札響名曲シリーズ 2019-2020 モーツァルト✕ワーグナー

 札響名曲シリーズを聴いてきた。札響名曲シリーズには第何回というのはなく題名が付いている。今回は「モーツァルト×ワーグナー」。指揮は常任指揮者のマティアス・バーメルト、ソリストコンサートマスターの田島高宏とヴィオラ首席奏者の廣狩亮。名曲シリーズは毎回聴いているわけではないが、今年はこのバーメルト指揮のワーグナーが聴きたいという理由だけでシーズン券を買った。

 

 前半のモーツァルト劇場支配人序曲は淡々とした嵐の前の静けさのような雰囲気で始まり密度が濃い演奏という印象。

 協奏交響曲コンマスの田島さんとヴィオラ首席の廣狩さんのソロがとても良く、札響の弦の音色を支えていることを実感させる出来映えだった。客席には奥様でもあるチェロの廣狩理栄さんと娘さんの姿もあった。後半は理栄さんに替わり亮さんが座っていた。

 

 後半はワーグナーの序曲。ワーグナーを聴くときは期待値が高いだけに辛くなりがちだ。3年前の第595回定期演奏会ニーベルングの指輪の抜粋をバイロイトで指揮をしたことがある飯守泰次郎指揮で聴いたが、あまり良くなかった。期待が高すぎたこともあるかもしれないが、札響の演奏もどこかぎこちなかった。

 そんなことがあったので札響でワーグナーをこれだけの演奏を聴けたのは嬉しい。テンポは平均よりも若干遅め。録音ではここでこの管楽器がもう少し出てきてくれたらと思うことがしばしばだが、この日の演奏ではそれがとてもよく聴くことができた。

 

 印象的だったところではトリスタンとイゾルデ前奏曲で17小節目のいわゆる「トリスタン和音」のところでホルンを強調していたところ。これによってこれから先に起こる運命を暗示させるような効果が感じられた。

 マイスタージンガーでは後半の158小節以降、様々な動機が対位法的に出てくる。それらの動機をそれぞれはっきりと聴きたいところだが、録音ものでも弦を中心にバランスを取っているので、埋もれてしまう動機があり残念に思っていた。この日の演奏ではバス・チューバをはっきりと聴かせ、様々な動機を申し分なく聴かせていた。リエンツィ序曲も含めてこのワーグナーの3曲はCDにならないだろうか。

 昨年にプログラムが発表されたときから楽しみにしていた演奏会で期待値も高かったがそれに十分応えてくれた演奏だった。