第647回札幌交響楽団定期演奏会

 

 令和4年(2022年)9月10日、11日、2日間に亘って第647回札幌交響楽団定期演奏会を聴きに行ってきた。6月の第646回は聴いていないので5月以来となる。

 指揮はフィンランド出身でシベリウスの演奏には定評があるオッコ・カム。ヴァイオリン独奏は三浦文彰。使用しているヴァイオリンは宗次コレクションより貸与されたストラディヴァリウス1704年製作”Viotti”。

 

 プログラムは、オールシベリウス

交響詩「大洋女神」

・ヴァイオリン協奏曲

・レンミンカイネン組曲(カレワラより4つの伝説曲)

 第1曲「レンミンカイネンとサーリの乙女たち」

 第2曲「トゥオネラのレンミンカイネン」

 第3曲「トゥオネラの白鳥

 第4曲「レンミンカイネンの帰郷」だった。

編成は14-12-10-7-7。

 

 1曲目は「大洋女神」。神秘的な弦の響きを奏でながら後半には向けた高揚感がとても良かった。10月のロンドン交響楽団の演奏会でもプログラムに載っているので初めて聴く曲でもできるだけ集中して聴くようにした。ロンドン交響楽団の演奏も楽しみだ。

 

 2曲目は「ヴァイオリン協奏曲」。冒頭からヴァイオリン素晴らしい音色が響く。普段は使用しているヴァイオリンの銘柄にはほとんど関心がないのだが、ストラディヴァリウスの音色をこんなに堪能するということは今まであまりなかった。各楽章ともソロを伴奏するオーケストラがとてもよかった。

 アンコールは1日目がJ.Sバッハ:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ 第1番 BWV1002第3楽章「サラバンド」、「ドゥーブル」。

 2日目がヴュータン:アメリカの思い出「ヤンキー・ドゥードゥル」だった。

 

 3曲目は「レンミンカイネン組曲」。第3曲のトゥオネラの白鳥以外はあまり全曲通して聴くことがないがそれぞれの主題に沿った指揮はとても見事だったと思う。聴き慣れたトゥオネラの白鳥での浅原さんのイングリッシュホルン(フランス語ではコール・アングレ、コーラングレ)は特に素晴らしかった。白鳥をモチーフにした曲で有名なのはチャイコフスキーのバレエ「白鳥の湖」、サン=サーンスの動物の謝肉祭の「白鳥」とこのトゥオネラの白鳥だと思う。白鳥の湖は夏のイメージだし、動物の謝肉祭はどうしても動物園にいる白鳥のイメージになってしまう。白鳥のイメージというと冬の渡り鳥で、冬の寒い日に川霧が立ちこめる中を静かに泳いでいる姿を思い浮かべる。トゥオネラの白鳥はそのイメージに一番合っている曲だと思う。浅原さんの演奏はそんな白鳥に相応しかった。

 

 シベリウスの曲には「冬の晴天の日の寒さ」とでもいうような響きが随所に感じられる。太陽が出て雪原に陽光が反射して明るい白銀の世界が拡がるが凍てつくように寒いというあの感じだ。それがシベリウスの曲には潜在的に存在していて、札響はいつもそれを引き出す演奏をしてくれている。