第649回札幌交響楽団定期演奏会

 令和4年(2022年)11月26日、27日、2日間に亘って第649回札幌交響楽団定期演奏会を聴きに行ってきた。

 指揮はPMFアカデミー生としての参加経験があるエリアス・グランディ。ヴァイオリン独奏は札響と40年ぶりの共演となるヴィクトリア・ムローヴァ。使用楽器は、1723年のストラディヴァリウス「ジュールズ・フォーク」。

プログラムは、次の通り。

ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番

 Ⅰ:ノクターン Ⅱ:スケルツォ Ⅲ:パッサカリア Ⅳ:ブルレスク

ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」から前奏曲と愛の死

ドビュッシー:「海」からオーケストラのための3つの交響的素描

 「海上の夜明けから正午まで」、「波の戯れ」、「風と海との対話」

 1曲目はヴァイオリン協奏曲。編成は12-10-8-6-5。4楽章ある協奏曲でプログラムによると音列も独特なものが使われているらしい。かなり難解な曲だがムローヴァのヴァイオリンの冴えは素晴らしかった。札響の伴奏は、指揮者との呼吸も合っていてよくサポートしていた。

 アンコールはJ・S・バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番より「サラバンド」だった。

 

 2曲目は「トリスタンとイゾルデ」。編成は14-12-9-8-7。弦楽器の厚みを持たせることに重点を置いた演奏に聞こえた。ヴァイオリン群が上へ上へと行こうとする表面的な世界を奏でるが、低弦が違う運命を暗示するかのようだった。媚薬を飲んだ瞬間は一体になるが、「昼の世界」が再び二人を引き裂く。弦楽器を主体にすることによって楽劇のドラマがよく表現されていた。愛の死が始まる箇所もそれほど弱音にせずに流れを切らないようにしていた。クライマックスでも弦の厚みを生かした響きを奏でていてトリスタンとイゾルデがここで「浄化」され一体なったように感じた。劇の内容に即するように演奏の構成がよく考えられているように感じた。

 

 3曲目は「海」。めまぐるしく変化する色彩とリズムをとてもよく描ききっていた。ピアニッシモからフォルテッシモまでのダイナミックスも十分に表現されていた。

 

 今回も2日間とも聴きに行った甲斐があった定期演奏会だった。