オーディオのこと 58 (オーディオ機器を「試聴する」ということ 2)

「オーディオのこと56」で、アンプの原理は「電源」と「増幅素子」と「負荷」であり、「負荷」は出力側の入力インピーダンスであり、スピーカーはパワーアンプ(またはプリメインアンプ)にとって「負荷」となる。スピーカーを取替えるということはこの「負荷」も変わるということになり、パワーアンプの動作も変わってくる可能性がある。

 スピーカーAとスピーカーBの比較試聴をしたとする。スピーカーを取替えたら当然音は変わる。その時にパワーアンプ動作も変わる可能性がある。そうすると音が変わった原因は全てスピーカーを替えたためなのかという疑問が出てくる。

 スピーカーを替えたら当然音が変わるのだからスピーカーを替えて音が変わるのは0%ということはない。では100%かと言われるとそうかもしれないしそうでないかもしれない。それはパワーアンプの動作が変わっている可能性があるからだ。では音が変わったのはパワーアンプの動作が変化したことで音が変わる可能性は、スピーカーを替えている以上100%ということはない。0%の可能性もある。

 

 では、どういう場合にスピーカーを替えた時にパワーアンプの動作による影響があるのかないのかについては推測になるが、一応考えてみたい。

 比較するスピーカーのユニット構成があまり変わらない場合は影響が少ないと考えている。「ユニット構成が変わらない」というのはアンプ側からみると「磁気回路の数が変わらない」ということなので影響が少ないのではないかと考える。例えばB&Wの801D4と802D4の試聴というような場合がこれに当たる。

 801D4とタンノイのカンタベリーGRだとどうだろう。801D4は3ウェイ4スピーカー、カンタベリーGRは2ウェイ2スピーカーである。スピーカーの音の違いはもちろんだが、磁気回路の数は801D4では4個だがカンタベリーGRの磁気回路は2個である。能率、インピーダンスウーファーの口径もかなり違う。そうするとアンプの動作という点で影響があっても不思議ではない。

 しかし、アンプの動作が違ったとしても音を聴いてどこからどこまでがスピーカーの違いでどこからがアンプの動作による違いかを判別するのは困難だ。また、駆動力の高いアンプならスピーカーの能率やインピーダンスの変化にも動作はそれほど変わらないということも考えられる。

 一つのスピーカーをいろいろなアンプで鳴らす。または一つのアンプでいろいろなスピーカーを鳴らす、という経験を積んだらもしかしたらある程度の目星が付けられるということはあるかもしれないが、なかなかそういう機会はない。

 

 2回に渡って「オーディオ機器の『試聴』すること」という題でブログを書いたが、要するにレコード再生であればカートリッジで発電してからスピーカーを駆動するところまで、デジタルだとDACからスピーカーまで、一つの電気回路で結ばれているのだから一部だけではなく全体で音の判断をするという視点も必要だ。アンプでもスピーカーでも部分はあくまでも部分なので全体ではない。一部を替えれば他にももしかしたら影響を及ぼしているのではないかということも考えてシステム全体を見ることを忘れないようにしたい。