きがとてもよかった。ホールの残響がこんなにホルンの音色で満たされたことはなかったかもしれない。
アンコールはメシアン/峡谷から星たちへ...より 恒星の呼び声 だった。
4曲目は「ボレロ」。編成は14型。何年か前に同じ札響の名曲シリーズでボレロを聴いたことがあるが、この日の演奏は抑え気味に聞こえた。開演直前に首席コントラバス奏者が弓を折り、急遽サブ弓に交換して開演した。いくらプロといえどもまずない事故なので演奏に集中できないということがなければいいと思ったが、その後の演奏を聴いているとなんとなくいつも通りの響きとはいい難かった。
またボレロは同じリズム、同じ旋律が続くのでアクセントをつけるために指揮者がポルタメントを多用するような演奏を要求していたのかもしれない。しかし、音が外れることが多く、あまり成功していなかった。そのうえ、翌日には他のホールでコンサートがあるなど日程も立て込んでいるようだった。
思いがけない事故、日程、指揮者の解釈が上手くいかなかった、などの要因が重なったためかこの日の演奏は全体的に抑え気味で、ヴラトコヴィチのホルンを除き、残念ながら十全な演奏には感じられなかった。