安永 徹&市野あゆみ デュオ・コンサート

 令和2年(2020年)10月17日、札幌コンサートホールKitara小ホールでベートーヴェンヴァイオリンソナタを聴いてきた。改修前に小ホールで聴くのはこれが最後となるだろう。プログラムは、演奏順にベートーヴェンヴァイオリンソナタ第6番、第10番、第9番。アンコールはシベリウスグラズノフの曲だった。

 演奏は期待通りでヴァイオリンとピアノの息もよく合っていた。おそらくヴァイオリンのソリストならもっと派手にゴリゴリした感じで弾いたと思うが、やはり一定の枠から外れない堅実さがある。

 安永さんというベルリン・フィルコンサートマスターを83年から2009年まで26年間務めていた。たとえベルリン・フィルとはいえやはりコンサートマスターの音色はソリストとは違い、華やかさとか艶っぽさに欠けるところがあるが、その分、堅実でわかりやすい面もある。

 ベルリン・フィルコンサートマスターがソロを弾いている録音はいくつかある。古い録音では44年のフルトヴェングラーベートーヴェンヴァイオリン協奏曲でソリストコンサートマスターのエーリッヒ・レーンが弾いている。70年代には四季でミッシェル・シュヴァルベがカラヤンの指揮で録音を残している。シュヴァルベは、80年頃だと思うが、北電ファミリーコンサートでベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を、シュヴァルベの弾き振りにより札幌市民会館で聴いている。昨年1月にはインキネン指揮プラハ交響楽団の演奏、現ベルリン・フィルコンサートマスター樫本大進のソロでブラームスのヴァイオリン協奏曲をhitaruで聴いている。いずれもソリストのような華やかさはないが堅実な演奏だった。

 安永さんは、80年代にカラヤンソニーと契約して映像をたくさん残すようになったときにいつもコンサートマスターとしてカラヤンの脇で弾いていた。その頃のカラヤンのLDはよく買っていた。この日も安永さんの演奏を聴きながら当時のベルリン・フィルの音を思い出していた。

 安永さんが札響のコンサートマスターとして演奏するコンサートが今年は中止になってしまったが、来年は是非実現して欲しい。