オーディオのこと 56(アンプの入力インピーダンス)

 まずかなり前になるがアンプの入力インピーダンスについて経験したことを書いてみたい。1988年(昭和63年)にアキュフェーズのプリアンプC-280Lを購入し次にアキュフェーズのパワーアンプをと思っていたが、1989年(平成元年)に真空管アンプに興味を持ち、それまで考えていたアキュフェーズのセパレートアンプにするという予定を変更して上杉研究所の真空管アンプにすることにした。カタログを取り寄せたところその中に次のような注意書きのように書かれた紙が入っていた。

ステレオサウンド誌90号(1989年春号)にて、フォノイコライザーのテストが行われました。このテストの方法は、フォノイコライザーの出力をアキュフェーズ社のコントロールアンプC-280Lに入れる、というラインナップで行われております。アキュフェーズ社のコントロールアンプならびにパワーアンプは、いずれも優れた製品ではございますが、入力インピーダンスが20キロオームと低く設定されており、当社のフォノイコライザーのUTY-6とは、明らかに電気的にミスマッチングとなり、その結果このテストではUTY-6の所定の性能が発揮されていないことを御報告させていただきます。

 UTY-6は、入力インピーダンスが47キロオーム以上のコントロールアンプ、UTY-6の出力をダイレクトにパワーアンプに入れる場合には、入力インピーダンスが47キロオーム以上のパワーアンプと組み合わせて下さい。真空管式のコントロールアンプならびにパワーアンプとは、全てUTY-6とマッチングいたしますが、トランジスタ式プリアンプ/パワーアンプとは、前述のアキュフェーズ社のアンプの場合のように、ミスマッチングとなるものがございますので、トランジスタ式コントロールアンプ/パワーアンプとの組み合わせで、マッチングする代表的な製品を明記させていただきますので、御参考としていただければ幸いでございます。(具体的な製品名については略)」

 

 これを読んでアンプはインピーダンスマッチングが取れるように組み合わせなくてはならないことを知った。この後、パワーアンプに上杉研究所のU・BRОS-11というパワーアンプを購入したが、これは入力インピーダンスが100キロオームと高いのでアキュフェーズのプリアンプC-280Lとの組み合わせはインピーダンスマッチングという点では問題はない。それから3年後の1992年にUTY-6の後継機UTY-7を購入したときにはアキュフェーズC-280Lを手放して上杉研究所のプリアンプU・BRОS-12を購入した。

 ステレオサウンド誌のような一流雑誌であってもミスマッチングな組み合わせになるような特集記事が掲載されるのだから一般のオーディオファンでもこのようなミスマッチングな組み合わせでオーディオ機器が構成されていることもあるかもしれない。

 アンプの入力インピーダンスは必ずカタログに書いてある。これが高いか低いかでアンプの良し悪しが判るというものではない。アンプの原理は電源と増幅素子と負荷になる。負荷は出力される側の入力インピーダンスになる。フォノアンプ→プリアンプ→パワーアンプ→スピーカーと接続していたとすると、フォノアンプにはプリアンプが、プリアンプにはパワーアンプが、パワーアンプにはスピーカーがそれぞれ「負荷」となる。

 同じメーカー同士のプリアンプとパワーアンプを接続する場合はとくに問題はないが、プリメインアンプをパワーアンプとして利用する場合に違うメーカーのプリアンプを使用する場合は特に気をつけた方が良いと思う。

 アキュフェーズのプリメインアンプは「メインイン」端子があって同社のプリアンプを導入したときにプリメインアンプをパワーアンプとして使えるようになっている。同社のプリアンプの「メインイン」の入力インピーダンスはアンバランス/バランスが20キロオーム/40キロオームとなっていてこれは同社のパワーアンプの入力インピーダンスと等しい。これならミスマッチングの心配がなく安心して同社のプリアンプをプリメインアンプのメインイン端子に接続できる。

 

 以前は47キロオームが標準的だったが、最近はアキュフェーズのように入力インピーダンスが低いアンプが増えた。真空管アンプでも低い場合がある。そのためかつての中古プリアンプを最近のパワーアンプやプリメインアンプのメインイン端子に接続するときには注意が必要だ。プリアンプの出力側が果してその入力インピーダンスでも当プリアンプが設計通りの動作をするかどうかによる。その目安として中古プリアンプのペアとなるパワーアンプの入力インピーダンスの値がどうなっているかを確認することがいいのではないだろうか。

 例えばかつての銘機であるデンオンのPRA-2000というプリアンプがある。これと同時期に発売されたペアになるパワーアンプPOA-3000の入力インピーダンスは50キロオームとなっている。もしPRA-2000を使用するのであれば接続するパワーアンプやプリメインアンプのメインイン端子の入力インピーダンスは20キロオーム前後以下の低い入力インピーダンスアンプは避けて、47キロオーム以上とするのが無難と考える。

 また、かつてCDが出てきたときにプリアンプ不要論が出てきてプリメインアンプのパワーアンプ部にダイレクトに接続できる端子を備えたアンプが出てきたことがある。例えば1989年に出たサンスイのAU-α907LExtraには「パワーアンプダイレクト」とか「ソースダイレクト」という名称が付いている端子があるが、この入力インピーダンスは3キロオームと極端に低くなっている。CDプレーヤーはいいが果てしてプリアンプだとどうなのだろう。冒頭に引用したように最終的に結論を出せるのはアンプの設計者しかいない。

 私の個人的な意見では、あるプリアンプを、同時期に発売されたペアとなるパワーアンプの入力インピーダンスより低いパワーアンプとの接続は避けた方がいいと思う。せっかく購入したプリアンプが手持ちの機器とミスマッチングというのではどうしようもなく、使いこなしで解決することはできないからだ。