第658回札幌交響楽団定期演奏会

 令和6年(2024年)1月27日、28日、第658回札幌交響楽団定期演奏会を聴きに行ってきた。

 指揮は今年度で首席指揮者を退任するマティアス・バーメルト。テノールはイギリス出身のイアン・ボストリッジ。ホルンはイタリア出身のアレッシオ・アレグリーニ。

 開演前のロビーコンサートはヴァイオリン奏者:会田莉凡、ヴィオラ:櫨本朱音、コントラバス:下川朗、オーボエ:浅原由香、クラリネット:白子正樹で、プロコフィエフ:五重奏曲より第1楽章、第5楽章だった。

 

 プログラムは、次の通り。

ブリテン:セレナード~テノール、ホルンと弦楽のための

     Ⅰ:プロローグ、Ⅱ:パストラル(牧歌)、Ⅲ:ノクターン夜想曲)、Ⅳ:エレジー(悲歌)、Ⅴ:哀悼歌、Ⅵ:讃歌、Ⅶ:ソネット、Ⅷ:エピローグ

ブルックナー交響曲第6番

 

 1曲目は「セレナード」。編成は10-8-6-4-3。今回が札響初演。1943年に作曲された連作歌曲でテキストは「夜」にかかわる古今の英詩から採られている。冒頭のプロローグのホルン独奏から曲に引き込まれる。ホルンとテノールの息も合っていた。ポストリッジの歌唱も朗々とホールに響き渡るほど素晴らしく、ジークフリートを歌ってくれないかと思うほどだった。最後の「エピローグ」はホルンがステージ袖に引っ込んだところでの演奏だった。演奏終了後、ホルン奏者が舞台中央に戻る長い静寂の後で拍手になった。ブリテンが指揮したレコードも出ているのでいつか入手したい。

 

 2曲目は「交響曲第6番」。編成は14-12-11-8-7。この曲は2019年のPMFのホストシティ演奏会で、ホルン奏者で有名なラデク・バボラーク指揮による札響の演奏で聴いている。この時のブログを読み返してみたがあまりこれといった印象はなかったが、今回は全く違った。

 普段からあまり聴かない曲ではあるけど第1楽章冒頭からブルックナーらしい響きに聴き入ることができた。バーメルトは曲の形式を聴きながらはっきりとわかるような演奏をするという特長がある、と感じている。その特長が、主題が何度も繰り返されるブルックナー交響曲でもよく発揮されていて、主題の連関が聴いていてわかりやすい。それが聴き慣れない曲でも退屈にせずに聴き入られるのではないかと思った。

 第4楽章に潜んでいるヴァーグナーの楽劇「トリスタンとイゾルデ」の「愛の死」のモティーフも、ここにそのモティーフがありますという感じでわかりやすく演奏していた。

 バーメルトさんはこれで退任となるが来年2月にまた聴くことができるし、札響との協演もこれでおわりではないのでコロナ禍で指揮者が交替してしまったブルックナー交響曲第8番もいつか聴いてみたい。