第654回札幌交響楽団定期演奏会

 令和5年(2023年)6月25日、第654回札幌交響楽団定期演奏会を聴きに行ってきた。

 指揮は友情指揮者の広上淳一、ピアノは反田恭平だった。反田さんはショパンコンクールで注目を浴びる前からリサイタルのチケットが直ぐに売り切れる程の人気があった。今回の札響定期も前売りと同時に売り切れていた。

プログラムは、次の通り。

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番

ドビュッシー:イベリア(管弦楽のための「映像」より)

ラヴェル:スペイン狂詩曲

 

 1曲目は「ピアノ協奏曲第3番」。編成は12-10-8-6-4。注目の反田さんのピアノは明晰で一音一音がはっきりしていた。ピアノとオーケストラの掛け合いもピアノの微妙なタッチもよく聴き取れる。ヴァイオリンの高域、コントラバスの低域も十分伸びている。速いパッセージでも音の繋がりが流れたり曖昧になったりせずに一音一音がはっきりしているのは流石だと思った。終盤で椅子が後ろにずれる程の熱演でも音がブレなかった。

 アンコールは「シューマン=リスト/献呈」だった。

 

 2曲目は「イベリア」。編成は14-12-10-8-7。まだ前曲の余韻が残る中、後半が始まった。プログラムによると「アンダルシアの昼・夜・朝を想像させる」とある。特にこの解説は意識しなかったがそれぞれの楽章のイメージが変わりゆく様はよく表現されていたと思う。

 3曲目は「スペイン狂詩曲」。編成は14-12-10-8-7。冒頭からカスタネットが良く響く。弦楽器の高域から低域までがバランスよく聞えるのはKitaraホールと札響の演奏の特徴だと感じた。スペイン風のリズムとダイナミックスがよく表現されていた。

 

 Kitaraホールができた頃、よく言われたのが「音が前に出てこない」あるいは「音がバラバラ」ということだった。金管楽器や打楽器が派手に出てくる方が、迫力があって聴き応えがあると考えている人には確かにそうかもしれない。私も当初は、世間の「Kitaraは音がいい」という評価とは裏腹に言われている程音が良くないのではないかとも思っていた。しかし、今は楽器ごとの音がよく聞え拡がりの中でバランスよく聞えると感じるようになった。

 音量が大きい楽器が他の響きを打ち消してしまうのは作曲家が意図した演奏とは少し違うのではと考えている。