オーディオのこと 53(電源アクセサリー)

 ツイッターでは電源ケーブルや電源ボックス(電源タップも含む)は何がいいかという話題が多いのでそのことについて少し書いてみることにした。

 オーディオ用の電源ボックスについては80年代の半ばぐらいにすでにオヤイデの電源タップを使用していたことがある。今日のようにいろいろなメーカーから電源タップが出ている状況ではなく、オヤイデも元々、オーディオメーカーではないのでオーディオ店では当初扱いがなかった。あるイベントにオヤイデの電源ボックスを持って行ったところかなり音に変化があったのでそこに居合わせた人たちが驚いていた。

 電源ボックスで何故音が変わるのかというとノイズの除去に効果があるからだと考えている。家庭用の交流電源には様々な電化製品からのノイズが入ってくるので50/60Hz100Vの交流電圧が理想的な正弦波の状態で供給されていない。アンプの役割というのは交流から直流の高圧電源を作り出して交流の音楽信号を増幅することにある。交流電源にノイズがあるときれいな直流電源ができない。歪んだ直流電源で交流の音楽信号を増幅するとそれだけ音楽信号も歪んでしまう。そのためにノイズを除去すると音に効果がある、と理解している。

 家庭用電源に入り込んでくるノイズを除去する方式にもいろいろとあり、80年代にはすでにトランス方式や正弦波を作り出すアンプ方式の製品があり、アンプ方式の製品を自宅で試したことがある。きれいな音にはなるが抑揚のない面白みのない音になってしまうのですぐに返品したことがある。

 96年頃にアキュフェーズがアンプ方式のクリーン電源を出し、その頃には電源のノイズ除去について広く知られるようになってきた。そして次第に各メーカーから高額な電源ボックスが出てくるようになった。オヤイデの電源ボックスの後、CSEかCECの電源ボックスを使用して2000年に上杉研究所のクリーン電源U・BRОS-22を使用するようになった。上杉研究所のクリーン電源は直列フィルター方式で600Hz以上の高周波ノイズを除去するというものだった。それ以来、電源ボックスは変更していない。

 

 電源ケーブルを初めて取替えたのは94年頃、オーディオ店から勧められてゴールドムントの電源ケーブルに取替えたことがある。その頃はオーディオ機器から直接電源ケーブルが出ていることが普通で、電源ケーブルを取替えるということは一般的ではなかった。電源ケーブルを替えるためにその頃使用していたアキュフェーズのDP-70VというCDプレーヤーの中を開けて半田付けされている電源ケーブルの半田を融かして外し、コールドムントの電源ケーブルのプラグを切り、新たに半田付けした。確かに音は変わったがしばらくしてやはりこれは何かおかしいと感じて元にもどした。

 

 その次は、2015年に新しくエソテリックのK-05XというSACDプレーヤーを買ったとき。それまではレコードしか使用していなかったので、オーディオシステムはアナログ機器ばかりだった。そこに久しぶりのデジタル機器を使用することになったので電源を壁コンセントから分離しようとSACDプレーヤー用にアコースティックリバイブの3ピン電源ケーブルを購入した。

 壁コンセントにアコースティックリバイブの電源ケーブルを接続しSACDプレーヤーを聴いたがあまり音が良くない。そのため、壁コンセントからクリーン電源U・BRОS-22を介してSACDプレーヤーに付属している電源ケーブルで聴いてみるとこちらの方が音は良かった。U・BRОS-22は3ピンコンセントに対応していないのでアコースティクリバイブの電源ケーブルとU・BRОS-22の組み合わせは聴くことができなかった。そのためこのケーブルは購入早々にお役御免となり、後日、知り合いのオーディオ仲間に適価で譲った。それ以来、電源ケーブルは製品に付属している電源ケーブルしか使用していない。

 

 電源アクセサリーでは電源ボックスと電源ケーブルの他に壁コンセントがある。壁コンセントを替えてみようと思ったのは、ステレオサウンド№182に連載されていた「ファインチューニングのすすめ」という記事を読んでからだった。オーディオにおいて一番大事なのは最上流にある電源で、その中に壁コンセントの振動対策の重要性が説かれていた。何でも病院では医療器具を正常に動作させるためホスピタルグレードという家庭用よりはコンセントプラグの保持力が高いコンセントが使用されているらしい。そのホスピタルグレードのコンセントはオーディオにも効果があり、プラグの振動対策に効果があると書かれていた。オーディオ用の壁コンセントはオヤイデとフルテックが製品を出していた。他にはアコースティックリバイブがコンセントベースとコンセントカバー(現在は製造中止)を出していた。

 最初に選んだのはオヤイデの壁コンセントとアコースティックリバイブのコンセントベースとコンセントカバーだった。音が安定して芯がはっきりと出てくるようになった。しかし、デザインの統一がとれていないため見た目があまり良くない。それと、SACDプレーヤーの電源もクリーン電源からとることにしたためデジタル機器とアナログ機器を分ける必要がなくなったのでコンセントも2口から1口にすることにした。

 そこで次にフルテックの製品に取り替えた。今度はコンセントベースもコンセントカバーもデザインが統一されて見た目もすっきりしたが特に音が変わったわけではなかった。これ以上、望んでも仕方がないので今はこのままにしている。壁コンセントに挿すプラグは床から棒で支えて振動対策をしている。

 

 オーディオで音を良くするというのは結局振動対策に尽きると思う。オーディオの基本はフレミングの左手の法則と右手の法則だと思っている。左手は電気で振動を起こす方の原理で、右手は振動させて電気を起こす方の原理だ。

 レコードは針先を振動させてコイルと磁石で電気を作り、電気と磁石でスピーカーの振動板を振動させて音を出す。電気が流れると磁界が発生し、そこに振動があると余計な電気ができて音が汚れたり、プラグの接触面積が細かく変動することによりインピーダンスが変化したりして音が変わる、と考えている。

 オーディオはスピーカーを振動させて音を出すので振動から免れることはできない。スピーカーだけではなくアンプなどに内蔵されているトランスも電気を通すと振動する。レコードプレーヤーやCDプレーヤーはディスクを回転させるためにモーターを動かすのでこれも振動する。また、様々な電子回路はノイズを発生する。

 このようにオーディオは音楽信号以外に音を汚す原因に満ちあふれている。その一つ一つを丹念に対策を施すことがオーディオの使いこなしになるのだと思う。