東京フィルハーモニー交響楽団 第155回東京オペラシティ定期シリーズ

 令和5年(2023年)6月23日、東京オペラシティコンサートホールで東京フィルハーモニー交響楽団第155回東響オペラシティ定期シリーズを聴きに行ってきた。指揮は尾高忠明、ピアノは亀井聖矢(かめいまさや)だった。

 東京ではサントリーホール東京芸術劇場で聴いたことがあり、もう一つ気になっていた東京オペラシティホールはなかなか都合がつかなくて聴けなかったが、今回は丁度東京行きの日程に首記コンサートがあったので早めにチケットを取った。

 プログラムは次の通り。

・尾高惇忠(あつただ):オーケストラのための「イマージュ」

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番

ラフマニノフ交響曲第1番

 編成は3曲とも14-12-10-8-6だった。

 

 1曲目は「イマージュ」。尾高惇忠は指揮者尾高忠明の実兄で2021年に亡くなっている。2年前の第635回札響定期でチェロ協奏曲が初演される直前に亡くなられたことがまだ記憶に新しい。プログラムによると「イマージュ」は惇忠の最初の本格的管弦作品とある。指揮者の思いが込められた演奏だった。

 2曲目はピアノ協奏曲第2番。今年はラフマニノフ生誕150年ということからコンサートでラフマニノフを聴くことが多い。この曲も4月11日の札響hitaru定期で聴いている。亀井は22歳の新進気鋭のピアニストで人気も高く会場内にはファンも大勢いたのだろう。

 冒頭ピアノの弱音から始まり次第に大きくなっていくところから期待を抱かせる感じがしたが、オーケストラが出てくるとピアノの音がかき消される。金管は迫力があり木管もピアノの上蓋の影にも関わらずよく聞えてくる。大きい音はいいが小さい音、特に弦楽器の弱音が聞えない。オーケストラもピアノニストも熱演しているのは見ていてよく伝わってくるがそれが今ひとつ音として聞えてこない。派手さはあるが弱音が聴き取りにくいので申し訳ないが退屈してしまった。終演後の会場内は万雷の拍手だったので座席が良くなかったのだろうか。

 3曲目は「交響曲第1番」。冒頭から迫力ある金管の音が印象的で木管もよく響いている。聴き慣れた曲ではないのであまり詳しくは書けないが、演奏者はこの曲の特徴をよく捉えた演奏しているように思える。しかし、それが今ひとつ音として伝わってこないもどかしさがある。聴いていて途中で気付いたのは金管が出てくると弦楽器が聞えなくなること。またヴィオラがとてもよく聞えてくるのはいいがヴァイオリン、チェロ、コントラバスまでがヴィオラのような音色で聞えてくることだった。ヴァイオリンの高域、チェロの胴鳴り、コントラバスの静かに響く低音というのが全然聞えてこない。おそらく中域しか出てこないために金管と音域が被ることが金管の轟音にかき消されてしまう原因なのではないかと考えた。金管が出てきてもそれより上の高域、それより下の低域が出ていればかき消されることなく聞えてくると思う。

 

 この日の演奏会はほぼ満席だった。終演後、尾高さんがスピーチをして「ラフマニノフの曲は高齢の私にとって大変だったが東フィルがとてもよく演奏してくれた。対応力という点では世界一」とオーケストラを賞めていた。

 東フィルは10月にもhitaruで「ドン・カルロ」を演奏するので楽しみにしたい。