第651回札幌交響楽団定期演奏会

 令和5年(2023年)3月5日、第651回札幌交響楽団定期演奏会を聴きに行ってきた。

 指揮は名誉音楽監督尾高忠明。ヴァイオリン独奏は金川真弓、使用楽器は日本音楽財団貸与のストラディヴァリウス「ウィルヘルミ」(1725年製)。

プログラムは、次の通り。

エルガー:序曲「南国にて」

プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第1番

ラフマニノフ:交響的舞曲

 

 1曲目は「南国にて」。編成は16-14-12-10-8。プログラムによるとエルガーが英国の冬を逃れてイタリアで過ごしたときに作曲した曲らしい。コロナ禍以降、札響としては初の16型の大編成の演奏だったと思う。冒頭から金管が激しく鳴り厚い弦の響きが加わる。しかし、客演奏者が多いためか札響らしい透明感のある弦の響きではなく多少うるささもあった。

 

 2曲目はヴァイオリン協奏曲。編成は12-10-8-6-5。ヴァイオリンソロの金川さんは2年前に札響との協演でシベリウスのヴァイオリン協奏曲をhitaruで、京響との協演でメンデルスゾーンのヴァイオリンを兵庫芸文センターで聴いている。その頃の印象ではテクニックは素晴らしいが線が細いという感じだった。この日の演奏では表現力の多彩さが加わり聴くのが楽しみな演奏者になったと感じた。使用楽器はストラディヴァリウスで、やわらかい音色ではなく冴え冴えとした透き通った音色だった。

 プログラムの解説には「古典志向とモダニズム、抒情と諧謔を併存させる」とある。プロコフィエフが古典交響曲ピーターと狼の作曲者であることを想起させる箇所もあった。

 アンコールはプロコフィエフ無伴奏ヴァイオリンソナタより第2楽章だった。

 

 3曲目は交響的舞曲。編成は16-14-12-10-8。プログラムによるとこの曲は「3つの舞曲からなるが、3つの楽章は交響曲的に綿密に構成されている」とある。舞曲のリズムと交響曲的な響きを併せ持つ曲で激しさと響きの豊かさがよく調和していた。

 

 尾高さんの演奏は、以前は良くも悪くもうまくまとめる指揮者という印象だったが2年前にhitaruでダフニスとクロエ第2組曲を聴いた頃からオーケストラを鳴らし切る演奏になったと感じていた。この日の演奏もオーケストラをよくならしていたと思う。